第2次グレイトパール泊地沖会戦2
尺の都合で長くなっております。
評価、ブックマ、感謝です。楽しんでいただけると幸いです。
行間修正。
ミストラル級軽巡航艦を旗艦に、4隻の駆逐艦で構成された第1先遣艦隊がプラズマジェット噴流の尾を引きながら、猛然と速度を上げて敵先遣隊α群に向かう。
現在、敵先遣隊α群として登録されたEvil駆逐艦は9隻、しかし時間経過と共に次々と転移完了した敵艦が出現する。
既に転移反応を示す反応の内、超空間と通常空間を隔てる壁、事象界面を超えて通常空間に出現する前兆である空間震を放つ個体は11、さらに巨大質量出現に伴う重力震を発しつつ、丁度転移を終えたEvil駆逐艦がさらに5隻出現する。
直前で14隻まで増えた敵先遣隊α群の鼻先を掠める様な交差機動を描きつつ、ルル大提督の指揮のもと、第1先遣艦隊が砲撃戦を開始する。
敵艦隊を側面に捉え、指向した全艦隊によるレーザー主砲の相互射撃からの全艦一斉射。
放たれたレーザー光に、既に集結を終え戦闘陣形を整えつつあったEvil駆逐艦9隻は反応出来ても、出現直後でいまだ周囲の状況確認を終えていないEvil駆逐艦5隻は反応しきれない。
そして、それを見越してルル大提督は最初から集結済みの9隻は牽制射撃のみに留め、この増援5隻を集中砲撃したのだ。
駆け抜ける第1先遣艦隊、応戦しつつ追走戦に移行するる9隻のEvil駆逐艦、撃沈乃至撃破されて浮かぶ4隻の敵駆逐艦と中大破に追いやられ落伍した敵駆逐艦が3隻、さらに出現したEvil駆逐艦9隻がバラバラに追走する。
理想的な蛇行機動を描きつつ、第1先遣艦隊は宇宙を駆ける。
突入時2番艦を務めて小破したバルシェム級駆逐艦を先頭に変えて、逃走する第1先遣艦隊が後方に向けて、絶え間なく相互に主砲を放つ。
突入時と違い、逃走時になると先頭になればなるほど射撃機会が喪失するこの機動は、最後尾になるにつれ射撃機会が増え、それに正比例して被弾確率が上昇する。
俗に追走戦と呼ばれるこの状況は、追われる側より、追う側の方が被命中率が上がり被害が増える。
ほぼ誤差の範囲とはいえレーザーから遠ざかる逃走側と比べ、放たれたレーザーに自ら飛び込んでいく追撃側ではどちらの被害が大きくなるかは説明するまでもないだろう。
さらに置き土産代わりに放出された爆弾や機雷などの放出物も、地味に被害を増やす要因となる。
Evil側にとってもっとも大きな障害となったのは、最後尾についたミストラル級軽巡航艦だった。
この軽巡は、元々は巡航艦級から階級落ちした艦型である。その主砲口径は4メートル、これは軽巡級では重レーザー砲に相当し、ミストラル級軽巡航艦は連装6基12門の重レーザー砲をもって、追撃する敵駆逐艦のレーザー砲撃を大型の船体で受け止め、僚艦の機動に邪魔されることなく、その火力を叩きつけることが出来た。
その威力は掠めただけでもEvil駆逐艦では落伍しかねず、直撃すれば撃沈しかねなかったが、回避行動が単純なミストラル級軽巡航艦に面白いように攻撃が命中するために敵先遣隊α群は追撃をあきらめない。
面白いように命中する砲撃が―――。
被弾ごとに散るナノマテリアル装甲の煌めきが―――。
彼ら敵先遣隊α群を魅了し死地へと誘う。
ルル大提督が死地へと引きずり込んでいく。
唐突に、側面から放たれたレーザーの雨が後Evil続艦隊を貫き、逃走を続けていた第1先遣艦隊が見事な180転回を決めて、横一列に並んだ全艦が一斉に艦首を敵先遣隊α群に向ける。
その30秒後、敵先遣隊α群は第1先遣艦隊と第3前衛艦隊による十字砲火に呑まれて消えた。
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【成功】敵先遣隊α群を撃滅せよ。を達成しました。(8/10)
報酬として功績点200点、駆逐艦コインを受領しました。
【報告】1号支援砲艦のホワイトパール級戦艦への復元改修が完了しました。
コンテストの締め切りまで残り30秒です。
ミスリル級戦艦大改修コンテストに出品しますか? Y/N
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当然俺はイエスと答え、完成したホワイトパール級戦艦を3Dモデルで出現させる。
うむ、予想通りいい出来である。
あとはカタログスペック通りの性能を発揮出来るかどうか、こればかりは要検証である。
しかし、それはかなわなかった。
なんの前触れもなく唐突に、3Dモデルのホワイトパール級戦艦が中心部に向かって圧縮されていき、きらりと光一つを残して消えた。
後には何も残っていない。
俺は慌ててモニターを確認するが、ホワイトパール級戦艦があったはずの大型ドックも空になっていた。
何が起こったであるか?
