48話 昔話に出てくるような狐に封印を解けって頼まれてるんですけど
「コンコンって狐? 尻尾が九本?」
九尾の狐!? まさか妖狐!?
「コンコンコン。鈴木くん、なにを震えているの?」
狐神さんが妖しく笑う。
妙な色気がある。
やはり伝説通り……。
「こ、狐神さんは有名な妖怪だろ?」
「妖怪!? 失礼な!」
巫女服を着て九本の尻尾を生やした狐神さんはプンプンと怒っている。
「え? 妖狐とか九尾の狐とか有名な妖怪じゃないの?」
「だったら九本の尻尾なんてわざわざ見せないよ。隠すことだってできるんだから」
尻尾が巫女服のなかに消えていく。
「じゃあなんで見せてたのさ」
「尻尾の数は狐の格だからに決まってるでしょ」
「ほら、やっぱりだ。妖狐なんだ」
ゲームや漫画では九尾の狐は大妖怪になっていることが多い。
特に妲己や玉藻前などが有名で権力者の妃になって悪さすることが多い。
「どうせオタク的な文化の中での私の扱われ方を見て誤解しているんでしょ?」
「うっ」
図星をつかれた。
「これでもはるか昔は瑞獣とされてたのよ」
「ズイジュウ?」
「瑞兆、吉兆と言ったほうがわかりやすい? 良いことが起きる時に現れる霊獣ことよ」
「ほ、本当か? 僕を殺したり、食べたり……ろ、籠絡するつもりじゃないだろ?」
「しない! 忠告してあげようと思ったのに!」
「ちゅ、忠告? あっ!」
そういえば寮がこの世ならざる場所に繋がっているって話を聞くためにここに来たんだった。
信用していいんだろうか。
昔話で狐に化かされたかとか聞くことあるし。
けれど疑ったところで僕に確かめる方法はない。
ここは騙されているフリをしといたほうが安全なんじゃないだろうか。
「わ、わかった。信じるよ。寮のことを話してくれるんでしょう?」
「コンコンコン。わかればいいのよ。教えてあげる」
コンコンコンという笑いが戻った。
機嫌も回復しているといいけど。
寮のことを聞く前に強い仲間がたくさんいる寮に帰りたいよ。
「まず私は美奈じゃない」
「みな? ああ、狐神さんの下の名前だったかな」
確か狐神美奈という名前だった気がする。
でも、どういうことだ?
「私は美奈に取り憑いて……いや、体を借りているの」
「今取り憑いてるって……いや、体を借りているってどういうこと?」
「美奈の体を借りてるのよ。ちゃんと本人に許可を取ってね」
「なるほど。狐の霊みたいな感じですかね」
コックリさんとかで使うやつだろうか?
「精霊って言って!」」
「わかりました。九尾の狐の精霊ですね」
狐神さんに取り憑いた九尾の狐さんが自慢げなドヤ顔をした。
「そしてここは幻界よ」
「幻界?」
「まあ私の精神世界ね」
「夢の世界みたいな感じですか?」
「賢いわね」
ゲームとか漫画でなんとなくありそうな世界だ。
「このすすき野は狐さんが好きな風景ってこと?」
「コンコンコン。そういうこと」
こういう場合ゲームとか漫画だったら大体本体が弱点だ。
「ところで本体はどこにいるんですか?
「さ、さすがね。本体は封印されてるの」
「へ、へ~」
封印されてるってやっぱり悪さしたんじゃないのか?
「殺生石に封印されてるから助けてほしいの」
助けてくれるのかと思ったら助けて欲しいという話なのか?。
「りょ、寮のことを教えてくれるんじゃなくて」
「教えるよ。教えるけど先に助けて」
「助けてと言われてもどうすればいいのか」
「あなたの寮から凄い力を感じるわ。どこか別の世界に通じてるはず」
うっ。結構気が付かれてるな。
やっぱ大妖怪だからなのか。
「別の世界にはきっと封印の解呪ができる誰かがいる。連れてきて」
封印の解呪ができそうな誰か。
マミマミさんかディートならできそうな気がする。
でも殺生石に封印された九尾の狐を解放していいのだろうか。
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