プロローグ2
そんな世界、余りにもリーシャが可哀そう過ぎる。
もし、あのゲームの世界に俺が居たのならばどんな方法であろうと必ずあの地獄から救い出して見せるのに。
「あらあら、殿下はお元気ですね。どうしたのですか?ミルクですか?うんちですか?おしっこかなぁ?」
そんな事を思っているとメイド服を着た巨人がいきなり俺の両脇を掴み、首を支える様にして抱きかかえて来るではないか。
それにミルクだうんちだ言われても俺には何の事なのか───ちょっ!?何勝手に俺の服を脱がそうするっ!?やめろっ!!止めたまへっ!!あぁぁぁぁあっぁあああああああっ!!!!
「あらあら、うんちではないとなるとミルクでしたかぁ。しかし、元気で良い事です。乳母様を呼んで参りますね」
そしてメイド服を着た巨人はしっかりと俺のジュニアを見た後そんな事を言いながら部屋から出て行く。
いくら夢と言えど、こんな辱めは初めてである。
この辱められた行為にあえて名前をつけるとするならば『赤ちゃんプレイSM』と、俺は名付ける。
そして俺は人間として大切な何かを無くした気がしたのであった。
◆
おかしい。
いや、おかしな事は前々から、何なら初日から気付いていた。
このやたらリアルな夢が全く覚める様子がない事に。
夢の中で寝て目が覚めても夢の中なのである。
明らかにおかしい。
そう現実逃避をして、早いもので三年もの月日が経っていた。
いい加減認めよう。
俺、異世界転生している。
「あらクロード殿下、起きていたのですね」
「おはよう御座います、ニーナさん」
「はいおはよう御座います」
そして今の俺は何を隠そうクロード・フォン・ハイネスであり、グラデアス王国の第一王子である。
そう、あの忌々しき乙女ゲームの忌々しく憎きメインキャラクターの一人と全く同じ国名の、同じ名前であり同じく第一王子という立場である。
その事実を受け入れる事が出来ずに三年間も無駄に過ごしてしまったが、受け入れてしまえばこれからやるべき事も見えて来るというものである。
「あらあら、凛々しいお顔をしちゃって、お父様の真似ですか?とてもお似合いなのですが殿下には少しばかりその表情はお早いとニーナは思いますよ」
そんな俺の決意も側仕えのメイドであるニーナから遠回しに『似合わない』と言われる。
三年間も過ごしているのだ。
どうして第一王子であるクロードがあんなクソみたいな男に成り下がったのか流石に分かってしまう。
この側仕えのメイドであるニーナはこの俺がやる事成すこと全てに対してやんわりと否定して来るのである。
そして、英才教育を施され、前世の記憶というチートを使いいくらいい成績を収めても「この国の王になられる殿下ならコレくらい出来て当たり前です」と言われ褒められた事などこの三年間一度たりとも記憶に無い。
コレはある種の虐待ではなかろうか?
こんな環境で育ったのならば正しくあれと口煩いリーシャよりも天真爛漫で全てを肯定してくれる平民の娘に対してコロッと心を奪われても仕方のない事だったのかもしれない、と今ならば思う事が出来る。
思う事が出来るだけで許す訳ではないのだが。
そして俺はいつか来る日の為にリーシャ救出計画を夜な夜な制作してはシミュレーションしながら改善し、何種類もの救出計画書を作るのであった。
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次から本編です。