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51話 人を探して異世界へ

 今、僕の部屋には美夕さん、会長、木野先輩、マミマミさん、ディート、リア、シズクがいた。

 皆が助けてくれるからといって、先走って悪い結果が出たあとに助けてくれでは虫が良すぎるだろう。

「というわけで、僕はコンさんを助けたいと思うんだ」

「そうか。トールが助けたいならやってみたらよかろう。もし、万が一、性根の悪い狐ならワシが焼入れしてやる」

 マミマミさんが笑う。

 一昔前のヤンキーのような発言だけど、ありがたい。

 これで最低限の保険はかけることが出来た。

 国を滅ぼすという狐のモンスターとフェンリルの親類である巨狼の大戦争はできれば見たくないけど。

「……そう。マミマミ様がそう言ってくださるなら私も協力したいけど」

 ディートがつぶやく。

 歯切れが悪い。

 できないと続くのだろうか。

「できないの?」

「だって……私は殺生石に封印されているモンスター狐の本体の封印を解く方法なんて知らないもの」

「え?」

「何? 私だってそんななんでも知らないわよ」

「知っていることだけ、とか言って、なんでも知っているじゃないの?」

「知らないって」

 ディートは異世界絡みとか不思議絡みのことならなんでも知っていると思っていた。

 一時期、僕のダンジョン探索の先生をしてくれていたから、そう思い込んでしまったのかもしれない。

 約束したのにどうしよう。

 頭を抱えていると リアが言った。

「でもディートさんなら封印を解く方法を知っている人は、知っているんじゃないですか?」

「おお」

「ディートさんは人付き合いは凄く悪いけど、すっっっごく長いこと冒険者をされてますから実力のある人に顔は広いですよ」

 リアが無邪気な笑顔で言う。

 ディートって何歳なんだろう。

「人付き合いが凄く悪いのも、すっっっごく長いこと冒険者しているのも余計よ!」

 ディートがリアをにらむ。

「ご、ごめんなさい」

 元々ディートとリアは僕たちと出会う前は一緒に冒険をすることはほとんど無かったらしい。

 ディートとリアは強力なモンスターを狩るときだけ、パーティーを組む。

 人狼と勘違いをしたマミマミさんを倒そうと組まれたパーティーだった。

 戦士と違って魔法使いはパーティーを組むのが前提なのにディートは誰とも組まないでダンジョン探索するので一人魔法使いとか言われているとか。

「まあ目星は一人付くけど」

「さすが」

 すっっっごく長く冒険者しているだけはある。

「じゃあ、会いに行く?」

「え? 連れて来てくれるんじゃなくて?」

「日本に連れて来るの? このゲートを教えるの? トールが封印を解いてもらうように直接説得して納得してから来てもらったほうがいいんじゃない?」

「あ、そうか」

 異世界人に広めるのはリスクが大きいか。

「それにアイツはもうダンジョンに潜ってないし、ブーゴ村ってとこで畑耕してるから」

「それって、異世界の地上にある村?」

「そりゃね」

 異世界の村なんか行ったことないぞ。

 でも人に会うなら異世界の町や村に行かないといけないのは当たり前か。

「それって遠いんじゃないの?」

 会長が聞いた。

 そうか。何日もかかるかもしれない。

「いない間、寮の仕事は私たちが代行してあげるけど学校をサボるのはダメよ」

 会長の言うことはもっともだ。

「ですよね。ディート、何日ぐらいかかるの?」

「そうね。急げば2日ぐらいかしら」

「往復だと」

「4日ね」

「4日なら!」

 ちょうど、4連休がある。

 祝日とか振替が重なったようだ。

「案内してあげてもいいわよ。どうする?」

 ディートが案内してくれるのか。

 なら……。

「ありがとう。行くよ」


◆ ◆ ◆


 屋上で狐神さんと話す。

「というわけで今日学校から帰ったら連休を利用してブーゴ村に行ってくるよ」

「コンちゃんのために外国にまで行ってくれるなんて。ありがとう」

「いや、外国っていうか……なんでもない」

「?」

