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67話 世界の半分をお前にやるぞ

「世界の半分だと? 馬鹿なことを言うな! 僕たちをここで倒しても自衛隊もアメリカ軍もいるんだぞ! 大昔じゃないんだぞ!」

「知っている。美奈の中で今の世界情勢も学んでおるからな」

「お前は核ミサイルも平気だっていうのか?」

「核ミサイルどころか通常ミサイルですら致命傷を免れんわ」

「ならコンさんが人間に勝つことなんて不可能だ。ましてや世界を支配するなんか」

 コンさんが笑う。

「コンコンコン。私は世界を支配するのに暴力は使わん。知恵を使うのだ」

「知恵? 僕みたいにお前に騙される人間ばかりじゃないぞ」

「お前は騙されたわけではない。美奈を助けたかっただけだ。だが、人間を騙すのは簡単だ。お前たちは欲深いからな」

「何? 人間が欲深い?」

「権力者は特に。私が完全体になれば、人間の寿命をある程度は操れる」

 そんなことができるのか。

「何もかも手に入れた気になっている権力者が望むものこそ不老長寿。私はそこにつけ込むのよ。精神攻撃もできるしな」

 こ、これは本当に世界を支配するかも。

 というか小さな国がバラバラに存在して移動手段のなかった昔より、グローバルな今のほうがむしろ簡単に牛耳れるかも。

「コンコンコン。そして私は人を支配することで九尾になる」

 殺生石がダメなら。

 アレか。

「どう? 私の味方にならない? ん?」

 リュウちゃんの五芒星に走る。

「ま、待て!」

「待たない!」

 コンさんの慌てぶり、やはり僕の予想した通りのようだ。

 僕はコンさんが悦に入っている間にジリジリとリュウちゃんが入っていた五芒星に近づいていた。

 ディートの魔法もリュウちゃんの術もまだ死んでいない。

 あの五芒星の中に入れば、僕が触媒となってコンさんを封じ込めることができるのではないかと思っている。

 だからコンさんは、操ったリアを使って五芒星の中からリュウちゃんを外に出したのだ。

 僕はもう一歩で五芒星に入れる位置にいる。

「ま、待て。廃人になるぞ!」

 コンさんは明らかに慌てている。

「それも仕方ない」

「せ、世界の半分が欲しくないのか」

「そんなもん貰ってなんの意味があるんだ。いやちょっとは欲しいけど、友達を裏切ってまでいるか!」

「ハーレムとかめっちゃ作れるぞ。なんなら私も入ってやる」

「狐なんかいるか!」

「今は狐の姿だが。私はこう見えても目の肥えた歴代の権力者からも寵愛されていたのだぞ。完全体になれば、どんな姿の女にも変化できる」

「そういうことじゃない! シズクだって変身できるし!」

 皆、後は頼んだよ。

 できればだけど、3日以内に八尾をなんとかしてほしい。

「美奈もつけてやるぞ! 美奈はお前のことが……」

 コンさんが狐神さんのことを話題にした途端、狐神さんがスッと立ち上がる。

「え?」

 もうコンさんは抜けたんだろうけど、そんなに元気なの?

 スタスタとコンさんのところまで歩いていく。

「ちょ、危ない!」

 僕の引き止める叫びも聞かず、狐神さんはコンさんの後頭部をパカンとぶっ叩いた。

「もう! やりすぎよ!」

「いったーい」

 その瞬間、幻界が消えて、殺風景な神社の境内になった。

 ディートが起き上がる。

 リアも意識を取り戻したようで、周りをキョロキョロ見回している。

 リュウちゃんも頭を振って立ち上がった。

 剣で斬られたのではなかったのか?

 そういえばリアの剣には血がついていなかった。

「ど、どういうこと?」

「演技をしておったんだ」

 コンさんが前足で頭を撫でながら言った。

「演技?」

「私が人間の男は信用できないと言ったら、美奈がお前は惑わされないと言うから」

「えええ?」

「賭けていたのだ。どうやら私の完敗のようだな」

 狐神さんがコンさんの頭をまた叩く。

「もう! どうして言っちゃうの? 言わないって話でしょ」

「そ、そうだったか?」

 力が抜ける。

「でも、ここまでやらなくても……」

「人間どもが私を倒せる気でいるのも少々腹立たしくて脅してやったのだ。だが、本当にお前に封印されそうになっていたぞ」

「僕に封印されそうだった? それも噓でしょ」

 考えてみれば、ディートとリアを眠らせたすすきの花粉の技を使えば、リュウちゃんはともかく僕なんか一瞬で眠らされていたに違いない。

「いやいや虚を突かれたぞ。眠らせるのが先か封印されたのが先かわからぬ」

「世界征服計画が真に迫っていて冷や冷やしたよ」

 権力者が最後に望むものが不老長寿なんてリアルすぎるんだよ。

 けど、よくよく考えたら世界の半分とか、ゲームとか漫画とかで聞いたような台詞だよな。

 きっと、狐神さんか、狐神さんのお母さんの中でコンさんが聞いた台詞だったんだろう。

「アレは実際に私の種族が権力者に取り入った方法よ」

 やっぱり、そうなのか。

 同族のせいで封印されたところもあるのかもしれない。

 ディートやリアやリュウちゃんが集まってくる。

「コイツ本当に封印したほうがいいんじゃないの?」

「ですね」

「魔を払い、民を救う!」

 好戦的な人たちが覚醒しはじめた。

「ちょ、ちょっと。聞いていたでしょ」

「なんだ? やる気か?」

 やばい。

 第二戦がはじまりそうだ。

「おーい!」

「え?」

 声が聞こえる。

「助けに来たぞ~!」

「げっ、マミマミさん」

 マミマミさんとシズクと美夕さんが走ってくる。

 しかも、マミマミさんは例のYシャツとパンツ姿でシズクはスライムのままだ。

 いつの間にか、神社にはギャラリーが集まっていた。

「なんだ? コスプレ? 仮装パーティー?」

 今は女性に気を取られてるかも知れないが、すぐに白スライムや尻尾が八本もある狐に気が付くぞ。

「ま、まずい。皆、こはる荘に逃げ込むぞ」

 マミマミさんがワガママを言い出す。

「ん? もう解決したのか? なら日本の発展をもっと堪能したいのう」

「いいから全員帰るんだ~!」

「そ、そんなに怒らなくてもいいではないか。助けに来たのに」

「わかりました! 日本見学には今度付き合いますから今は帰りますよ!」

 こうでも言わないと仕方ない。

 僕はシズクを抱えてこはる荘に走る。

 皆も慌ててついてきた。

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