第2次グレイトパール泊地沖会戦5
ようやく泊地沖会戦も折り返しです。
楽しんでいただけたら幸いです。
行間修正。
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【報告】駆逐艦コイン→ゾロア級駆逐艦を受領しました。
【報告】レア駆逐艦コイン→ゾロア級駆逐艦参加記念限定モデルを受領しました。
【報告】戦艦コイン→ミスリル級戦艦を受領しました。
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作戦は次の段階に移行しつつある。
敵機動艦隊β2群から前回と同規模の第2次攻撃隊が出撃した。
味方前衛艦隊は作戦通り敵機動兵器群を迎撃しつつ、敵前衛艦隊β5との交差機動に変移しており、敵第2次攻撃隊も軌道変移して味方前衛艦隊との交差軌道上にある。
ここまでは予測通りの展開であったが―――。
予測通りソウジ艦隊を追撃しようとしていた敵前衛艦隊β4群が、ソウジ艦隊からの牽制砲撃と、あろうことか射線上に入り込まれるのを嫌った敵打撃艦隊β1群からも撃たれ、慌てて軌道を変えて遊兵化している。
まったく余計なことをしてくれたものである。
これでβ4群の行動予測は最初からやり直しである。
俺は首を振り、モニターに映る大ドックに出現した戦艦を見据える。
戦艦コインから現れたのは、無改造のミスリル級戦艦だった。
この結果に俺は思考する。
何処にも嘘がないはずなのに、この騙された気分は何故であろう。
まるで質の悪い詐欺にあったようである。
駆逐艦コインからは定番のゾロア級駆逐艦とゾロア級の限定モデルであるか、しかし限定モデルと言っても性能は通常のゾロア級と変わらず、船体カラーリングと大改修コンテストのロゴマークが船体に印刷されているだけであるな。
駆逐艦として使えるならば、それでよかろう。
限定だろうが、絶版だろうが、俺は使えるものは使う主義である。
ヴィオラ提督、約束通りミスリル級戦艦を預けるのである。
「はい、当面の乗艦にします。2隻目もよろしくお願いします。」
うーむ、多数の戦艦を揃える無敵艦隊は、とにかくコストがかかるのであるな。
「では出撃準備に移ります、ルル大提督お借りした権限をお返しします。」
「たしかに受領しました。ヴィオラ提督、戦局は流動的です。準備出来次報告をお願いします。」
「了解です。」
ヴィオラ提督の敬礼を受けて、ルル大提督が返礼を返している。
ヴィオラ提督、随伴艦として駆逐艦を連れていく気はないか?戦艦の単艦運用は危険を伴うのである。護衛として駆逐艦の運用を期待するのである。
「私はリーフ艦長ほどのこだわりはありません。駆逐艦、しばらくお借りします。」
しばらくであるか?
「はい、しばらくです。2隻目待ってます」
うむ、善処はするのである。ウル、ヴィオラ提督を支援せよ。
「はい、万事僕にお任せください。さ、ヴィオラお嬢様お手をどうぞ。」
「えーと、お任せします?」
「ご安心ください。僕はすべてのお嬢様方の執事でございます。ヴィオラお嬢様の為に誠心誠意尽させていただきます。」
完璧執事ウルにエスコートされて、ヴィオラ提督が歩きだす。
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【退出】ヴィオラ提督が退出しました。
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「旦那様、後は万事お任せください。」
ウルが胸に手を添えて行う執事の礼を完璧な所作でやり遂げてから、ヴィオラ提督の出撃準備の支援にかかる。
『こちらリーフです。これより、所属不明艦隊γ群との交戦距離に入ります。』
モニターに映るリーフ艦長から戦闘開始が告げられる。
問題児とファイネル級がまたひとつ事件を起こそうとしていた。
「こちらリーフです。これより、所属不明艦隊γ群との交戦距離に入ります。」
