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31話 ステータスの意味

「えい!」


 オオアリの頭に金属バットを振り下ろす。なんだか恒例行事のようになってきた。


「びっくりした。神獣様も言っていたけど筋いいわね。魔法系の私でもわかるわ。どうアリア?」


「えぇ。前衛の私もそう思います。すぐに冒険者パーティーの中核になれますよ」


 ディートさんとアリアさんから褒められる。


「それにその武器」


「え? 金属バット?」


「その金属バットっていう武器はステータスから考えて攻撃力110でしょ?」


「ディートさん。確かに110ですけど、あんまり勝手に人のステータス見ないでよ」


「ごめん、ごめん。でも、トールのステータスを見れば、いろいろと正確に教えられるじゃない」


「そりゃそうだけど。ん? ど、どうしたのアリアさん? 体調でも悪いの?」


 アリアさんは地面に四つん這いになってうなだれていた。


「ちょっとショックで」


「ショック? なにに?」


「その、ただの鉄棒のような武器が、私の真銀の剣と攻撃力が5しか変わらないことに」


 ディートさんが耳元でこっそり教えてくれる。


「彼女の剣、昔、仕えていた大貴族から賜った業物なのよ」


 あ、あぶねえ。廃棄されていたスポーツ用品で、日本では珍しくもないとか教えそうになっていた。


 ひょっとしたら、立ち上がれなくなっていたかもしれない。


「いえ、きっと金属バットはトール様がニホーンで苦労の果てに手に入れたものなのでしょう」


 アリアさんがよろよろと立ち上がる。


 うん。本当のことを言ったら間違いなく立ち上がれなくなっていたね。


「ところでトール様。私のことはさんづけじゃなくてリアって呼んでください」


「え、リア?」


「はい! 親しい人はみんなそう呼んでくれます。ディートさんはアリアって呼びますけど」


 親しい人はリアか。いいね。


「だって私は親しくないもの」


「私もディートさんとは親しくありません!」


 またはじまった。


「ちょっとリアもディートさんもいい加減に」


「トール!」


「え? なに、ディートさん」


 二人の言い争いを止めようとすると、ディートさんから急に大きな声で呼ばれる。


「……その、あの」


「な、なんですか?」


 歯切れが悪いし、ディートさんの顔がなんだか赤い。


「わ、私もディートって呼んでいいわよ」


「……」


「呼んでよぉ~」


 すがりつくように懇願してくる。


「わ、わかったよ。ディートディート」


「なにその言い方! もうなにも教えてやらない!」


 ディートさんがへそを曲げてしまった。

 

「ディートさんはトール様にもう教えないんですね。そしたら私が教えます」


 すかさずリアが攻撃する。


「アリアは魔法で他人のステータス見られないじゃない。適切なアドバイスできないでしょ?」


「でもディートさんは教えないんでしょ。それなら見ることができても意味ないですよ」


 本当に、どうして、この二人はパーティーを組んでいるんだろうか。


 後ろからつんつんと背中を突かれる。


「美夕さん? え? うん、わかったよ」


 美夕さんはディートさんにステータスを見てもらいたいらしい。


「ディート」


「ん? なにトール?」


 ディートと呼ぶと嬉しそうに返事をした。


「ちょっとステータスを見て欲しいんだってさ」


「はいはーい。ステータスを見ればいいのね」


 ディートが機嫌よく返事をする。


「美夕さんが」


「え? この子が? いいけど……」


□■□■□

 【名 前】美夕麗子

 【種 族】人間・吸血鬼

 【年 齢】17

 【職 業】斥候

 【レベル】1/49

 【体 力】20/20

 【魔 力】59/59

 【攻撃力】11

 【防御力】242

 【筋 力】11

 【知 力】60(+10上昇中)

 【敏 捷】61

 【スキル】無音歩行LV1/10 敵感知LV1/10

□■□■□


「す、すごい防御力ね。その服……」


 ディートは防御力に驚いているが、その防御力のほとんどはストッキングなんだけどね。


 美夕さんは学校で制服を着る時に限らず、スカートと黒ストッキングという組み合わせが好きらしい。


「あの、防御力の他に気になるところはありませんか?」


「気になるところ? うーん。冒険者をするなら斥候はいい職業よ」


「他に気になるところは?」


「え、うーん。このレベルにしてはかなり数値がいいわね」


「【種 族】は?」


 なるほど。美夕さんは食後はほとんどレベル上げをしていない。


 自分の【種 族】が人間と吸血鬼であることについて聞きたかったのだ。


「あ~そういうことか。安心して。珍しいことじゃないわ」


「この世界ではですよね?」


「そうね。でも、ニホーンのことはわからないけど、そもそもニホーンってステータスを見ないで生活しているんでしょ?」


「はい」


「だったら、なおさら気にする必要ないでしょ」


「どういうことですか?」


「ステータスの数値やスキルに吸血鬼の特徴が現れてないもの。つまりアナタはステータスの【種 族】を見ない限りは人間ってことよ」


 ディートの意見は明快だった。


「吸血鬼の血は何十世代も前のごくうすーいものね」


 血が薄いという意見もマミマミさんと同じだった。


「美夕さん、安心した?」


「うん。ありがとうございます」


 どうやら安心してくれたようだ。


「まあ、ひょっとしたらすこーしは祖先の記憶みたいなものがあるかもしれないけどね。精神的なもので実質的な影響はないわ」


 美夕さんが少し考え込む。


 なにか思い当たることでもあるんだろうか。


「美夕さん?」


「ん。ああ、トオルくんのレベル上げようか」


 美夕さんは笑顔になる。


「ディート、レベルを簡単に上げる方法ない?」


「レベル上げはそのレベルにあったモンスターを探してコツコツ狩るしかないわ」


「えー」


「レベル上げに近道なしってことわざもあるの」


 学問に王道なしみたいなものか。なにか近道がありそうな気もするけど。


「まあ頑張るしかないか」


「私も魔法でモンスター探してあげるから」


 美夕さんとディートとリアが応援してくれる。ならガンガン狩るか。


  ◆ ◆ ◆



 あれから四時間、本当にレベルが上がらなくなってきた。


 もう五十匹以上オオアリやらお化けキノコやら青スライムやらを狩っている。


 つきあって応援してくれている三人にもう1レベルぐらい上がったことを報告したかったけど、そろそろ夕食の準備をしないといけない時間だ。


「じゃあ来週またここにきますね」


 リアが元気に言った。


「うん、リアまたね。ディートも」


「トール、【職 業】管理人のことは珍しい職業でよくわからないんだけど」


 ディートはなにか最後にアドバイスをくれるようだ。


「ゲート管理のスキルレベルが上がったら、なんとなくこんなことができそうだなって思える時があると思うわ。他人が教えられないようなスキルはそうやって使っていくものよ」


「わかった。来週まで二人がびっくりするぐらい成長しとくよ」

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