二人目の大提督2
評価、ブックマ感謝ですよ。
読んで頂けて幸いです。
Evilによる嫌がらせは、まだまだ続きます。(笑)
行間修正。
ぐぬ、逃げられたのである。これでは質問の答えが聞けないのであるな。
しかし、一歩前進である。
どれだけ説得に時間が掛かろうとも、俺は彼女を説き伏せてみせるのである。
「今のは貴方が悪いですわね、彼女をいじりすぎですわ。」
そして、ルル大提督がブランシュ・ネージュ大提督と向かい合った。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。ブランシュ・ネージュ大提督さん。私はルル・ビアンカ・セラム大提督です。このグレイトパール泊地の秘書官も兼任してますわ。ネージュ大提督と呼んでもいいかしら?」
ルル大提督が差し出した手をとり―――。
「ええ、構いません。私もルル大提督とお呼びします。」
―――ネージュ大提督がしっかりと握手を交わした。
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【報告】スズヤ ソウジ提督が入室の許可を求めています。
【報告】マルス隊長が入室の許可を求めています。
【報告】戦士アポロが入室の許可を求めています。
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「ちーす、ソウジ提督、ただいま帰還したよっと、え、うそだろ新人がいる。」
「なんとっ親方様、ご乱心めされたか!」
「ほーイイ女だな。よう姉ちゃん、どうだい俺と今夜付き合わないかい?おっといけねえ、アポロだ、今帰ったぜ。」
ひとつ貴官等に問いたい。貴官等は俺をどう見ておるのだ?
「「「グルグル案件、断固拒否」」」
うむ、まこと正しい見解であるな。
「貴方、納得してどうするんですかっ。」
ルル大提督の意見はどうであるか?
「それはノーコメントですわ、」
彼女は答えなかった。
うむ、了解である。
俺もあえて深く聞くことはしなかった。
「おい、あれってビールだろ?」
「なんとっ!」
「酒じゃねえか。」
酔っ払いデイジーがジョッキを傾けてごくごく飲む姿を見つけたソウジ提督の言葉を聞くやいなや、驚きを口にしてふたりが休憩所にすっ飛んでいく。
そんな龍人マルスと青鬼アポロを背景にして、俺は変わらず仕事である。
休憩所で始まるぷち宴会を放置して、俺は仕事を進めるのであるな。
とりあえず主力艦の修理を優先して行わねばなるまい。
クロスボーン級海賊戦艦ブランシュ・ネージュ号については修理以前に艦体の解析作業が先である。
ネージュ大提督の提出した艦体設計図を基にして解析データと比較、設計図との誤差の修正と現行技術で向上している各種部品の交換品目の策定。
並びに、新装備の追加による船体改修も必要になるであろう。
本来の準拠に合わせるならば、後200メートルほどサイズを伸長せねばならないのであるが、さすがに艦体バランスが崩れるので無理であるな。
それをやるくらいならば、新造した方が早いのである。
そして、この艦の最大の問題は、艦首に搭載された空間破砕砲である。
空間破砕砲は、使用後にEvilが生存した場合において、その個体に異常進化をもたらす事例が複数回報告された為に、艦艇準拠において禁止されている封印指定兵器である。
これは無理やりにでも削除せねばならない。
彼女がそれに応じなければ、船自体の破壊命令を下す事になる。
代用装備を搭載することを条件に、ネージュ大提督とのちほど相談であるな。
要修理艦はこれから随時帰港してくる予定であるが、現在、入渠中の艦隊で修理を要するものは6隻である。
中破したベローナ級戦艦は、破壊された主砲塔3基と複数個所で溶け崩れて溶解した2次装甲の耐熱セラミックス装甲の交換作業も必要である。
また、ここまで損壊した以上、いったんナノマテリアル装甲を除装して行う、装甲内に溶け込んでいる不純物を排除するクリーニング作業も必要であろう。
これは手間がかかるのであるな。
また小破状態のコルベット級軽巡航艦、秋月級防衛駆逐艦、ゾロア級駆逐艦はナノマテリアル装甲の充填作業だけで回復可能であるが、いずれかの機会に解体整備を行いたいものであるな。
残りのファイネル級旧型軽巡航艦とゾロア級駆逐艦参加記念限定モデルは修理保留であるな。損傷が大きすぎるのである。
『意見具申です。ファイネル級の修理をお願いします。』
却下である。リーフ艦長の要求タスクは優先順位が低いのであるな。
む、ルル大提督、来たのである。
「はい貴方、複数座標で転移反応を確認。すべて小規模の小型艦クラスですが、同時出現しますわ。座標だしますわね。」
宙域マップに表示される座標は、有人大船団近郊に一か所、有人船団γ群の交差軌道上に一か所、そしてミスリル級戦艦を包囲するように3か所である。
「重力震検知、すべて敵ですわ、例のEvil高速駆逐艦級です。大船団に8隻、γ群に4隻が交差ルート上を進んでいます。またミスリル級戦艦を9隻で包囲していますわ。」
宙域マップ上のアンノウンがすべて敵を示す赤い▲マークに代わった。
「これより敵高速駆逐艦隊Δ群をα群に変更し、作戦を展開しますわ。」
救援艦隊は出撃可能であるか?
「有人大船団には移動中の第7遊撃艦隊を、γ群には第9遊撃艦隊を、ヴィオラ艦隊には第8遊撃艦隊を送りますわ。」
『こちらアオイ家族艦隊第2機動艦隊指揮官のチェリー艦隊長です。意見具申します。γ群の位置は私たちの艦隊が近いです。援軍として先行する許可をください。』
『こちらヴィオラ提督です。援軍は不要、繰り返します、此方への援軍は不要です。敵艦隊は3隻編成で3群に分かれ、ミスリル級戦艦を中心として、40万キロから45万キロを周回しつつ包囲網を形成中です。
現在、散発的な攻撃を受けています。
しかし、敵に本格的攻撃の意思はありません。この包囲網はあくまで戦艦の足止めないし味方援軍艦隊の誘引を目的とした作戦行動であると意見具申します。』
「全敵艦隊が一斉に離脱軌道に変移しました。敵艦隊転移します。」
逃げた、いや見事な引き際である。
数回砲撃して、宇宙標準時間でたった5分で撤収、大きな戦果は期待出来なくても、これでは有効な迎撃作戦を実行できないのである。
「これは厄介ですわね、徹底した通商破壊作戦、いえ嫌がらせですわ。」
いつになくルル大提督の表情も渋い。
この攻撃が、今後も頻発して起こることを予測しているからであろう。
俺もルル大提督に同意する。
単純な話、数十個艦隊による哨戒活動と10個艦隊程度の要撃艦隊があれば、奴らを封じ込める事は可能である。
しかし現状では、どう計算しても艦数が足りないのである。
ルル大提督が、この攻撃に対して有効な手段を確立出来ないのも戦力不足だからであり、俺は即応性と機動性を兼ね備えた戦闘艦が必要であると結論をだす。
「要撃艦の数を増やしましょう、貴方お願いしますわね。」
うむ、消極的ではあるが、今はそれが賢明であるな。
俺はルル大提督に了承を告げ、建造計画の再検討を開始した。




