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23話 ならずものパーティー遭遇!?

 噴水の部屋から出てモンスターを探しながら、僕たちはそんなことを話す。


 噴水部屋からかなり離れた頃、後ろから声をかけられた。


「お前ら、ちょっと待てよ」


 四人の冒険者がやってくる。


 おそらくパーティーなのだろう。


 話しかけてきたのは共通言語のスキルを使うスキンヘッドの冒険者だ。


 鉄製の胸当てにおそらく鋼鉄の長剣をさやに挿している。


 最初はおっさんかと思ったが、傍らで見ると結構若そうだ。二十五歳ぐらいだろうか。


 少しだけ警戒する。


「お前らは冒険の初心者だろ?」


 本当のことを言わないほうがいいだろうか。


「黙っていても服装でわかるぞ。荷物も持たず、そんな格好でこの地下四層まで降りているんだからな」


 確かに僕らは食料すら持ってきていない。


 先ほどの十字傷のダンさんが心配して、食料をわけてくれようとした。


 乾燥したクッキーみたいな食料で不味そうだから断ったけど。


「どうだ? ドルガスの冒険者パーティーにこないか? ドルガスってのは俺だがな」


 勧誘だったのか。


 シズクとマミマミさんと顔を見合わせる。


「リーダーどうするんだ? ワシはリーダーに従うがな」


 マミマミさんは僕に従うと言っているが、明らかに嫌そうな顔をしている。


 僕はちょっと嬉しそうな顔をしていたのかもしれない。


 異世界の情報が増えるし、単純に冒険者に興味がある。


 ただ、シズクが貴重な白スライムであったり、マミマミさんが巨狼であったりすることを考えれば、バレてしまうリスクは大きい。


「す、すいません。僕たちは三人で間にあってて」


「あ、モンスター語? お前に言ってねえよ」


 スキンヘッドの冒険者ドルガスが凄む。


「話しているのは、さっき回復魔法を使っていたそこの獣人の女だ。お前なんか知るか」


「えええ?」


 くっそ。コイツらマミマミさんの回復魔法を憩いの場で見ていたのか。


 魔法の足跡はまだついているから追うのはさぞかし簡単だったことだろう。


「なんならそっちの変な格好したガキ女も面倒見てやってもいいぜ。なかなかいい女だしな。へへへ」


 ドルガスがシズクのほうを見る。


「私はご主人様と一緒です! アナタのパーティーには入りません!」


「ほ~ガキのくせに一丁前のことを言うじゃないか」


 ド、ドルガスは日本語が通じるのか?


 話しているのは共通言語スキルのテレパシーだが、僕やシズクの言葉が通じているようだ。


 モンスター語=日本語が通じる冒険者もいるのかもしれない。


 って冷静にそんな分析をしている場合じゃない。


 僕ら三人は適度な間合いを取る。


 しかし、ドルガスのパーティーに囲まれていた。


「冒険者ギルドの規則でよ。ギルド員同士の争いはご法度になっているだろう? だから穏便に勧誘しているんだ」


 おお、冒険者ギルド! やはりあるのか!


 冒険者のギルド員同士が争ってはいけないなどという規則もあるらしいぞ。


 また冷静に分析してしまったが、ドルガスのパーティーの冒険者は剣やら斧やらメイスやらを抜き放つ。


「だから人間は嫌いなんだ。リーダーの意思を聞くまでもなさそうだな」


 殺気のこもった言葉を聞いた僕はマミマミさんを羽交い締めにした。


「な、なんだ?」


「ちょ、ちょっと待ってください」


「こんなヤツら構わんだろ」


「い、いくらなんでも殺すのは。ひょっとしたら家には病気の奥さんか子供がいるのかも」


「知るか! どうしろっていうんだ? 一人は殺らんとアイツらわからんぞ!」


 僕はある方法をマミマミさんに耳打ちした。


「なるほど。トオルは賢いな」


 ドルガスが怒鳴る。


「おい、お前らなにモンスター語でこそこそ話しているんだ。さっさと……」


 マミマミさんがYシャツを脱ぐ。


「へっへっへ。わかってんじゃ」


 ドルガスは下卑た笑みを見せたが、すぐに恐怖に引きつった顔に変わる。


「な、なんだこいつはわああああああああ」


「じ、人狼だぞ」


「逃げろ~!」


 人狼?