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【報告】ミスリル級戦艦大改修コンテストに出品しました。
コンテスト主催者より、参加賞として戦艦コインを受領しました。
【成功】ミスリル級戦艦大改修コンテストに参加せよ。を達成しました。(9/10)
報酬として功績点200点、レア駆逐艦コインを受領しました。
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「貴方、敵先遣隊α群の殲滅完了です。貴方?」
「ルル大提督、あれを。」
ヴィオラ提督が空になった大ドックを映すモニターを指し示し―――。
「貴方。」
―――口だけ笑みを作ったルル大提督が俺を呼ぶ。
俺は悪くないのであるな。
聞いてなかったのであるな。
これは、何者かの陰謀である。
やめるのである、ルル大提督っ。
「貴方、反省。」
はい。怒れるルル大提督に正論は通じないのである。
嵐が過ぎ去るまでは、じっと我慢するのみであるな。
「貴方、ぜんぜん反省してませんわね。だいたい貴方ときたら。」
「新たなる転移の兆候を確認、所属不明艦隊γ群と呼称。規模は小規模。予測質量は小型艦級が18です。当該座標表示します。」
ヴィオラ提督の声に邪魔されて、ルル大提督の御小言がとまる。
予測出現座標はリーフ艦長の予定進路と交差していたからだ。
「リーフ進路を変えなさい。このままだと敵中に飛び込むわ。」
『いいえ、変えません。丁度いいタイミングですっどうせ間に合わないなら、艦対艦移相魚雷あいつらで消費します。こっちは私に任せてくださいっ。』
「わかったわ、適当に相手したら切り上げなさい。」
『はい、ルル大提督、別に倒しちゃっても構いませんよね。』
「ええ、好きにおやりなさい。・・・・・リーフ、浪漫も大概にしなさいね。」
『えへへ、ちゃんとネタに付き合ってくれるルルさん大好きですっ。』
ルル大提督、何がネタなのだ?理解不能である。
「はいはい、後で説明してあげます。貴方はチャリンチャリンしててください。ヴィオラ提督、敵主力艦隊β群の状況は?」
「はい、モニターにだします。」
ヴィオラ提督がすばやくコンソールを操って、敵主力艦隊β群を拡大すると艦種毎に大別していく。
「現在、敵主力艦隊β群は艦隊集結を始めています。索敵情報によれば、おおよそ5グループに分かれつつあります。」
ヴィオラ提督が纏めた情報によると―――。
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Evil戦艦級4隻、Evil重巡級6隻からなる打撃艦隊β1群。
Evil大型母艦級8隻、Evil巡航母艦級6隻からなる機動艦隊β2群。
Evil巡航艦級6隻、Evil大型揚陸艦級6隻、Evil中型揚陸艦級5隻からなる揚陸艦隊β3群、同群にはα群の残存駆逐艦級3隻が随伴中。予測歩兵級1800。
Evil軽巡級2隻、駆逐艦20隻からなる前衛艦隊β4とβ5群。この2グループは状況しだいで、さらに分隊化する可能性あり。
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にっこり笑って殲滅攻撃、それがルル大提督です。
後、文中でも説明しましたが、転移反応を感知するとは、出現時の兆候として発生する空間震、次いで重力震を捉える事です。
出現時間はランダムではなく、より遠くから、より大きなものを転移した場合ほど出現に時間が掛かります。




