商談2
感想ありがとです。
着々と帰還の準備を整えていくマイヤ譲たちです。
楽しんで頂ければ幸いです。
行間修正。
「わたくしたちはあなた方を雇用したいと考えておりますわ。ですが、お金がありませんの、お支払いは現物支給でもよろしいかしら?」
「それは願ってもないが、なにをさせる気だ?」
「簡単な護衛任務ですわ、近くマイヤさんたちが故郷にご帰還なされます。その護衛艦隊にあなた方を使いたいのですわ。」
「護衛艦隊つきで帰郷ね・・・・・たいしたご身分なことで、で、報酬としていかほど頂けますか?」
「そうですわね、わたくしたちの使う船のパーツ、そう例えば、小型の対消滅エンジンや空間跳躍機関を複数基、あるいはそれらを組み込んだ有人武装船などいかがかしら?
どれも売り払えばひと財産にはなりませんこと?」
要塞令嬢が軽くカップを傾けて、香りを楽しみ軽く紅茶で唇を湿らせる。
「そいつは豪勢だ。いいでしょう、報酬としては充分です。」
彼女が提示した報酬は、破格、そんな言葉では言い表せられないほど、ぶっとんだ内容であった。
詳細はこれから詰めねばならないが、その数しだいでは借金を返して、さらに最新鋭の巡航艦が1隻買えるかもしれない額になるはずだ。
「泊地同盟の使う動力炉や跳躍機関、その完全未使用品となれば、国家や企業など売却先には困らない。いや、競って買い注文をだしてくる、私も異存はない。現地契約業務として、本社に通達する。」
ルーティシアも異存はないと答え―――。
「ただベルクさん、これは忠告だが、パーツはともかくとして、戦闘艦はやめておくべきだ。はした金で国に奪われるか。あるいは―――。」
―――自分の首を掻っ切って見せた。
「そこまでやるか・・・いや、やるか。」
破格の報酬に目がくらみ、ベルクも浮かれていたらしい。
ルーティシアの忠告に、一気に頭も冷えた。
「ああ、泊地同盟と良好な関係にある帝国と違って、殺してでも奪い取る。そう考える組織は少なくない。船舶所有証明書など、いくらでも偽造出来る事は、私よりむしろあなたの方が詳しいはずだ、違うだろうか?」
「ああ、確かにそうだ。俺も手に入りゃそうするつもりだったしな。要塞令嬢さん、悪いが、戦闘艦は報酬から外してくれ、代わりに各種パーツに色をつけてくれねえか?」
「ふふふ、分かりましたわ、わたくしから旦那様にはお伝えしておきます。」
ルーティシアが会話の流れが途切れたタイミングで、口調を改め―――。
「要塞令嬢さん、不作法を承知で尋ねたい。彼女にはそこまでする価値があるのか?」
―――決定的な一言を問いかける。
要人護衛依頼でも、此処まで破格な報酬が提示されることはまずない。
星間軍事企業体エーデルシュタインという超一流企業に勤める艦長として、彼女も会社の定める報酬額の目安を承知しているからだ。
しかし、要塞令嬢の答えはルーティシアの想定していたものとはまったく違った。
「さあ?そんな些細な事など存じ上げませんわ。すべてはわたくしの旦那様が決めたこと、妻であるわたくしは全力で旦那様をお支えするだけですわ。」
うっすらと頬を染めて、要塞令嬢がそう返答したからだ。
彼女の事を知らない初対面の人と、怖くて突っ込めない隣の知人しかいない状況で、彼女は誤解を垂れ流し、今日もせっせと外堀を埋めていく。
わたくしの旦那様、その夢の結実を信じて・・・・・。
「では話を戻すが、どこまで護衛すればいい?」
「ここです、アリゼ王国の惑星プルミエ、アリゼ連邦調査開発局本局までお願いします。」
マイヤ嬢が情報端末に星間航路を表示して見せて、行きたい場所を指し示す。
「シャルルー星系か、ここからだと片道およそ83光年ってとこだな、なら長距離跳躍5回ってとこだろう。」
「5回?3回で行けるはずだ、なぜ遠回りをする。」
持って当然の疑問をルーティシアが提示する。
「途中のF41星系が不味いんだよ。あそこは海賊どもの根城もあって治安が悪い、やつらに用がないなら近づかないのが1番だな。ま、奴らと無駄なドンパチやりたいならとめないがな。」
ベルクが迂回するルートを提案したのは、問題のあるF41星系を回避するためだった。
「それにだな、遠回りでも途中にある宇宙港には立ち寄るんだ。少しばかりでも情報は仕入れられるだろうよ。」
そして、情報収集もしていこうと提案した。
「なるほど、宇宙港に立ち寄るならば、私も本社に依頼の件を連絡出来る。うまく交渉出来れば、支援のひとつやふたつは引き出せるだろう。」
「なら決まりだな。クライアントもそれで構わないか?」
「ええ、お任せしますわ。星間航路など素人のわたくしにはわかりませんもの、マイヤさん、あなたもそれでいいかしら?」
「はい、お願いします。」
「あ、そうだわマイヤさん。お伝え忘れるところでしたわ。旦那様からお願いがありますの。
鉄拳娘さんが捕虜にした女性と保護した少女たち、纏めてあなたにお任せするとの事ですわ。捕虜にした人たちも星系退去処分と決まりましたから、此処を去る時に一緒に連れていってくださいませ。」
要塞令嬢が最後に爆弾を放り込んで会談は終わった。
最初からマイヤ嬢に拒否権はなく、泣く泣くお願いを受け入れた。




