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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
災禍の討滅者編
96/140

新たなる主力艦を

評価、ブックマ、感謝です。

おかげさまでブックマ800件突破しました。

楽しんで頂けたら、幸いです。


 作戦はスケジュール通り、遂行している。

 妨害に現れる敵勢力もなし・・・・。


 これが嵐の前の静けさ、というやつであろうな。

 やつらが、いなくなった訳ではない。

 ただ此方の探知圏外であるグレイトパール星系を取り巻く、深淵宇宙の何処かで息を潜めて、襲撃の機会を伺っているだけだ。

 次に動き出した時、それは大きな戦いになるであろうな。

 

 俺もそのための準備をせねばなるまい。

 特型ドックがない以上、大戦艦級の建造はできない。

 しかし重戦艦級の建造ならば可能である。


 タマゴ、隼の生産はどうなっている?


「76機、だよ。」


 タマゴの端的な答えを受けて、俺は大型母艦級の建造を諦める。

 予想通りであるが、機動兵器群を確保できない状況で母艦枠を建造する意味がないのである。


 ルル大提督―――。


「貴方、良いご報告があります。ようやく見つけましたわ。」


 ルル大提督が仮想コンソールを操作して星間マップを開く。


「グレイトパール星系から67光年先、アリゼ連邦がM73星系と登録した未踏破星系にて、敵艦を追跡中だったノービス級偵察艦がEvilの巣を発見しました。規模は中規模、確認できた卵巣は13個です。」


 ルル大提督の報告と拡大表示された映像。


 その映像には座礁、あるいは戦闘の結果放棄されたと思われる破壊された大型航宙船の残骸が映っていた。

 船体外殻部側面や外殻に開いた破孔部分には、Evilの卵と思われる複数の球形と卵を包み込む毒々しい深紫色をしたドロドロの粘液が映っている。


 この映像は星系外に身を潜めたノービス級偵察艦が最大望遠で撮影したのであろう。

 モニターに映る映像には、光学補正された後がありありと残っていた。


 これもまた問題であるな。

 やつらの巣を発見した以上は、一撃お返ししたいものであるが、目前の敵を放置して大規模戦力の派遣を行うのはリスクが高すぎるのである。


「間違いなく、狙われますわね。」


 であるな、少なくとも俺なら狙い撃つのである。


「わたしもです、見逃す道理がありませんわ。」


 ルル大提督、この宙域に他にも巣が点在している可能性がある、引き続き偵察活動を継続せよ。


「もう命じてありますわ、引き続き偵察は継続中です。」


 うむ、さすがである。

 ルル大提督、これより決戦に向けて重戦艦の建造をするのであるが、何を重視すべきであろうか?

