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モブに転生したはずなのにチートだったからイベントをぶち壊してしまった件

作者: sumi

 (わたくし)、アメリア・ワトソンは前世の記憶がある。


 その前世の記憶でこの世界が魔法学園を舞台にした乙女ゲームの中だとわかったのはまだ私が小さかった頃、両親に連れられた王宮で遠目に見た第一王子がその乙女ゲームのキャラクターそのまんまだったからだ。ショタイベントのスチル思い出して震えたのを今でも覚えている。


 ヒロインや悪役令嬢と呼ばれている公爵家の令嬢やその取り巻き達に転生していればもっと早く気づけたかもしれないが、記憶を辿ってもアメリア・ワトソンと言う人物は見当たらなかった。私は、所謂モブに転生していたのだ。


「あら、おかしいわね。」

「そこで何をしている。」


 そう怪訝そうな声で言ってきたのは先程も話に出した第一王子、ダニエル・ルイスだった。今私はこの学園で起こる最初のイベントを傍観している。


 ゲーム上のヒロインを令嬢達が囲んで虐げている所に王子が出くわして好感度が上がるというよくあるイベントだ。


 なぜこんな場所に私がいるかと言うと、ヒロインや公爵令嬢では無くモブに転生したからこそ、物語には巻き込まれないだろうと言う腹積もりでいるからだ。心行くまで傍観していても誰も咎められたりはしないだろう。


 そう思い意気揚々と見ていたのだが、なぜだかその光景に違和感を感じていた。

 その為、もう少し様子を観察したかったが、先程イベントに途中から乱入予定の王子に声をかけられてしまった。


 今後の展開にも影響がありそうなので、もっと観察がしたい私は、仕方無しと王子に対し、喋れなくなる魔法と私の隣に座らせて動けなくなる魔法をかけた。


 そんな魔法かけて良いのかと言う声も聞こえて来そうだが、好奇心には勝てないので仕方ない。魔力対抗が出来る魔道具を身につけていない王子が悪いのだ。


 さらに隣に座った王子の頭に触れ、王子にかけられていたとある魔法を砕いた。

 すると王子ははっと目を覚ましたような表情をしたが、声は私が出せないようにしたので出ない。さらに魔法で身体を固定してるのでこちらを向きたくても向けない状態だ。


 私は必ず、王子があのイベントを見なければならない状況に持って行ったのだ。

 王子を助けに行く側では無く、見る側にしてしまうほどの魔力をなぜ私が持っているか、簡単に言うと私はチートなのである。


 魔法は人によって属性が別れており、一つの属性しか持たない者や複数の属性を持つものがいる。その属性は学園入学前、鑑定士によって伝えられる。


 例によって私も鑑定を受けたのだが、魔力対抗出来る指輪を作りそれを取ると死ぬ魔法をかけそれを身につけ、鑑定妨害をした。指輪の鑑定までした鑑定士は青ざめていたが、買った指輪をつけただけだと言ったら憐れんでくれた。ちょっと申し訳無くなったが、私は属性を隠さなければならない理由があった。


 私は属性が無いのだ。属性が無いなら魔法は使えないのではないかと思われるだろうが、魔法が使えない者は魔力無しと鑑定される。では属性が無いとはどう言う事なのか。


 私は念じたら全てがその通りになる魔法が使える。それは火であろう水であろうが関係なく使える。属性に囚われることの無く、意のままに魔法が使えるのだ。


 だから鑑定士に属性無しと鑑定させるのを避けた。属性無しのチートだと分かってしまったら軟禁していいように使われるか叛逆をしないか護衛(監視)を着けられてしまう。そんなの絶対に嫌なので、全力で鑑定妨害をしたのだ。


「貴方の身分で王子殿下と釣り合うとお思いなのですか?」

「エル様は私に身分など関係無いと言ってくださいました!」


 ゲーム通りの会話が聞こえる。この後に令嬢が言う言葉の途中で王子が乱入するのがシナリオになっている。


「それは王子が寛大な心をお持ちだからそんなことを言ってくださったのですよ。きっと貴方にだけでは無く皆様にもそう言っておりますわ。それなのに貴方は図々しい。」

「…あれ。」


 ゲームだと途中で遮られてたセリフが聞こえてきたのに感動した。それとこのヒロインの言動であらかた理解出来た。恐らく彼女も転生者だろう、ある魔法が使えるにもかかわらず王子が来ることを知っていてあえてその魔法を使わなかったのだ。シナリオを知っているとしか考えられない。


「ちょっと貴方、私の話をちゃんと聞いておりましたの?」

「え…あ、え?」

「なんて無礼者!」


 そう言って令嬢が手を振りあげたところで、私が学園長の声になるよう魔法をかけ、誰かそこにいるのかと声を上げて言うと令嬢達はそそくさと逃げ出した。


「誰もいないか。」


 私が学園長の声でそこまで言うと、ヒロインはへたりと座り込んだ。


「王子が、来なかった…なんで?シナリオ、と違うの…?」


 ヒロインがご丁寧にそんなことを言ってくれるのだから完全に転生者だと認識出来た。

 違和感もわかった事だし、次の問題を片付けなければと隣の王子を見る。令嬢とヒロインのやり取りをずっと怪訝な目で見ていたのだが、先程のヒロインの言葉に驚いたようで目を見開いていた。


