喋る工具箱?
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【成功】シャンス級中型輸送艦を捜索せよ。を達成しました。(20/30)
報酬として功績点50点、工作戦騎隊コインを受領しました。
【依頼】シャンス級中型輸送艦を救出せよ。が発令されました。
【依頼】巨大デブリを調査せよ。が発令されました。
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『ふふふふふふ・・・・星海はこんなにも綺麗なのに、わたしはひとり、不幸です。』
俺が引き続き監視を要請すると、ぼっちで佇む要塞令嬢はさめざめと泣いていた。
うむ、要塞令嬢には悪い事をしたのであるな。早く同僚と仲良くなってくれる事を願うのである。
「では、建設保全関連に施設コアを配置でお願いします。そして未編成ワーカーを建設保全関係に優先配置して、2番ゲートの復旧と損傷軽微な3号、4号、6号動力炉から修理を進めてもらいましょう。フェザー、ゲストの情報収集はあなたと鉄拳娘さんにお願いするわね。あとは―――。」
巨大デブリの調査と中型輸送艦の救出作業に誰をあてるか?であるな。
動かせる人員は?ある?ない?いや、あるのである。
「ええ、要塞令嬢さんにお願いしようと思いますわ。彼女に整備の終わった私の戦騎隊をつけて、当面は中型輸送船の救出任務を指揮して貰いましょう。輸送艦救出後は調査隊の臨時拠点として、同艦を調査隊に編入しますわ。貴方、それで宜しいかしら?」
うむ、よろしく頼むのである。了承する俺に向かって、ルル大提督は―――。
「秘書官として、当たり前の事をしてるだけですわ。」
―――秘書官と書かれた腕章を見せる。
ルル大提督、残念な事であるが、俺にはそれに何の意味があるのか分からないのである。
「うふふ、様式美ですわ。とても大事ですわよ。」
う~む、どうやらそういうものらしい。俺には理解出来ない世界であるが、ついでであるな。泊地防衛艦隊指揮官にもルル・ビアンカ・セラム大提督を任命するのである。
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【成功】泊地防衛艦隊指揮官を任命せよ。が達成されました。(5/5)
報酬として功績点100点、小型母艦コインを受領しました。
【泊地運営委員会】おめでとうございます。指令達成数が5に達しましたので、特別報酬が支払われます。
特別報酬として、施設【技術局】設計図、施設【兵器局】設計図、施設【造船局】設計図を受領しました。
【指令】技術局を建築せよ。が発令されました。
【指令】兵器局を建築せよ。が発令されました。
【指令】造船局を建築せよ。が発令されました。
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「はい貴方、拝命謹んでお受け致します。」
うむ、お願いするのである。これも必要であるか?
俺は丁度入手したばかりの小型母艦コインを空きドックに投入してから、ルル大提督に聞いてみた。
「いいえ、戦力化したくとも偵察機に余裕がありませんわ、補給と整備面から考えても5騎1隊が限界です。チェリー艦隊長の偵察機ヴォルフは借用出来ないのでしょう?」
当然であるな、該当偵察機隊は彼女のものである。彼女の了解なしに取り上げてはならないのであるし、まだ戦力化されていない偵察機隊はあるのであるが、コインの使う場所が見つからないのである。
「なら、やはり戦力化はできませんわね。ねぇ、貴方、その口調でこのまま通しますの?」
うむ、泊地コアたる俺は偉く見えなければ舐められるのである。まずは口調から改めてみたのである。どうであろうか?
