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43話 結局、友達はできなかったけど

 僕は体力テストを一人だけで受けさせられていた。


「て、転校生、すげえな……。50メートルを超えたぞ」


 ハンドボールの球が空に吸い込まれるように飛んでいく。


 他の男子がバスケットボールの授業をやっている横で、僕はレベル上げの成果をいかんなく発揮していた。


「あの転校生、握力は三年を入れても学校一位っぽいぜ」


「マジかよ」


 昨晩はみんなと夕飯を食べた後も、ストロングバーストが火を噴いたからな。


 レベルはさらに上がって11になった。


 ふふふ。学校一位の握力すら手加減しているんだぜ!


 バスケの試合に参加待ちのクラスメイトは、もはや誰も試合を見ていない。


 クラスの話題は、僕の体力テストのことで持ち切り……になるはずだった。


「おい! お前ら! 美夕さんがすごいらしいぜ!」


 え? 美夕さんだって?


 そういえば、ちょうど今、彼女も体育館で体力テストを受けている。


 僕ほどではないがレベルも上がっていた。


「美夕さん、すごいよな。頭もいいし、運動もできるか~」


「それにさ。今日は髪留め使っていただろ? 顔見たか?」


「あぁ! 見た見た! すっげー可愛いよな!」


 な、流れがおかしいぞ……。


「体育館のほうを見に行こうぜ」


「ああ、外から見えるしな。行く行く!」


 男子たちどころか体育の先生まで計測をクラスメイトに任せて体育館の美夕さんを見に行ってしまった。


 任された記録係の生徒は不満そうに僕の超高校級の成績を記録していく。


 数日後、体力テストの結果が体育教官室の前に貼り出された。


 僕は学年トップの成績だった。


 一応、数人のクラスメイトは僕の傍らにきて、そのことを話題にしてくれた。


 しかし、それも貼り出されたその日だけ。


 僕は未だにスクールカーストの圏外だ。


 代わりに美夕さんのところには体力テスト以来、人が集まり続けている。


「美夕さんの髪って綺麗だよね~。ねねね、シャンプーなにを使っているの?」


「美夕さん、バレー部に入らない?」


「いや野球部のマネージャーになってよ」


 体力テストから何日も経っているのに、放課後、美夕さんの周りにはクラスメイトが集まっている。


「美夕ちゃん、これから、何処かに遊びに行かない? 映画とかカラオケとか」


 クラス一のイケメンの瀬川くんが美夕さんを遊びに誘う。


「瀬川くん、ついに美夕さんに行ったね」


「ただ仲よくしたいだけって言っていたけど、絶対狙っているよねえ」


「美夕さん、大人っぽいのに可愛いからねえ」


 クラスの噂好き女子たちがその様子を見て噂をはじめる。


 美夕さんが瀬川くんのほうを向く。


「キャー!」


 噂好きの女子たちが黄色い声をあげた。


「瀬川くん、ごめんね。今日はトオルくんと一緒にご飯作る約束しているから」


 美夕さんは帰る準備をして席を立った。


「え? ト、トオル?」


 瀬川くんが目を白黒させる。


 僕も席を立って美夕さんに目配せする。


「今、行く~」


 美夕さんも大分大きな声になった。


 髪留めも似合っているし、学校にも毎日こられるようになったからだろうか。


 小さな声も精神的なものだったのかもしれない。


「ひょ、ひょっとしてトオルって転校生の鈴木くんのこと?」


 瀬川くんが美夕さんを引き止めた。


「うん。別の日にトオルくんもきてくれるなら行くよ」


 瀬川くんと呆気にとられたクラスメイトを見ながら、僕は教室の出口に向かった。


「み、美夕ちゃんは鈴木くんと仲いいんだね。寮で一緒だからだろうけど……」


「それだけじゃないよ。じゃあ瀬川くん。みんなもじゃあね」


 美夕さんが小走りで僕のほうにやってきた。


「鈴木くんと美夕さんって、いつも一緒に登校したり、下校してない? ひょっとして……」


 そんな声を聞きながら廊下を歩いた。


 向かうのは生徒会室だ。


 生徒会室のドアはもう開いていた。


「鈴木くん、レイちゃん、遅かったじゃない」


「最近、美夕さんがすごい人気でクラスメイトに囲まれまして……」


「ふふふ。そうなんだ。レイちゃんのほうは鈴木くんにベッタリって感じだけどね」


 会長が笑う。


「もう姫子先輩!」


 美夕さんが赤くなって口を尖らせる。


「ごめん、ごめん。さあ今日は異世界の人たちもくるから、早く帰って夕食の準備をしましょう」


 会長はそう言うけど、彼女は食べるほう専門だ。


「はいはい」


 ゲートのドアを開ける。


「おお、帰ったか」


「おかえりなさい、ご主人様」


「あ~トール。もうお邪魔しているわよ」


「トール様、今日はありがとうございます」


 ゲートから見えるダンジョンの部屋にはもうシズク、マミマミさん、ディート、リアがきていた。


 木野先輩もすぐにくるだろう。


 僕の部屋にはこんなにもたくさんの友達が集まってくれるようになった。未だにクラスでは友達ができないけど。


「トール様、ダンジョンの地上に行きませんか?」


 ゲートをくぐるとリアが話しかけてきた。


「地上? ダンジョンの上に行ってどうすんの?」


「このダンジョンの上には街があるんですよ! 冒険者ギルドもありますし! 私、案内したいです」


「異世界の街と冒険者ギルド!」


 い、行ってみたい。


「トール~。そんなことより魔法を覚えましょ。教えてあげる」


 ディートが割って入ってきた。


「ま、魔法ってマジか? ディート」 


「ああ、そういえばお前の【職 業】のことを思い出してきたぞ」


 マミマミさんがぽつりと言った。


「え? 職業?」


「【職 業】管理人のことだ。やはり、ワシの世界とお前の世界のゲートを管理していた一族だ」


 異世界と日本をつなぐゲートを管理していたってことか?


「寮と異世界がここまでつながるのはお前の力となにか関係あるのだろう」


「それはどういうこと……」


 自分の【職 業】や【スキル】が異世界とのゲートに関わっているなら最高じゃないか。


 詳しく聞こうとすると寮の僕の部屋のほうから木野先輩の声が聞こえてきた。


「鈴木氏~。寮の玄関に立石さんと狐神さんっていう女の子がきて呼んでいるよ~」


「ええ? 立石さんと狐神さんってうちのクラスの?」


 美夕さんに袖を引っ張られる。


「トオルくん、意外とモテるんだね」


「モテるもなにも……」


 あの二人からは何故かいっつも教室でにらまれているんですけど。


「友達ですらないと思うけど。なんの用だろ?」


「なんでも鈴木氏が憑かれているから寺にこいとか神社にこいとか」


 二人は確か寺と神社の娘だったはず。


「しかし、訳がわからん」


「目の下にクマができているから取り憑かれているとかなんとか」


 それダンジョンに潜りすぎて寝不足なだけ……。


 その間にもリア、ディート、マミマミさんが僕を冒険に誘ってくる。


「何処に行くのでも私も連れていってね」


「私もお願いします!」


 どの冒険に行こうかと迷っていると、美夕さんとシズクが励ましてくれた。


 僕の部屋はダンジョンとつながっているから、まだまだ問題は起きるだろう。


 でも、みんながいれば、どんな問題が起きたってなんとかなるに決まっている。




 手はじめに、今日の放課後もレベル上げようかな!


第一章、完結です。



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