第2次グレイトパール泊地沖会戦9
評価、ブックマ感謝です。
現在3章部分を執筆中、そろそろ閑話まであげないといけませんね。
楽しんでいただければ幸いです。
行間修正。
ようやく終わりがみえてきたのである。
アオイ艦隊の活躍で 敵機動艦隊β2群は戦力を喪失。あとは逃げられるまでに何隻沈められるかだけであるな。
ルル大提督の戦闘もさきほど終わり、敵前衛艦隊β5を壊滅させた味方前衛艦隊だったが、敵第2次攻撃隊と重巡級2隻の支援を受けたβ5群との交戦によって駆逐艦5隻、軽巡1隻を喪失。
その艦隊戦力を半減させていたが、ルル大提督は迷わず残存戦力をβ2群の残党狩りに向かわせるようである。
有人武装船団と敵前衛艦隊β4との交戦も始まり、数の多い有人武装船団が、辛うじて拮抗状態を保っているようだが、損傷艦も多くその抗戦がいつまで可能かはわからない。
先ほど短距離転移したヴィオラ艦隊が間に合うかどうかであろう。
そして―――。
戦艦級3隻と重巡級2隻からなる敵打撃艦隊β1群とソウジ艦隊の交戦はEvil側が重巡級1隻を喪失、ソウジ艦隊はベローナ級戦艦の主砲2基を失う損害をだしつつも予定座標に到達。
先に展開を完了していた特務艦隊、小型母艦2隻と全響隊によって構成された包囲網が完成しつつあった。
歌が聞こえる。
「ああ、いいねぇこれがローレライか。まさに最高のバックコーラスじゃねえか。」
始めてこの歌を聴くソウジ提督は感動していた。
無音の宇宙に響く歌。
重力波にのり、空間を震わせ届く歌。
船乗りを魅了し、船を狂わせるローレライの歌。
響たちの歌を―――。
『皆の者かかれぃっ!』
『たっぷり稼がせてもらうぜっ。』
ベローナ級戦艦とコルベット級軽巡航艦に隠れて分乗していたマルス隊長が率いるマルス重戦騎中隊と戦士アポロが、僚機の紋章騎隊を率いて飛び立っていく。
赤と青の流星がローレライの歌に彩を添え、赤い流星に襲撃された戦艦級が当たりもしない防衛射撃をまき散らす。
レーザーと拡散する実体弾が飛び交う戦場で、悠々と防衛射撃を突破した紋章重戦騎【暁】が、ランスから伸びるように形成されるエネルギー粒子の槍で、次々と重圧な皮膚装甲を貫き通す。
その後方で青い流星群、紋章重戦騎【雷】達が逃げ惑う戦艦級の主砲や高角砲などを、敵の船体ギリギリを飛ぶ超至近距離まで接近して破壊して回る。
響たちが歌う。
ローレライの歌を―――。
「ファイナルステージにようこそ、歓迎するぜ、チャレンジャーども。」
ノリノリなラスボス気分で、ソウジ提督はふてぶてしくもそう言い切った。
当然その言葉が敵に届くはずもなく、その返答は乱れ飛ぶ主砲の乱射。
しかしローレライの歌に魅せられた船の如く、敵艦隊の動きに精彩がない。
ソウジ提督は最初の一斉射でまともに行動できない重巡級を吹き飛ばし、この時まで温存していた戦騎隊を発艦させる。
ベローナ級戦艦の後部ハッチから、大型バーニアを吹かし勇猛果敢に軽戦騎【エアリーズ】5騎が飛び出し、重装甲の強襲戦騎【アイゼンⅡ】5騎がベローナ級戦艦の外殻に取りつき、近接防衛戦に備える。
「これで1対1、こっからは戦艦同士、ガチでやろうぜ。」
周到に策を練り、圧倒的優位な状況に持ち込んでから勝負を挑む。
BOSS級をハメ殺す、それはまさにゲーマーの戦闘だった。
ソウジ艦隊と敵打撃艦隊β1群との決戦が起こっていた頃、敵揚陸艦隊β3群突入組も着実に戦果を拡大しつつあった。
戦闘機【ヘクセⅡ】15機が持ってきた対艦ミサイルを次々に射出する。