 転移魔法で、私が学園に入学していの一番に作ったお気に入りの庭に来た。そして人が傍に寄らないよう、声が周りに漏れないよう結界を張り巡らせた上で王子を魔法から解放した。


「き、君は何者なんだ!なぜあんな魔法が使えるんだ!」

「それについては後ほどお話させて頂きたく。一旦落ち着いてくださいな。」

「落ち着いていられるか!」


 魔法を解いたら予想通りの質問をされた。そして興奮状態に陥ってしまっている。そんな状態では話にならないので、癒しの波動を流しゆっくりと落ち着かせる。そうすると王子にも冷静な思考が戻ってきたようだった。


 落ち着くように心を操れば一発で済むのだが、この国では心を操る魔法は禁止されている。使った者は犯罪者となり牢に入れられてしまう。しかも王族に使った者は即死刑なのだ。だから上手に魔法を使って行かなければならない。そんなこと誰でも分かりそうな気がするのだが。


「まずはご挨拶からさせてください。(わたくし)、ワトソン侯爵家のアメリアと申しますわ。」


 一応初対面なので、今更感強いが挨拶をした。腐っても貴族社会、王族の人間に無礼は許されない。さっき無礼なことしまくったが。


「王子殿下、先程は飛んだご無礼を。」

「いや、なにか意図があったのだろう。こちらも取り乱してしまってすまない。」


 元々は聡明な王子だ。落ち着きを取り戻したら話が早そうだ。最近はあれの影響で、眉を顰められる所もあったようだが、もうそんな事は無くなるだろう。


「どれからお話しましょうか。」

「ではまず、何故あのような魔法が使えるのかを教えて頂きたい。」

「そうですね、包み隠さずお伝えさせていただきますわと言いたいところなのですがその前に、このお話は他の方には知られたく無い事でございます。他言無用のお約束は出来ますか?」


「ああ構わない。誓約書を交わそう。」

「でしたら。」

 

 そう言って私は魔法で誓約書とペンを出した。また王子は驚いていたが、誓約書を書けば全てわかると、内容をきちんと読み理解した上でサインをした。その隣に私もサインをした、ふわっと消した。


「君は、自在に魔法が使えるのか?」

「ええ、そうですわ。私には属性がありません。念じれば思いのままに魔法が使えるのです。」

「そんな、事が…。」

「事実あるのです。数百年前にも存在していたと以前文献で目にしましたわ。」

「それについては私も見た事がある。」


 こんなチート魔法の使い手は過去にも存在していた。これは由緒ある文献にも残されている。王子もその事について知っていた。ならばその者たちがその後どうなったかについても分かるだろう。


「私はあの文献を目にした時、この属性のない魔法を隠さなければならないと思いましたの。軟禁なんて嫌ですし、国家叛逆なんて考えていないのに、護衛(監視)を着けらるのも嫌でしたから。だからこの指輪に魔力対抗と外したら死ぬ魔法をかけました。」

「そこまでしていたのになぜ私に魔法かけたのだ。」

「ちょっとした()()()からですわ。後にわかります。」

「好奇心!?」

「それよりも次代の王になられるお方がなぜ魔力対抗の魔法具を身につけておられないのですか。魔法をかけてくださいと言ってるようなものじゃないですか。」

「それは…。」

「先程まで王子殿下は魅了をかけられていたのですよ。」

「み、魅了だと!?」

「ええ、王子は最近心を奪われるような出来事に心当たりはありませんの?」

「たしかにあのレイラ・ヤングと出会ってから心奪われるような感覚はあったが…。」

「魅了と言うものは自然にかけられて心奪われてしまいますのよ。自分に叛逆の意思は無くても魅了をかけられた相手によっては上手に操られてしまうのですよ。」


 ちょっと喋りすぎてしまったので一息着く。王子は驚きや悔しさと言った表情を浮かべている。今回魅了をかけたのがヒロイン(お馬鹿ちゃん)なのが救いだ。彼女は恐らくお姫様になってかっこいい王子様と結婚する、くらいしか考えて無さそうだから。


「しかし彼女は入学前に鑑定をしているはずではないのか。」

「そうですね。恐らく鑑定はされたでしょう、ただ…。」

「ただ?」

「これは私の憶測でしかありませんが、鑑定士にも魅了を使ったのでしょう。」


 そして鑑定士を誑し込み事実を有耶無耶にさせて入学に踏み切ったのだと考えた。王子は事の重大さに気づきどんどん顔が険しくなる。自分がかけられていただけでは無く、他人もかけられていたのだから。ヒロインは重罪人だ。


