第2次グレイトパール泊地沖会戦6
尺の都合で短くなっております。
楽しんでいただければ幸いです。
行間修正。
俺はリーフ艦長が撃たないと確信した。
だからこそ俺は命令する。
リーフ艦長、先制攻撃を許可する。
これは命令である。撃てと―――。
『司令官は優しすぎます。でも、出来ません。』
モニターに映るファイネル級旧型軽巡航艦が、艦対艦移相魚雷各2基づつ格納された武装コンテナ8個すべてを撃たずに投機した。
リーフ艦長、貴官は何をしている。
『問題児らしく命令違反です。』
何を馬鹿な事をしている。速やかにその宙域を離脱せよ。
既に先制攻撃の機会は喪失した。囲まれる前に離脱せよ。
『司令官、私は逃げません。人は此処に熱く譲れないものがあるからこそ、人は人として戦えます。浪漫で戦うんじゃなく、譲れない想いを燃やして戦うんです。』
リーフ艦長、貴官の行動原理は間違っている。
浪漫で戦争をしてはならない。
『いいえ司令官、私の此処が言っています。ファイネルライダーの矜持が、鉄と血と命で積み上げたファイネルの伝説が、なによりもこの胸で燃えるファイネル魂が、此処で逃げればもう戦えなくなるって伝えています、私は最後まで同胞を見捨てません。』
モニターに映るファイネル級が出現直後のγ9Evil駆逐艦を砲撃する。
ごく僅差をもってγ7とγ11に出現の兆候が表れている。
彼女のファイネル級の戦いは続く。
しかし、俺の演算結果がファイネル級の敗北を告げていた。
俺は説得を続けるが、彼女はそれに応じない。
『同胞です、私たちと同じくEvilを敵として戦う立派な同胞です。私は同胞の為に戦います。だから司令官、命令してください。敵を倒せと。』
そう言ってモニターに映るリーフ艦長が笑って見せた。
彼女は彼らが同胞であると言い、逆に俺を説得する。
俺は彼女の願いに答えない。
俺はどこまでも可能性を追求する。
先制攻撃の機会を喪失した以上、リーフ艦長は型落ちの旧式艦で最大13隻の駆逐艦級と戦う事になる。
軽巡の戦力では同時に6隻を相手にするのが限度、旧式艦であるファイネル級では5隻で限界であろう。そして9隻以上と交戦すれば、確実に撃沈される。
この状況を打破できる手段はあるか?
増援艦隊はどうか?
否、泊地から出撃していては、どう計算しても間に合わない。
『こちらアオイ艦隊長、意見具申します。アオイ第1艦隊で救援に向かいます。此処からならば充分間に合うでしょ、行かせなさいっ!』
モニターに映るアオイ艦隊長が叫ぶ。
俺は沈黙を続ける。
付近を通過中のアオイ第一艦隊を増援に送るか?
否、重巡級1隻分の遅延は艦隊決戦時の敗北リスクを肥大化させる。
これ以上の戦力減衰は避けるべきだ。
ならば―――。
ならば―――。
ならば―――。
この方法しかあるまい。
リーフ艦長、アオイ艦隊長、両艦隊に所属するすべての僚艦を交換せよ。
アオイ艦隊長は急行しつつあるケルベロス級高速重巡航艦と合流の後、艦隊決戦に参戦せよ。幸いケルベロス級は快速艦である、リントヴルム級と共に付近のポイントから短距離転移を実行せよ。
リーフ艦長は4隻の駆逐艦をうまく使え、詳細は任せるのである。
両名速やかに命令を実行せよ。
『司令官?』
リーフ艦長、復唱は?
『了解、ケルベロス級を預かるね。駆逐艦4隻貸してあげる。』
『了解です、アオイ艦隊長。ケルベロス級の指揮権移譲、駆逐艦4隻お預かりします。』
アオイ第1艦隊から駆逐艦4隻が分離しリーフ艦長の支援に回り、身軽になったリントヴルム級がケルベロス級との合流ポイントを目指す。
そのルート変更を宙域図で確認した俺は、配属メンバーすべてに伝達する。
これは命令であると―――。
敵を倒せ、仲間を守れ、同胞を助けよ。そして―――。
全員、生きて帰れ。
了解、応、任せて、その言葉は違えども、モニターを超えて響く声。
どうやら俺の命令は届いたらしい。
ルル大提督、なんであるか?
「貴方、素敵な命令でしたわ。そろそろ頃合いです、これより敵艦隊を鎧袖一戦に蹴散らしましょう。」
宙域図を見据えたルル大提督が命令を下す。
「チェリー艦隊長、作戦目標に変更なし、仕掛けなさい。」
リーフ艦長の選択と珠ちゃんの苦悩感じていただけると幸いです。
この続きは閑話にて、ちょっとだけ続きます。