「まぁ、お好きにすれば宜しいかと、では、そろそろ契約を始めましょう。」
ルル大提督がさらにふたつ増えた契約待ちのクリスタル群を指し示す。
うむ、青と赤のソウルクリスタルに、さらに黄のソウルクリスタルがふたつであるな。
黄色のソウルクリスタルは戦士コインと隊長コインの分であるか。
俺はやはりグルグル案件からは逃げられないようだ。
しかし、俺は学習するコアである。
こっそりと並列作業で収集しておいた『可愛い』系単語を参照して頷く。これだけあれば充分であろう、そう判断できるだけの個数は収集済みである。俺に2度目の敗北はないのである。
フラグは折る為にあるのである。
俺は準備万端整えた状況で、青いクリスタルと接触した。
【施設Sコア2と契約しますか?】
同意する俺の前に、ガチャンと工具箱が床に落ちた。
静かな沈黙が場に満ちた。
俺は気づかない振りをして、そのまま編成作業を開始する。
保全隊にはリペアワーカー1機につき、ワーカーズ10機が必要である。そして保全労務隊だとワーカーズ1000機が必要であるな。
チャリン。
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【報告】指揮ワーカーコイン→リペアワーカーを受領しました。
【報告】小型母艦コイン→ノーム級哨戒母艦を受領しました。
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俺は残っていた指揮ワーカーコインを投入してリペアワーカーを入手し、それに10機のワーカーズを配備して保全隊を編成する。
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【成功】リペアワーカー1機、ワーカーズ10機からなる保全隊を編成せよ。を達成しました。(21/30)
報酬として功績点50点、雑務ワーカー10コイン、資材10コインを受領しました。
【依頼】保全隊を3隊編成せよ。が発令されました。
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やはりワーカーズ不足が深刻であるな、早く倉庫の調査を行わねばなるまい。
「で、頭領。いつまで、おいらを放置する気だい。そろそろ名前をつけてくれよ。」
床に落ちた工具箱が、カパカパと蓋を開け閉めして喋っている。
俺は喋る工具箱に名前をつける事になったらしい。
「ひとつ、かっけーのでヨロシク!」
どうやら俺は喋る工具箱に格好いい名前をつける事になったらしい。
グルグル・・グルグル・・・・・グルグルグル―――。
「あららら、ちょっとハードルが高すぎたみたいね。しばらく待ってましょう。」
「ならいっちょう仕事を始めるぜ、どっからやるんだい?」
喋る工具箱にも態度を変えず、ルル大提督が修理方針のデータをまとめて渡す。
「ほーほーなるほど、なるほどねー、よし任せとけってちゃっちゃと片づけるぜって言いてーけどよー、まだおいら無職なんだわ、頭領っおいらを配置しろってっ!」
工具箱が喋る毎に収納された工具類がガチャガチャと鳴り、ナットやビスが箱から飛び散っていくが、床に付くなり塵になって消えていき、後には何も残らない。
「頭領、仕事、おいらに仕事をくれよーっ!」
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【成功】建築保全施設コアを配備せよ。を達成しました。(6/10)
報酬として功績点100点、指揮ワーカーコイン3枚、雑務ワーカー100コインを受領しました。
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「おーし来た来た、そんじゃおっぱじめるぜーっ!」
ガチャガチャと騒々しい工具箱が配備された保全隊に指示をだし始め、近寄ったフェザーがバラバラと飛び散るビスやナットを避け―――。
「ふっふーん。それじゃボクは墜とせないっボクはフェザーちゃん生計担当だよ~♪よろしく~お願いしま~す♪」
―――キラキラ粒子を撒き散らしクルリと宙返りを決めてみせたフェザーが、ビシッと工具箱を指差している。
「おいらは土木担当の施設コア2だ、名前はまだないっ、おっと却下だぜ。つーか頭領はセンスねーな。そんなんじゃ支える部下が泣いちまうよう」
一言多い喋る工具箱に泣かされている俺がいる。
俺は当然の如く却下された喋る工具箱やカッケー工具箱に続く名前を入力出来ない。
グルグルグルと俺が廻るグルグル案件。
喋る工具箱につける格好いい名前・・・・。
グルグル・・・・ハイパー工具箱「却下。」スーパー工具箱「却下。」スペシャル工具箱「却下、つーか箱から離れようぜっ。」ハイパーボックス「却下、おーい頭領。」ガチャ「却下。」ガチャガチャ「却下。」ジャスティスマン「却下、ちょっと変わったか?」アークワン「却下、もう意味わかんねぇよ。」ハイパー工具箱「却下、戻ってる戻ってるぜ。」
グルグルグルクル・・・・グルグルグル・・・・グルグル―――。
『チャンプってどうじゃん?』
「それだっおいらはチャンプ、土木担当のチャンプだ。よろしくなフェザー。」
「お~う、よろしく~チャンプ♪」
ガチャガチャと音を立てる喧しい工具箱とゆらゆらふわふわと光を散らして落ち着きのないボクッ子小天使。
ふたりの施設コアが挨拶を交わし、俺はようやく無限ループから解放された。
解放されたのであるな。
さすがグルグル案件である。俺の行動ログがバグっているとしか思えないのである。
『で、大将、いま良いかじゃん?』
もちろんである。鉄拳娘の支援行動に俺は感謝を捧げるのである。
『あはははは、大げさ過ぎじゃん、で、大将、ゲストから大将に会いたいって依頼されたじゃん。どうするじゃん?』
俺はもちろん会うと快諾する。
再び助けて貰えるかもしれない鉄拳娘には恩を売っておくべきであろう。
モニターに現れた鉄拳娘が、ひとりのゲストを紹介する。
ゲストの女性はキョロキョロとまわりを見渡し、鉄拳娘に教えられてしっかりと真っ正面からモニターに映った。
『よし、助けていただきありがとうございます。自分は―――』