 運用側の意見を聞きたい。


「そうですわね・・・、同級乃至格上の敵大戦艦級と砲撃戦が可能な主砲攻撃力と多数の敵を同時攻撃出来る広範囲殲滅力かしら。

 巣の攻撃も女王種討伐のどちらに投入するとしても、それは強襲作戦になりますから、アサルト向けにある程度の機動性と装甲も欲しいですわ。」


 火力と殲滅力であるか・・・。

 忌憚なき意見感謝である。

 俺は艦体設計を開始する。


--------------------

【報告】艦体設計を開始します。


 艦体構造はシサク1500メートル重戦闘母艦の設計データを流用。


 艦尾の大型格納庫区間を排除し、交換に大型粒子加速器を設置。


 艦尾から艦首まで続く全長1200メートル、30メートル口径の砲身を内蔵。


 艦首に内蔵型重粒子加速砲の発射口を設置。


 22メートル口径連装重レーザー砲塔を6基12門を艦前部上下に3基づづ直列配置。


 15メートル口径3連装レーザー速射砲10基15門を艦中央部上下に4基づつ円形配置、さらに艦後部上下に1基づつ配置。


 4連装レーザー高角砲80基を艦後部8枚のスカート部分に2基づつ。のこり64基を艦全体に均等配置。


 対艦重プラズマキャノン4基を2基づつ艦前面部両舷に並行配置。


 対艦プラズマキャノン8基を艦後部8枚のスカート部分に1基づつ配置。


 小型プラズマキャノン発射機80基を艦両舷部に40基づつ配置。


その他、推進器、並びに装備はシサク1500メートル重戦闘母艦と同様の配置とする。

--------------------


 こんな感じであろうか。

 シサク1500メートル級重戦闘母艦の設計データを元にして、重戦艦を再設計してみたのであるな。

 なにより生産に時間の掛かる部品のほとんどを、既に加工済みの重戦闘母艦のパーツで流用出来るのである。

 これなら建造時間も大幅に短縮可能である。


「貴方、ふたりが怒りますわよ。」

 ルル大提督が苦言を呈すが、俺は方針を変えるつもりはない。


 ルル大提督、それでも、である。

 今は母艦級戦力よりも戦艦を必要としているのであるな。


 俺の下した結論に―――。


『はんたい、はんたいっはんたーいっ!ぜーったいはんたーいっ!』

『司令官さん、酷いです。私たちの重戦闘母艦の建造を優先してくださいっ。』


―――間髪入れず、2つのモニターが開き、プラム艦長とチェリー艦隊長から猛反対が届いた。


 ふたりの反応が早すぎるのであるな。・・・・ルル大提督、さてはチクったであるか?

「さて、何のことでしょう?」

 ルル大提督が疑惑を否定せず、ニコっと笑った。

 ぐぬぬ、追い詰める決定的な証拠がないのである。


「そんなの些末なことですわ、ほら貴方、ふたりが怒ってますわよ。いかがなされますの?」

『酷いです、司令官さん、私たち2人で動かす船が、そんな重戦艦に劣ると思いますか?』

『そうだ、そうだーっ!』


 プラム艦長が同調し、チェリー艦隊長がいつもの表情とは違う、とても真剣な表情で俺に問いかける。


 しかし、チェリー艦隊長。搭載する機動兵器が足りないのである。搭載予定の重戦騎もなく、格下の戦騎の数も足りないのであるな。

 機動兵器なき母艦級戦力が無力な事は、誰よりも貴官が1番よく知っているはずである。


『それでもです。私たちの船を作ってください。』


 それでもチェリー艦隊長が、俺の説得を諦めない。


「珠ちゃん、隼、あるよ。」


 タマゴが戦騎生産ラインを映す監視モニターを開き、ラインを移動していく可変戦騎隼の人型フレームに、複数のアームが部品を取り付けていく様子を見せた。


「いっぱい、あるよ。」

 

 そして、モニターに映る出荷待ちで並んでいる響の列。


 いやいや、タマゴ、ダメである、それはダメであるぞ。

 その生産途中の400騎の隼は、パシオン級機動母艦に搭載予定である、それを流用などと―――。


「パシオン、ポイっ。」


 タマゴが無常にも、球体の形をしたパシオン級機動母艦の3Dモデルをゴミ箱に投げ込んだ。


 捨てるなっ、である!・・・・いや、それもありであるか。

 俺はタマゴの示した可能性を検討する。


「たしかに戦騎ならありますわね。なら後はあなた方しだいですわ。新技術に新戦術、ぶっつけ本番で実戦になりますわよ、ふたりとも覚悟はよろしくて?」


ルル大提督の問いかけに―――。


『『はい、やってみせます。』』


―――ふたりは同じ台詞で決意表明してみせた。


「だ、そうですわよ。貴方、やらしてみてはいかがかしら?」


 ルル大提督のとりなしに―――。


 うむ、パシオン、ポイっである。


―――俺は変な答えを返した。


「・・・・貴方、疲れているのですわね。働きすぎですわ、少しは休まれた方が・・・。」


 なんという事であろう、ルル大提督から心配された。

 それはルル大提督の勘違いである。

 そのかわいそうなものを見る目はやめるのであるな。

 同情はいらないのである。

 とにかくルル大提督、パシオン、ポイである。

 どうせ戦力化出来ない戦力ならば、パシオン級も資材と考えればよいのである。

 まさしくパシオン、ポイであるな。


「はぁ、それでふたりの提案はいかがなされますか?」


 うむ、ふたりの決意は本物である。

 ならば泊地の主として、その意思には応えねばなるまい。

 重戦艦建造を取りやめ、予定通りシサク重戦闘母艦の建造を行うのである。

 チェリー艦隊長とプラム艦長は速やかに調整プランを提出せよ。


『はいっ、司令官っこれでヨロシクッ!』


 間髪入れずに、プラム艦長からデータが送られてきた。

 俺はそのデータを読み込み、これでいいのかとプラム艦長に問いかける。


『もちろんっね、チェリー。』

『はい司令官さん、ふたりで話し合って決めました。』


 ならばよいのである。

 俺はようやく揃ったデータを基本設計図に反映させる。後は―――。


重戦艦建造計画は順延となりましたが、遂にチェリーとプラムの専用艦の建造開始です。

この結果が、どんな影響を与えるのかは未定です。

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