リーフ艦長がノリノリに交戦開始を告げてから、新設された火器管制システムに各種データを入力し、艦対艦移相魚雷の起爆準備を進めていく。
この仮設した火器管制システムは、リーフ艦長の浪漫とマニアとしての拘りが、時間に追い詰められて彼女の中でせめぎ合った結果、あくまで仮設、使い終わったら破棄すると決めて積み込んだ、いわば妥協の産物だった。
「γ1、γ2は間に合わない、目標をγ3以降に変更。」
浪漫兵器を使う機会は逃せないとばかりに、せっかく意見具申してまで泊地から持ち出してきた艦対艦移相魚雷だったが、不本意なトラブルとさらに遠ざかった戦場宙域により、この時点で攻撃失敗が確定していた。
もうこうなると重く嵩張るだけのお荷物でしかなかったが、1基あたりのコストも高く此処まで持ってきた労力も加味して考えると、このまま使わずに投機はもったいない。
そう考えていたリーフ艦長の前に、迂闊にも所属不明艦隊が転移してきたのだ。
彼女が自分から撃たれに来てくれたお客様を見逃すはずがなかった。
「γ1、γ2、重力震検知、目標座標指向。」
リーフ艦長が出現した直後に叩くべく両舷主砲の狙いをつけ―――。
「っ、攻撃中止。司令官、目標はEvilにあらずよっ。たく、紛らわしい時に来ないでよ、死にたいのっ」
―――出現した有人武装船2隻を見送った。
人類側の区分では駆逐艦に相当する船であったが、泊地同盟は有人戦闘艦を戦闘艦とは認めていない為、たとえ戦艦クラスだったとしても有人武装船である。
なによりどちらの船からも、こちらに敵対する意思を感じなかったからだ。
続いて出現したγ3も有人武装船だったが、出現直後に艦尾が爆発し、発生した衝撃破が装甲ごと船体の一部を吹き飛ばす。
推進器どころか、動力炉まで吹き飛んだのか、行き足が死に滑る様に通り抜けていくその船体には複数の穴が空いており、赤々と溶ける金属がその爆発の惨状を照らしだす。
再びの爆発、音のない衝撃破が広がりファイネル級を震わせ抜けていく。
「γ3生存者なしよ、司令官、いったい何が起こってるの?」
明らかな戦闘痕を残すγ3有人武装船の探査結果は、残酷な情報だけを告げていた。
続くγ4、γ5は―――。
「敵よ司令官っ、Evil駆逐艦を確認。こいつら戦闘中に跳躍したのっなんて無茶を。」
艦前方での補足は間に合わず、通過する敵艦2隻に向けて主砲を指向するために、スラスター炎を激しく吹かせファイネル級がひっくり返るように180度転回、艦首を敵に向けて砲撃。
「避けたっ生意気、Evil駆逐艦級1隻撃破よ、再斉射っ!」
1隻が主砲に撃ち抜かれ、もう1隻が回避した。
その結果にイラッとしたリーフ艦長が両舷のレーザー速射砲を連射する。
船体をひねり込みながら逃れようとするγ4をさらに無理な回避運動に追いやった処で、再度チャージの済んだ主砲を放つ。
今度は避けられない。複数のレーザー光に撃ち抜かれたγ4の行き足が止まった。
そしてとどめを惜しみつつも、再び反転―――。
「艦対艦移相魚雷1番~16番、目標γ6以降の転移反応すべてっ。」
基本各1基、余りの5基は適当に割り振る。
駆逐艦のような小型艦は大型艦と違い、転移の兆候である空間震を感知してから出現までの時間が短く、そして艦対艦移相魚雷は、その転移完了までの極めて短い時間を狙い撃つ兵器である。
本来この魚雷は事象界面上に潜むEvilを攻撃するために開発されたものであり、そもそも空間跳躍中の敵艦を攻撃することは想定されていなかったが、それを行った連中が成功例を積み上げた結果として、そのような用途にも対応出来るように改修された。
しかし、出来るということは必ずしも成功を約束しない。
これから出現する所属不明艦が敵か、そうでないかは出現するまでわからないからだ。
撃つか撃たないか、そしてリーフ艦長は・・・・・・。
全力でフラグ立てちゅう。
問題児らしい行動と結末にご期待を・・・・。




