サスケ団長ご指名です。2
評価、ブックマ感謝です。
今回もサスケ団長が突っ走ります。
かるくホラー風味のないない作戦、楽しんで頂けると幸いです。
行間修正。
ないない作戦―――。
口で語るだけならば、とても簡単でありながら、その作戦には高度な技術が惜しみなく使われているが、その結果として、とても質の悪い悪戯の類となり果てている。
いまモニターに映る男も、先ほどまで話していた同僚を捜していた。
彼の背後に現れた姿と音を消したサスケ団長のメイドワーカーにトントンと肩を叩かれ、振り向いた彼が目を離した一瞬の間に、リーフ艦長のメイドワーカーに口を押えられて連れ去られる。
たいていの相手は口を塞ぎ、薬で眠らせていたようだが、ナノマシン処理で強くなった強化人間だけはナノマシンをハッキングされて、一瞬で意識を途絶させられている。
まさにひとりひとり、いないいないと消えていく。
船内に灯る非常灯の仄かな光が照らす暗闇の中では、光学迷彩装置による透明化で隠れているふたりを肉眼で見つけるのは非常に困難であり、今も必死に暗闇に目を凝らした男が、不安げに同僚の名前を呼んでいる。
その男の後ろ姿が大きくなり、やがてモニターからも消えた。
そして場面が変わり、今度は船室らしい場所がモニターに映る。
その部屋の隅には小さくなって震えている毛布をかぶった少女を、ずっとモニターが映していた。
カタリ、コトリと風もないのに、物が動き、音がする。
かわいそうになるくらい、少女が毛布越しでも分かるほど怯えている。
当然と言えば、当然であろう。
サスケ団長は、わざわざ誘拐され監禁されていた女子たちの集団を観察しており、集団の中で1番イイ絵が取れそうな子を決めてから実行に移しているのだから―――。
カタリ、コトリと音がする。
時々、ポチョン、ポチョンという水滴が落ちる音がする。
サスケ団長による、少女を怖がらせるだけの仕込みである。
薄暗闇の中で音しかしないそんな状態が、もう10分程度続いていた。
少女の助けを求める小さな声に答えるものは誰もいない。
その部屋には、その少女以外にもう人はいない、
他の誘拐された被害者たちはサスケ団長たちの手によって、既にいないいないされていた。
少女の毛布越しにトントンと肩が叩かれる。
少女は動かない、いや動けない。
再び、トントンと肩を叩かれる。
そして、ゆっくりと毛布がめくられ―――。
少女が猫耳ゾンビチックなメイドさんとご対面した。
悲鳴を上げる暇もなく、ゾンビメイクされたリーフ艦長の猫耳メイドワーカーにしがみつかれ、少女が無理やり口づけを奪われる。
交わし合う接吻。
やがてリーフ艦長によって少女の口蓋がこじ開けられ、悲鳴ごと薬を飲み込まされた少女もまたモニターから消えた。
最後に船外作業員がひとり、またひとりと消えていき・・・・。
そして、誰もいなくなった。
― 完 ―
・・・・これはエンターテイメントとしてどうなのであろうか?
残念な事に俺には、その良さがわからなかった。
「うーん、10点かしら。」
そして、ルル大提督の採点はとても辛かった。
--------------------
【報告】サスケ団長が入室許可を求めています。
--------------------
「いかがでござったか? 拙者、今回は自信ありでござる。ニンニン。」
派手に煙と風船を飛ばして現れたサスケ団長が、ビシッとポーズを決めて見せた。
しかし、そんな彼に俺は告げねばならない。
サスケ団長、リーフ艦長から抗議文が届いているのである。
内容は短く【くたばれっ変態!】である。
貴官の掲げるエンターテイメントは味方にとても不評であるな。実行に移す前にもう少し内容を吟味する必要があるのではないか?
「ぐふ、さすがリーフ殿にござる。的確に拙者の胸を抉る鋭い言葉でござった。されどこのエンターテイナーサスケ、次なる舞台では見事大成功を収めてみせるでござる。」
ニンニンとポーズを決めたサスケ団長がリベンジを誓っている。
そんな反省のはの字も見えないサスケ団長の背後から―――。
「サスケさま、此度のリーフお嬢様の件で少しお話がございます。」
―――完璧執事ウルが告げる。
「ウル殿、芸の道は長く険しく、遠きものにござる。それはリーフ殿とてご承知のはずでござろう、此度の一件、少々リーフ殿には不幸な出来事でござった。」
「それはそれ、これはこれです。サスケ様、リーフお嬢様を恥ずかしめ、泣かせた挙句、引き篭もらせたその罪、完璧執事たるこのボクが見逃すとでもお思いですか、お覚悟を。」
ビシッと両手で荒縄を引きウルが迫る。
「しからば御免、ニンニンっ。」
サスケ団長が纏めて煙玉を叩きつけ、派手に吹き上がる煙と弾ける爆竹を隠れ蓑にして彼は逃走した。
--------------------
【退出】サスケ団長が退出しました。
--------------------
「逃がしません。旦那様、施設警備隊の出撃許可を願います。」
「ウル、遠慮はいりませんわ、情け容赦なく狩りたて、あの猫耳ごとつぶしなさい。」
ルル大提督が首を掻っ切るジェスチャーをする。
「はい奥様、万事このウルにお任せください。」
いやいやいや、メイドワーカーは希少である。こうも頻繁に壊されては―――。
「貴方、まさか邪魔などなさいませんわよね。」
ルル大提督がニッコリと笑った。
うむ、委細ルル大提督に任せるのである。
すまないサスケ団長、俺は無力である。
エンターテイメントなんですから、滑ることだってあるでしょう。
くたばれっ変態! この一言に尽きます。




