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15話 あるのか!? ステータス

「こ、これ、どうしたの? 鈴木氏」


 いつものようにキッチンにキノコ料理を作りにきた木野先輩が驚く。そりゃ驚くだろう。


 すべてのコンロをフル稼働にして大量のハンバーグを焼いているのだから。


「会長がたくさん食べますから」


「いくら会長だってこんなには食べないと思うけど」


「おばあちゃんのホームの人にも、お土産で持っていこうかと」


「ふーん。コンロ一つ貸してね。キノコ炒め作りたいんだ」


 老人ホームは食べ物の差し入れなんて受け取ってくれない。


 ましてや他の入居者や職員にまで行き渡る量だ。


 でも先輩はそれで納得してしまった。キノコのことが最優先なんだろう。


 ただ心配なのはハンバーグのパテが玉ねぎ入りということだ。


 犬は玉ねぎが食べられない。狼はどうなんだろう。


 これは大量に作って冷凍してあったものだからどうにもできなかった。


 念のため、美夕さんにドッグフードを買ってきてもらうように頼んだけど。




 夕食が終わった。みんなは食堂を去る。


 僕は焼き上げておいたハンバーグをパンに挟んで大量のハンバーガーを作った。


 美夕さんにはドッグフードを持って先に行ってもらっている。


「よし! 行くか!」


 ハンバーガーを大きなダンボール箱に詰め込んで、美夕さんの部屋を目指す。


 シズクがドアを開けてくれた。


 会長がいないのを確認してササッと美夕さんの部屋に入る。


「美夕さんは?」


「マミマミ様のところへ先に行っています」


 異世界につながるドアは開けっ放しになっている。


 靴を履いてダンジョンの森を歩く。


「ハンバーガーって料理をたくさん作ってきたんだ。シズクの分もあるからね」


「ありがとうございます!」


 僕も一緒に食べられるようにと、寮の夕食はご飯を小盛りにしておいた。


 せっかくなら巨狼さんと一緒にみんなでハンバーガーを食べたいしね。


 森の空間の中心であろう開けた場所が見えてきた。


 巨狼さんが寝そべり、隣には美夕さんが立っていた。


「料理を作って持ってきましたよ~」


『待て待て。今はこれを食っている』


 見ると巨狼はガツガツとドッグフードを食べていた。少し安心する。


 もし玉ねぎが入ったハンバーガーを巨狼さんが食べられなかったらと思ったけど、ドッグフードを美味そうに食べているならいいか。


「じゃあ僕らも食べようか。シズクどうぞ。美夕さんも少しいる?」


「ありがとうございます!」


 シズクがお礼を言って美夕さんもうなずく。


 三人でハンバーガーを手に持つ。


「いただきます」


 ファストフードチェーンのハンバーガーも美味しいけど、自分で作った分厚いハンバーグをパンで挟んだものは格別だ。


 それに森で食べるのも気分がいい。


 夕食を少しだけしか食べなかったのもよかったかもしれない。


「ご主人様~美味しいです~!」


 シズクも美夕さんも美味しそうに食べている。


 フレッシュな野菜を挟んだのもよかったのだろう。


『お前たちが食べているものはなんだ?』


 ふと巨狼さんを見るとアレだけガツガツ食べていたドッグフードがピタリと止まっている。


「ハンバーガーっていうんですけど」


『美味そうな匂いだな』


 もちろん巨狼さんのために作ったんだけど、玉ねぎは大丈夫なんだろうか。


「実はこれ玉ねぎが入っていて。元々、大量に作って冷凍保存していたハンバーグのパテで作ったものなので分離し難く」


『玉ねぎのなにが問題なのだ? ああ、ひょっとして犬は玉ねぎを食べてはいけないということを気づかってくれているのか?』


「平気なの?」


『ワシを倒せる毒を持つのはヨルムンガンドぐらいだ』


 北欧神話のヨルムンガンドなら知っている。フェンリルの兄弟で雷神トールに毒を使って相打ちになった巨大な蛇だ。神々の戦いの領域だぞ。


 この巨狼さんが言っていることは本当なのだろうか。


 ともかく、ハンバーガーはあげることにしよう。


「はい。どうぞ」


 ハンバーガーを一つ取って渡そうとすると、立ち上がった巨狼さんにバグゥと腕ごと嚙まれる。