「彼女が言っていたシナリオ、とは。」

「彼女は王子殿下があの場所に来ることを知っていたのです。現に王子殿下はあの場所にいましたから。」

「そうだな。あの時までは彼女の事が魅力的に思えていたから、探していた。」

「それで彼女はあえて王子殿下にあの状況を見せようとしていた。」

「わざとだと!?」

「彼女の魅了は異性だけに使えるのでは無く、同性にも使えますもの。魅了さえ使えば虐げられる事などありませんの。それなのに魅了を使わなかったのはわざと虐げられるフリをして王子にその様子を見せ庇護欲を高めようとしていた。そして王子が割ってはいることで、彼女の存在が絶対的になる事を画策していのでしょう。それがシナリオだと思いますわ。」


 さすがにここがゲームの中の世界でシナリオがあって、転生者の彼女はそれを知っていて実行に移ろうとしていたなんて言えやしないので、それっぽいまとめ方をしたらお馬鹿ちゃんなのに計算高いヒロイン(やつ)が完成した。まあなんでも良いが。


「私はたまたま通りがかろうとした所でしたの。そうしたら違和感を感じて観察をしておりましたのよ。ちょっとした()()()から。」

「それで私に魔法をかけてあえてあの場に行かせないようにしていたのか。」

「ええそうですわ。」


 本当は見るだけで行動に移すなんて考えてもなかった。ヒロインだけの思惑であれば見ているだけだったかもしれない。だが、どうも彼女の背後にいる男爵家に何かありそうな気がして、シナリオを妨害してしまった。これは片足突っ込んでしまった事になるのか。


「王子殿下がどう思われたかは測りかねますが、どうもこれは男爵家の思惑がありそうですの。」

「そうか、思惑か。」


 そう言って王子は何やら考え事を始めたようだ。その間に私は自分が持っている予備の魔力対抗の指輪を出し王子の指のサイズに変え、真ん中に着いている石を王子の瞳の色と同じ色にした。


「ワトソン嬢のお陰で多くの事に気付かされた。早速男爵家について調べさせてもらおう。それに鑑定士についても調査しなければな。レイラ・ヤングも他の者に魅了を使わないよう注意を図る。君がいなければ本当に大変なことだった。ありがとう。」

「お礼を言われる程のことはしておりませんわ。」

 

 王子はこの国を担って行く存在。私はこの国に地に足つけ生活している以上不穏な動きは見過ごせない。もはや、乙女ゲームの世界とか関係ないのだ。そうだ、そういう事にしよう。


「王子殿下、こちらをお着け下さい。」

「これは君の着けている物と同じ指輪…」

「お揃いみたいで申し訳ありません。魔力対抗出来る物がこれしかありませんので、今は我慢して下さい。」

「いや、我慢など…。」

「あ、外したら死ぬ魔法なんてかけてませんので安心して下さいね。まあ、でも外したら死んだも同然でしょうが。」

「なぜ君はそこまでして私を…。」

「なぜなんて愚問です。(わたくし)は生まれも育ちもこの国ですもの、大好きな国を護って当然ですわ。国を護ると言うことは王子殿下を護る事でもあるのですよ。だから今後とも王子殿下をお護りすることをお許し下さい。」

「君は…君こそ国母に相応しい。私としてもワトソン嬢が妻となってくれたら属性のない魔法も近くで護る事が出来る。」

「護って頂ける事まで考えて頂いたのはありがたいのですが…そ、その婚約は好きな方としたいと常考えておりまして。」

「好きな方、か。ワトソン嬢には好きな人はいるのか?」

「おりませんわ。だけど好きな方と結婚するのが夢ですの。」

「それなら私にもチャンスはあるね?」


 ギラりと言う表現が正しいのだろうか、そんな目をした王子を見て思った。これは、マズいと。でもなんにも言葉が出てこない。固まってしまっている。


「無言は肯定と見なすからね?」

「お、王子殿下は婚約者がいらっしゃいませんでした?」

「そんな奴いないよ。周りが勝手に騒いでるだけだ。正式な婚約者の手続きもしていないし。だからそんなこと気にしなくて良いからね?」


 完全に逃げ道を失った私にグイグイ近づいてきた王子に堪らず私は転移魔法を使って逃げた。これはその場しのぎでしかないのは分かっている。また明日からグイグイこられる未来しか見えなくて嘆いた。言葉通りに翌日から好きだと何度も言われ、絆されて恋人になってしまう日はそう遠く無いようだ。


初投稿でした。

拙い文書をお読み頂きありがとうございました!


続きそうな雰囲気になってしまいましたね…。


《追記》誤字報告ありがとうございます!


アメリア・ワトソン

侯爵令嬢

属性を確かめていないのに自分を入学させたこの学園や国の魔法に対しての考えの甘さを憂いてる。チート故に。



ダニエル・ルイス

第一王子

アメリアの国を護る発言に惚れた。

アメリアとお揃いの指輪が嬉しくて仕方ない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは惚れますよ。 [一言] チートがある時点でモブではなくて、二次創作の夢小説のオリジナル主人公のような話にも感じられました。
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