 狐神さんはコンさんから異世界のことは聞いていないのかもしれない。

 それならそれでいいか。

 心配なのは。

「ねえ。狐神さん顔色悪くない?」

「ん? ……大丈夫。風【邪@正字】がまだ治ってないみたいで。熱はないのよ」

「そっか。それなら大丈夫だけど。コンさんは何か言ってない?」

「鈴木に感謝してたわ。本当にありがとね」

 真っ白な顔で感謝される。

 体調のことを聞いたんだけどな。

 昨日は学校も休んでいたし大丈夫だろうか。

 最終的にはマミマミさんやディート、解呪ができる人も含めて狐神さんの様子を見てもらったほうがいいかもしれな。

「ただいま~」

「おかえりなさいご主人様」

「あ、帰ってきたの? おかえり~」

 寮のドアを開けるとシズクが玄関で迎えてくれた。

 奥の和室からは気だるそうなディートの声が聞こえる。

 和室に入ると布団に包まるディートがいた。

「やっぱ日本の布団は最高ね」

「はいはい。時間がないから行くよ」

 制服を脱ぎ捨てて動きやすそうな私服に着替える。

 昨日準備しといたリュックサックを背負う。

 手には金属バットで出発だ。

「ふっふっふ。ちょっと待ちなさい」

 ディートが笑う。

「何さ? あまり時間がないんだから早く布団から出て」

「ふっふっふ」

 ディートが布団に入ったまま、中から棒のようなものを出す。

「な、なんだそれ」

「ふっふっふ」

「変な物じゃないだろうな?」

「変な物って何よっ!」

 それはまだまだ長いようで布団の中からドンドン出てくる。

「そ、それって」

「驚いたかあ」

「剣?」

 【鞘@正字】に収まった剣が出てきた。

「しかも、イール国の鋼だから斬れるわよ~。トールに買ってきてあげたの」

 ディートが【鞘@正字】から剣を抜く。

「あ、ありがたいけど剣は寮に持ち込まないで」

「え~どうしてよ」

「日本には銃刀法違反って法律があってね。多分そんな剣を持っていたら捕まっちゃうよ」

「そ、そうなの?」

「うん。ダンジョンの僕の部屋に保管しといて。それに……」

「?」

 僕は鋼の剣と金属バットを持ってダンジョンの部屋に行く。

 そしてステータスを見た。

「やっぱり」

「どうしたの?」

「今ステータスを見てたんだけど金属バットのほうがこの鋼の剣よりも攻撃力が高いよ」

「えええええ?」

 日本のアイテムは異世界だと不思議な効果を発揮するものも多い。

 金属バットはかなりの攻撃力があったからそれじゃないかなあと思っていた。

 他にも毒消しのコーラなどがリュックには入っている。

「気持ちはありがたいけど、鋼の剣は置いておくね」

「ふん! トール嫌い!」

「えええ? なんで?」

 制服に変身していたシズクが体の一部をイヤホンにして僕の耳にくっついた。

 有線だが細くなったシズクの体が僕の背中をはっているのでディートにはバレていない。

「そこは剣を持っていったほうが良かったかもしれませんね」

「そうなの?」

「はい!」

 シズクとはこうやって人とバレずに会話できる。

 僕はコミュ障のところもあって、女の子を怒らしてしまう時がある。

 だから会話の指南をしてもらうのだ。

「今からでも剣を持っていくって言ったら機嫌直るかな」

「ディートさんには有効だと思います」

「ありがとシズク」

「はい!」

 僕は置いた剣を再び手に取る。

「でも、剣と金属バットの二刀流にしたらいいかもしれないな」

「二刀流?」

「異世界には二刀流の剣士っていないの? 日本にはムサシミヤモトって剣豪が……」

「短剣なら結構いるけど。でも初心者が難しいわよ」

 【鞘@正字】から剣を抜く。

 そしてVRMMOに閉じ込められた某ラノベ黒主人公のような二刀流ポーズを決める。

「鋼の剣かっこよくない?」

「そ、そうね。かっこいいかも」

 やっと冒険に出れるらしい。

「じゃあシズク、留守番お願いね」

「はい! ご主人様!」

 僕はダンジョンの部屋の扉のスイッチを押してディートと進んで行く。


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