「うわあああああああ!」


『慌てるな』


 腕には傷一つついてない。


 ハンバーガーだけがなくなっていた。正直、心臓に悪い。


 巨狼さんがもぐもぐとハンバーガーを食べる。


『な、なんだこれは……』


「ハンバーガーですけど?」


『もっと、もっとくれ!』


 巨狼さんが尻尾をパタパタと振った。見るからに興奮しているようだが、そんなに美味かったのだろうか。


 しかし、無傷とはいえ、あの恐怖を再び味わいたくはない。めっちゃ興奮しているし。


 そんなことを考えていると美夕さんがスッと立ち上がる。


 箱からハンバーガーを取り出しては次々に巨狼さんの口に投げ入れ出した。


『美味い! 美味いぞ!!!』


 まったく嚙まなくても味がわかるのだろうか。


 美夕さんが箱を逆さにしてもうないよというジェスチャーをすると巨狼はやっともぐもぐと嚙みはじめた。


『これほど美味いものを食べたことがない。お前は料理人なのか?』


 確かに自作のハンバーガーだけど、そんなに美味しいだろうか。


 異世界にはないウスターソースとトマトケチャップの味が気に入ったのかもしれない。


「ソースの美味しさですよ。それは僕が作ったものじゃないから」


「ご主人様が作るものはなんでも美味しいのです!」


 シズクが胸を張ってくれる。スライムだから喋り方でそう判断した。


 美夕さんもコクコクとうなずく。


 そういえば美夕さんは毎日僕の料理を食べてくれている。


『とにかく、もっと食いたい』


「すいません。もうなくて」


『作ってくれないか?』


 料理は嫌いじゃないから作るのは構わない。


 しかし、これほどの量を食べられるとこはる荘の食事代がなくなってしまう。


 ただでさえ学生寮の予算は多くはないのだ。


「先に食べていたドッグ、もとい乾燥フードならお得用のものも買ってこられるんですが」


 巨狼さんはその大きさと比べれば少食のようだが、それにしたって食う。


 ドッグフードでも相当お金がかかりそうだ。


 美夕さんが巨狼さんの顔に近づく。


 なにか話しているのだろうか。


『なるほどな。人間が求める金というやつか』


 どうやら美夕さんが話してくれたようだ。


「そ、そうなんですよ。僕はまだ学生であんまりお金持ちのほうじゃなくて」


 会長はお金持ちだけど、僕はむしろ貧乏だ。


『そうか。それは悪いことをしたな。あれほどの美味しさ。ハンバーガーという食べ物も高級品だろう』


「そんなでもないですけど」


 ファストフード店の主力商品になるぐらいだし。


『真神族として恩を返さねばな』


 お礼をしてもらうために作ったわけではないが、とりあえずダンジョンやこの世界についていろいろ聞こうか?


 そういえば、鍵について疑問に思っていた。


「あの~日本の集合住宅の鍵がこのダンジョンにつながるドアを出現させるためのアイテムになっているようなのですが、どういうことでしょう?」


 僕は寮の個室の鍵を見せながら巨狼さんに聞いてみた。


 現代の日本の無機質な建物の鍵がどうして異世界のドアを出現させるアイテムになるのか。


『元々、このダンジョンと日本の地にゲートは作られていた。その鍵はゲートを出現させるイメージの補強になったのだろう』


「わかるようなわからないような」


『つまりゲートを出現させたのはお前だ。鍵はその手助けに過ぎない』


「えええ? そうなんですか?」


『疑うのか』


 う、うーん。自分がそんなことをできるとはちょっと信じられない。


 けれども、これ以上聞いたら怒られそうだ。レベルアップについて聞いてみるか。


 そちらのほうが実用的だ。


「あの~僕はレベルアップをしたような気がするのですが」


『ほう。よかったな』


 反応が薄い。僕は感動したけど、異世界の生物にとっては当たり前のことなのかもしれない。


「本当にレベルがアップしたのか確認する方法はありますか?」


『ステータスを確認すればよいではないか』


 あるかもしれないと思っていたが、やはりあるのかステータス!

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