二人目の大提督1
感想感謝です。
二人目の大提督ですが、彼女は引き篭もりません(笑)
楽しんで頂けると幸いです。
待たせたのであるな、ブランシュ・ネージュ大提督。
グレイトパール泊地にようこそである。俺はグレイトパール泊地の主、珠ちゃんである。呼びかけは好きに呼ぶとよい。
「お初にお目にかかります。ブランシュ・ネージュ大提督です。既に仕える泊地もなく、宇宙を彷徨う旅人のわたしに、いったい何をさせたいのですか?」
俺の前に立つ深紅の赤いロングコートを羽織った銀髪の女性。
透けるような白い肌、女性が羨むグラマラスなわがままボディを、白を基調とした膝丈までのワンピースで隠しており、上から羽織る深紅のロングコートは完全に男物。
そして、彼女の凛として立つその雰囲気に喧嘩を売るような、猫柄のワンポイントが入った紫のヘアバンドを付けていた。
うむ、この度の助勢に感謝を、貴官こそ困っている事があるのではないか?
「それをあなたが解決してくださると?」
承諾である。
たとえ仕える泊地を失っても、貴官はまだ戦う気概まで失ってはいない。
ならば同じ敵と戦う同胞として、出来る限りの援助はするのである。
クロスボーン級海賊戦艦ブランシュ・ネージュ号の整備と改修、貴官が承諾するならば俺が手掛けよう。
「配下になれとは言わないのですか、これでもわたしは大提督です。この力が欲しくないのですか?」
うむ、俺にはルル大提督がいるのである。
仕える気のないものに無理強いはしないのである。
そのゲストIDは預けておくのであるな、補給や修理が必要ならばいつでも訪ねてくるとよい。
「かわった方ですね、ならばわたしは対価としてなにを差し出せばいいのですか?わたしはこの身と船以外なにひとつ財貨をもちません。それでも直してくださると?」
うむ、貴官が対価を求めるならば、仕事をひとつ頼みたい護衛任務である。
「護衛任務ですか?」
うむ、デイジー此処へ。
俺はビアガーデンを取り込んで進化した休憩所で、ひとりくつろぐデイジーを呼ぶ。
「デイジーをお呼びですか?」
デイジーが泡が零れ落ちるほど注がれたビールジョッキを片手に、口元に泡をつけてやってきた。
「ふふふ、これがビールなんですね、初めて飲みました~♪」
デイジーが楽し気に、ビールジョッキを両手で支えてクルクル回っている。
うむ、彼女がデイジーである。
貴官への依頼は、彼女の乗艦である武装有人調査船に同行して、故郷まで護衛をしてもらいたい。
どうであろうネージュ大提督、頼めるか?
「いいでしょう、その依頼お受けします。代わりに船の修理をお願いします。ただし有人船としての機能は奪わないでください。わたしは有人船以外動かすつもりはありません。」
はっきりとした挑発的ともとれる口調で、ネージュ大提督が俺に要望を伝え―――。
了解である。他に何かあるか?
―――俺はあっさりと了承した。
「あの、おかしいとか、間違ってるとか、説得しないのですか、有人船ですよ?」
何を戸惑っているのである?
俺はおかしな拘りを持つ者には慣れているのであるな。
問題児とか、問題児とか、問題児とか、問題児以外にもいるが、とにかく問題児とか・・・・・もう慣れたものであるな。
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【報告】リーフ艦長が入室の許可を求めています。
【報告】小ドック艦コイン→小ドック艦を受領しました。
【報告】中ドック艦コイン→中ドック艦を受領しました。
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「呼びましたか司令官、リーフ艦長、ただいま帰還しま・・・嘘でしょ、司令官が新人を呼んでるなんてっグルグル案件はどうしたんですか!」
驚くのは其処であるか、リーフ艦長、よく帰ったのであるな。
「あははは、あの・・司令官、ごめんなさい。それとありがとうございます。」
うむ、リーフ艦長が無事で良かったのである。命令違反の説教はルル大提督からたっぷりとされるといい。
貴官もこの1件で理解したであろう。
深く傷ついたファイネル級では、この先も続く戦いについてこれないのである。
リーフ艦長は速やかに乗艦を変更せよ。
「お断りします。」
リーフ艦長は即答で断り―――。
「司令官、ファイネル級はまだまだ戦えますっ手早く修理してくださいっ」
―――逆に修理を要請してきた。
ぐぬ、ファイネル級の修理優先度は低いのである。
リーフ艦長はファイネル級の修理完了まで、乗艦を変更して戦いに備えよ。
「お断りします。司令官、ずっと修理待ちで放置するつもりですね。バレバレですっ!」
ぐぬぬ、あっさりと露見したのである。ならば―――。
「ならば、じゃあありません。司令官・・・・。」
一呼吸、リーフ艦長が間を置いた。
「お願いします。あたしに機会をください。ファイネル級は、まだまだ戦えるって証明するチャンスをください。お願いします。」
ウルっと瞳を潤ませてリーフ艦長が俺を見つめる。
そんなリーフ艦長の目前に―――。
俺は以前から温めていたファイネルⅡ級強襲軽巡航艦の3Dモデルを浮かばせる。
ファイネル級の設計データを元に、現在の技術水準で各パーツを再構成、無駄や余剰を破棄して、強襲艦仕様としたモデルである。
強襲艦とは強襲機同様に、脱着可能な追加武装付きの増設装甲を施した艦種であるな。
1次装甲であるナノマテリアル装甲の上に重金属装甲を置き、その上に追加武装を設置してある。追加装甲はいつでも放棄可能であり、追加装甲なしでも艦艇準拠で定められた軽巡航艦の性能ラインは満たしているのである。
うむ、気に入らなかったであるか?ならば―――。
プルプルと震えるリーフ艦長の前に、俺はもうひとつの3Dモデルを提示した。
これは、ファイネルⅡ級高速軽巡航艦であるな。
耐久性能と総合火力でこそ強襲型を下回るが、機動性では大幅に上回るのである。
強襲戦仕様では削除された追加ハードポイントも6基あり、任務において柔軟な武装選択も可能である。これなら―――。
「これなら、じゃ、ありませーんっ!!いいですかっ司令官!私は、ファイネル級がいいんです、ファイネル級で戦いたいんですっファイネル級じゃなきゃ嫌なんです!こんな、こんなっファイネルもどきなんかっ!」
爆発したリーフ艦長が空間に浮かぶ、ふたつの3Dモデルをひっつかみ―――。
「せ、せっかくですからもらっておきます。」
床に叩きつけるのを諦めて懐にしまった。
「言っておきますけど、乗りませんから、私は絶対乗りませんから、作っても無駄ですから、いいですね、其処は間違えないでくださいっ!」
リーフ艦長ひとつだけ問う。
「なんですか。」
強襲型と高速型どちらが好みであるか?
無言で振りかぶったリーフ艦長の拳が俺に突き刺さった。
「司令官の馬鹿、アホーっ!」
捨て台詞を吐きつけ、彼女はサイドテールを翻し―――。
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【退出】リーフ艦長が退出しました。
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ブランシュ・ネージュ大提督のコーデネイトに統一感がないのは、すべて共に戦った
戦友たちの遺産であり、思い出の残滓だからです。
けっして、彼女の美的感覚がざんねんなわけではありません(笑)




