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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
災禍の討滅者編
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読みやすくなっていれば幸いかな。

「あーあ大将、やっちまったなー、鬼を増やしやがったぜっ。」


 つまみの煎り豆をバリボリかじり、青鬼傭兵アポロがごきゅっとビールで流し込む。


「何を言うか、あれでこそ我が主君、たいへんけっこうっ!」


「けっこー、おーっ。」


 龍人武者マルスがガツンと飲み干したジョッキでテーブルを叩き、その隣に座る酔いどれデイジーがーごきゅごきゅと黒ビールを一気に飲み干し―――。


「ぷはーもう一杯っ!」


―――大ジョッキを掲げてお代わりを要求した。


「おうおう、こっちもいい具合に出来上がってんなー。」


 アポロがグイっとジョッキに残ったビールを一気に飲み干し、デイジーのジョッキをもって席を立つ。その横を4つのジョッキを運ぶアオイ艦隊長が駆け抜けていく。


「はーい生中4つ、どう、ネージュさん飲んでる?」


 アオイ艦隊長から突然話しかけられたネージュ大提督が、見ていたモニターから視線を外して彼女に向ける。


「ええ、もう一杯頂けるかしら。」


「どうぞ、どうぞ、あ・・これって。」


「ええ、私の船の改装案よ、さきほど珠さんから送られてきたわ。此処の主は仕事が早いのね、昔の主はさぼり癖が酷くて、よくケンカしたわ。」


 ネージュ大提督が昔を懐かしみ寂しげに笑う。


「見る?」


 アオイ艦隊長の視線が気になったのだろう、ネージュ大提督がそっとモニターを押し出して、ブランシュ・ネージュ号の改装案をアオイ艦隊長に見せた。


「うわ、細か・・・。」


 覗き込んだアオイ艦隊長が思わず呻く。


 それは船体全体に広がる改修箇所を示す黄色と赤で色分けされた修理箇所の彩色図。


 パーツひとつひとつに至るまで、厳しく吟味して作成された改装計画案だった。


「ふふふ、誇っていいわ、ここの主は本気で船と向き合える人よ。」


「うーん、他の泊地を知らないから、何とも言えないけど、珠ちゃんはグルグル案件以外は優秀かも?」


「かも?ね、ねぇアオイさん、此処はいつもこんな調子なの?」


「んーどうだろね、まだまだ始まったばかりの泊地だし、これから雰囲気なんて、どうとでも変わるんじゃないかな?」


「アオイさーん、こっち生ふたつお願いしまーすっ、ついでにおまかせで、なんか一品よろしくー!」


 チェリー艦隊長の隣に座るプラム艦長が手をパタパタ振ってそんな注文をだし―――。


「はーい、ちょっと待ってねー。ネージュさんもどう?」


―――アオイ艦隊長がネージュ大提督にも声をかける。


 それを聞いたネージュ大提督がビールを一息に飲み干し、空になったジョッキを掲げる。


「ああ、もう一杯頂くわ。ついでになにか・・・カラアゲ、もらえるかしら。」


「りょうかーい、アオイちゃんちょい辛特製カラアゲ、すぐ作るねー。」


 アオイ艦隊長がビールが残っていたジョッキを、適当に空になったジョッキと入れ替えて席を立つ。


 彼女を見送ったネージュ大提督が、サラサラと改修計画案に同意を示すサインをして、珠ちゃんに転送した。


「ちょい辛か、辛すぎないといいな。」


 くいっと軽くひとくち飲み、辛いのが苦手なネージュ大提督が笑った。


 盛り上げ担当を買ってでたアオイ艦隊長が、給仕に調理と大忙しに動き回り、彼女の手伝いをするムツハ隊長が、一緒に飲もう飲もうと酔いどれデイジーに絡まれている頃。


 増築された厨房にはガーベラ隊長が立ち、火にかけられた寸胴からはグツグツと煮えたぎる黒く淀んだ暗黒物質を上機嫌でかき回していた。


 彼女の料理がいったい誰に振舞われるのか、果たしてその暴挙を止められるのか、それは誰にも分らない。本来ならばこのような暴挙を許さず、この手の仕事をそつなくこなす完璧執事ウルが働いていないことが問題だった。


 厨房の惨劇に気づかない迂闊な完璧執事ウルが周囲に開いたモニター映像には、通常業務の映像の他にダブルピースを決める猫耳メイドワーカーが映っている。


 そう、サスケ団長はまだ逃げていた。


「さすがサスケ様ですね、完璧執事たるこのボクをここまで手間取らせるなんて、ですがその余裕も此処までです。必ず追い詰めて潰して見せます。」


 ウルがひきつった笑みを浮かべ、さらなる指示を実行する。


 そうこれはウルを巻き込んで、サスケ団長が仕組んだ新たな舞台。


 ウルによるサスケ団長を追い詰めるリアル追跡中と逃走するサスケ団長によるリアル逃走中のコラボ企画であり、さらにサスケ団長により、この逃走劇をモニターを通じて生放送するというリアル実況中まで行われているのだ。


 なんというカオス展開―――。


 サスケ団長にしては珍しく、観客には受けていた。


 そして―――。


「せっかくの妾の行為を踏みにじるとは何たる暴挙か、ムツハよ。お主はママの様になってはならんぞえ、妾のように色と雅に励むのじゃぞ。」


「怒りますって、あんなもの誰に食べさせるつもりだったんですかっ!」


「珠殿じゃ、日々の感謝を込めてひとつ手料理でも差し入れようというに、お主のせいでなにもかも台無しじゃ。」


「・・・アレ、洗い場にぶちまけたら、悶絶したフェザーが出てきたんだけど・・・」


「隠し味じゃよ、なんじゃ知らんのか?無学よのう。天使族はあれでよい出汁がとれるのじゃぞ。この程度で怒るでないわ、すべては妾の前をふわふわと飛んでおったあやつが悪いのじゃ。」


 ジト目を向けるアオイ艦隊長の前で、ガーベラ隊長が開いた扇で口元を隠してクツクツと笑った。



ちなみにガーベラの得意料理は天使のだし巻き卵です。


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