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25話 管理人スキル発動!?

「いやぁ小生の実家が農家っていうのは本当なんだよ。でも、あんまり儲かってなくて。副業でキノコ栽培はどうって親に勧めたんだけど、家で栽培してみたらキノコが可愛くってねえ。自分でも育てたくなっちゃったんだ」


「そうだったんですか」


「実は地元の山形の公立は落ちちゃって私立の学費も払えなくてさ。親が困って知り合いのこの学園の理事長に相談したら学費はタダで寮費も安いって」


「えええ? そうなんですか?」


「うん。それなのに倉庫で勝手にキノコ栽培とかしたら悪いかなって思っていたんでござる」


 悪いって思いながら、やっているけどね。


「そうか。ダンジョンだったのか。変だと思っていたんだ」


「変ってなにがですか?」


「このキノコ見てよ」


「そ、そそそのキノコはまさか……」


「あ、知っている? 美味しいんだけど、もう少し大きくなるとちょっと動くんでござる」


 知っているもなにも僕の経験値稼ぎの主力〝お化けキノコ〟だよ。栽培なんてできたのかよ!


「動き出すまで大きくなると不味くなっちゃうから小さいうちに収穫しているよ。すごい早さで増えるのも特徴でござる」


 だから大丈夫だったのか。もっと大きくなったら体当たりとかで攻撃されてたぞ。ってか動くようなキノコ食わないで欲しい。


「毒だったらどうするんですか?」


「ああ、それがね。このキノコは美味しいんだけど、他のキノコを食べて死にかけたんだ。黄色に光るキノコがあったら鈴木氏も食べるだろ?」


 絶対食わない。


 木野先輩はなにを考えているんだ。


「ああ、照明にも使われるライトキノコか。確かに毒がある」


 人間の姿に戻ったマミマミさんが教えてくれる。


「やはり毒だったんでござるか。喉や胸が焼けるようでさ」


「それでどうしたんですか?」


「喉の痛みから逃れようとたまたま持ってきていたコーラを飲んだらスッキリ」


「コーラぁ?」


 異世界では日本の物品が特殊な効果を持つ場合があるからな……コーラは解毒剤の効果を発揮したのかもしれない。


「まあ、あの毒キノコのことはいいや。この動くキノコはさ。栽培に苦労したんだ」


「そりゃ苦労するでしょうね」


 モンスターの栽培が簡単にできたら困る。


「うん。問題は苗床だったでござる。ダンジョンに生える根のオガクズを菌の苗床にしたら上手くいったんだ」


「なるほど」


 異世界のものは異世界のもので栽培しないと上手くいかないのかもしれない。


「ところで扉が開いた時先輩がボタンを押してくれたんですか?」


「いやあの辺は根っこが一杯張ってるから扉があったことすら気がつかなかったよ。ましてやボタンなんか」


「え? じゃあ、どうして扉が開いたんだ?」


 今は根を剝がしてボタンを見つけて扉を閉じているが、先輩は扉が開いた時にはボタンの存在にも気がつかなかったという。


「ちょっと調べてみるか」


 みんなで扉の前に立つ。


「うーん。何年も、開閉してなかったような扉がどうしてだろう?」


 調べてもわからなかった。


「魔法かもな。やってみよう。オープンドア」


 マミマミさんは魔法かと思ったらしい。


 扉を開けるのだろう魔法を放つ。


「ふむ。魔法が効かないタイプの扉のようだ。魔法ではないのか」


「マミマミさんの魔法でも開かない扉があるんですか?」


「馬鹿にするな。物理では開けられるわ!」


 それは力でぶち壊すって言うんじゃ。


 モンスターを防いだり、冒険者を防いだり、ここに扉が存在する価値はあるので壊すのはやめてもらう。


「この扉ってどんな状況の時に開いたんだっけ? 確か……僕が開けって念じながらひらけゴマって言ったんだよな」


 その時だった。


 扉が音を立ててゆっくりと上へ開きはじめる。


「ど、どういうことだ? まさかひらけゴマが扉を開ける合言葉だったのか?」


 ひらけゴマは日本でも有名な合言葉だ。この異世界で日本語はモンスター語だからあり得ない話ではない。


「違う! トオルが開けと念じたほうだ。ステータスで魔力を確認してみろ」


 え? ステータスをチェックする。


 【魔 力】31/41!


「魔力が減っています」


「だろう。ならこの扉を開くスキルを発動させたんだ。おそらくゲート管理とかいう聞いたことないスキルだ」


 スキルとか魔力ってなに? と聞いている木野先輩は放っておく。


「扉を開けるとかいう大したことないスキルだけど嬉しいな」


「大したことないだと? ワシの魔法でも開かない扉を開けたスキルだぞ! なんなんだ一体!」


 マミマミさんが地団太を踏む。


「ご主人様! マミマミさんの魔法でも開けられない扉をスキルで開けちゃうなんてすごいです!」


「そ、そう? ……うっ」


 シズクに褒められて照れていると、マミマミさんにキッとにらまれてしまう。


「ご、ごめんなさ~い!」


 シズクも怖かったのかすぐに謝った。


「まあいいわ。ひょっとするとこの場所はゲートに関係しているからかもしれん」


「どういうこと?」


「ワシにもよくわからん。ともかく、これでキノコ頭の部屋から寮に帰れたからよかったではないか」


「確かにそうですね」


 木野先輩の部屋を使えば、これまで出たすべてのモンスターを倒せる階層に簡単に行けるのだ。


 木野先輩の部屋から寮の廊下を歩いて僕の部屋に戻る。


「今日は大冒険でしたね~ご主人様」


 モンスターを倒してレベルも上げて、はじめてスキルも発動させた。


 僕の部屋がダンジョンの地下五層につながっていて、木野先輩の部屋がダンジョンの地下四層につながっていることもわかった。


「だね。でも、もう朝の五時だよ。朝ご飯作るのに朝も六時半に起きないといけないから早く寝よ寝よ。起きれるかなあ」


「レイコは起きないだろうからここで寝るぞ」


 マミマミさんが真神の間に帰るには美夕さんの部屋を使わなければならない。


 マミマミさんは一組しかない布団に真っ先に転がった。


「はいはい。どうせそうなると思っていましたよ」


「あ、トオル」


「ん?」


「やっぱりスースーするからトオルのパンツ貸してくれ~」


 僕らは昨日と同じように一組の布団で雑魚寝した。

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