続いて攻撃機【ブリッツ】5機が対艦ミサイルを放ち、仕事を終えて離脱機動に移る攻撃機隊と違い、より深く中心附近にいる大型揚陸艦級を狙って、追加装甲に包まれた重厚な外殻に対艦ミサイルを満載した強襲攻撃機【トネール】が飛翔する。
そのトネールの護衛につく対艦ミサイルを撃ち切って身軽になった戦闘機隊の後に、ムツハ隊長率いる重機動戦騎隊が続く。
しかし、突入隊にガーベラ隊長率いる重戦騎隊の姿はない。
「ターゲットインサイト、ファイヤ。」
電磁加速式狙撃砲サンダーボルトを構えたムツハ隊長の重機動戦騎クリムゾン・タージェムツハスペシャルが必殺の弾丸を放つ。
脆弱な甲殻しか持たない大型揚陸艦級の皮膚外殻を容易く貫き、貫通弾が内部で起爆。
解放された熱核融合弾の高熱と爆圧が船体内部を蹂躙し、船体外殻に大穴を開けて吹き荒れる。
衝撃波に乗って広がる肉片を電磁シールド持ちの僚騎の陰に隠れてやり過ごし―――。
「融合弾残り3発、後は・・・。」
―――使うことはないだろうが、念のために持たされた対戦艦用に開発された対消滅弾が1発がある。
進路上を遮る様に、宇宙空間に無数のシャボン玉が広がる。
これは点在する大型揚陸艦級が噴き出す泡のような防御兵器、粘着硬化球だった。
破壊力こそ皆無であったが、触れて炸裂させれば接触した物体を含めて瞬間固着させて、行動を阻害する。複数弾を浴び続ければ完全に動けなくなるだろう。
そんな気泡が無数に浮いていた。
ムツハは、進路上の障害物をクリムゾン・タージェ達が両肩に装備した拡散レーザー砲で撃ち落として進路を切り開き、複数の対艦ミサイルを射出する。
迎撃に失敗して爆発に包まれる敵中型揚陸艦級を背景にして、ムツハは次の獲物を狙撃した。
「残り2発、ガーベラお姉ちゃん、そっちは平気?」
『よいよい、こちらは妾に任せて、そなたは存分に遊ぶがええ。』
「よいよい、こちらは妾に任せて、そなたは存分に遊ぶがええ。」
ガーベラ隊長はクツクツクツと笑う。
揺らぐ火の玉に浮かぶ骸骨レッドスカルを振るうナイトソードで等断し、宇宙を疾駆するキマイラの突撃を、ガーベラ隊長の操る黄金銀剣は騎士盾で打ち払い、動きの止まったキマイラを複数方向から踊りかかった僚騎のシルバーソードが切り殺す。
敵機動艦隊β2群から揚陸艦隊β3救援に飛んできた第3次攻撃隊に立ちふさがったのが、ガーベラ隊長の黄金銀剣が率いる重戦騎【シルバーソード】隊だった。
「わるいのう、この先で妾の義妹が頑張っておるのじゃ。無粋な真似などせず、妾と遊んでたもれ。」
クツクツクツと笑うガーベラの挑発に魅せられたように、3体のガーゴイルが襲い掛かり首どころか四肢をバラバラにされて散らばった。
なにかの悪い冗談のように近接戦特化型戦騎に向かって、艦載機級や戦騎級が無策につっかかり、あっという間に半数が切り殺されて空間に漂うオブジェとなっていく。
「さあ、はよう、はようまいれ、妾を退屈させるでない。」
気味の悪い戦場で続く、黄金銀剣を中心に踊る舞踏会。
此処はクツクツクツと笑うガーベラの屠殺場。
「おや、もう終わりかぇ。」
生き残りの巡航艦級を撃沈したプラム艦長のアインホルン級重巡航艦に―――。
『ガーベラさん、乗ってかない?』
―――と誘われた。
「なんじゃボロボロじゃのう。これはまた珠殿が泣くぞ。」
『平気平気、気にしないって、あたしたちの司令官だもん。』
クツクツクツと笑うガーベラ隊長と陽気に笑うプラム艦長。
『さてと。』
「さてじゃな。」
『ちゃっちゃと片づけて、みんなでご飯にしよう、ねぇチェリー♪』
『うん。プラム。・・・・・・・ごめんなさい。司令官さん。』
モニターに映るチェリー艦隊長が、ぼそりと謝った。