 まあ美少女が通路に収まりきらないような巨狼に急に変わったら恐ろしいに決まっている。


 ドルガスのパーティーの冒険者たちは武器も放り投げて、一目散に逃げ出した。


「ほうほう。これは素晴らしい鋼鉄の剣ですね。ファンタジー感があるし、もらっておくか」


 僕が剣を拾っていると人間の姿に戻ったマミマミさんが騒ぎ出した。


「トオル~!」


「どうしたの?」


「パンツが破けた~」


 マミマミさんの手には水玉の残骸らしきものが握られていた。


 それ以前にYシャツを着てから教えて欲しい。


「パンツを脱ぐのを忘れて変身しちゃったんですか?」


「うん」


「とりあえずYシャツを着ましょう」


 マミマミさんがまた完全な裸Yシャツに戻ってしまった。


 はぁ。上の階層に上る時の階段が楽しみ、じゃなくて困る。


「スースーする。だから人間は!」


「暴力でご主人様を仲間外れにしようなんてとんでもない人たちです!」


 マミマミさんとシズクが怒っている。


 確かに鋼鉄の剣と階段の楽しみはくれたが、とんでもないヤツらだった。


 しかし、二人――というか二匹か――に、これ以上人間の悪いイメージを持たれたら困る。


「いや、いい人間も一杯いるよ」


「そうか~?」


 マミマミさんは明らかに疑っているし、シズクもプンプン顔だった。


「おーい! 君たちぃ~!」


 また遠くから声をかけられる。


 走ってきたのは十字傷のおっさん冒険者、ダンさんのパーティーだった。


「大丈夫だったかい?」


「大丈夫だったってなにがですか?」


 マミマミさんが僕の言葉を翻訳して伝えてくれる。


「あの用心棒ギルドの連中になにかされなかったかい?」


「あ~」


 用心棒ギルドってさっきのヤツらだな。


「用心棒ギルドのヤツらが休憩所から君たちを追っていったようだったから、助けにきたんだけど」


 助けにきたと言っても時間は大分経っている。


 その上、ダンさんとメンバーは少し震えていた。


 おそらくドルガスのパーティーのほうが強いのだろう。


 それでも助けにきてくれたのだ。


「いや、大丈夫でしたよ。話せばわかりました。剣もくれたし」


「え? あ、いや、マジ?」


 僕は小さい声でシズクとマミマミさんに言った。


「ほらね。いい人もいるでしょ?」


「頼りないがな」


「はい!」


 マミマミさんは皮肉を言って、シズクは笑顔で返事をした。


「ところで用心棒ギルドってなんですか? ドルガスさんは冒険者ギルドにも入っているみたいだったけど」


「え? 君たち用心棒ギルドを知らないのかい?」


「え、えぇ。実は田舎から出てきたもので」


 田舎って言ってもマミマミさんはラスボス後の隠しダンジョンのような田舎だけど。


 僕は立川だし。


「そうなんだ。じゃあ知っておいたほうがいいから教えよう」


 ダンさんの話によれば、国や行政も公認しているのが冒険者ギルド。


 一方、用心棒ギルドは非公認のギルドで、このダンジョンの地下一層の地下街が本部らしい。


 ってか、ダンジョン地下一層が地下街になっているのかよと驚いたが、さすがにそれを知らないのは変だと思われそうなので知っているような顔をした。


 地上からきたら必ず通るだろう地下一層のことを知らないのは変に思われてしまう。


「用心棒ギルドの正式名称は傭兵ギルドなんだけどな。アイツらは勝手にパーティーに入り込んで用心棒代を徴収したり、めちゃくちゃをやってくるんだ」


 そんな連中だったのか。


「関わらないほうがいいぞ。剣も返したほうがいい」


「いろいろ教えてくれてありがとうございます」


「いや俺のほうこそ。仲間に回復魔法を使ってもらってありがとうな」


 挨拶を交わしてダンさんたちと別れる。


「いい人たちでしたね」


 シズクが言った。


「いろいろと情報が手に入ったしね。でも時間かかっちゃったなあ」


 今、何時だろうと思ってスマホをポケットから取り出す。


「げっ? 午前四時?」


 新鮮な体験が多すぎて、つい時間が経つのを忘れていた。


 学校はなくても朝ご飯を作らないと会長に怒られてしまう!

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