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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
廃墟の眠り姫編
48/140

デブリ調査隊2

デブリ調査隊は二章で終わる予定です。

読んで頂き感謝ですよ。

行間調整。

「大きな船ですね。」


「巡航艦クラスはありそうだな。」


 録画とれてるかの仲間のハンドサインに、マイア・ユースティティア調査士官が親指ひとつ立ててイエスと答える。


 ドックのひとつに係留されたシャンス級中型輸送艦に向けて、一行は浮き桟橋を進んでいた。


「それほどではありませんわ。シャンス級中型輸送艦は同級の輸送艦としては、小ぶりの460メートル級の船体ですわ。輸送船と違い戦闘艦と同様の複層式全周装甲が張られておりますから、主に戦闘宙域への輸送任務に使われておりますわ。」


 要塞令嬢がこれから乗る艦について簡単な説明をする。


「外に出れば、同行する艦もありますし、より巨大な戦艦を間近に見られる機会もあるでしょう。そうですわ、折角の機会なのですから、近くまで行ってみましょうか、マイヤさん、せ・ん・か・ん見てみたくないですか。もちろん撮影も許可しますわよ。」


「いいのかじゃん、またそんな安請け合いして、大将に怒られても知らないじゃん。」


「あら、わたくしの旦那様ならば、あんな安物など機密とも思いませんわ。鉄拳娘さんも旦那様の作られる船をあんなのと一緒にしないでくださいませ。」


 夢見るような素敵な笑顔で、要塞令嬢がわたくしの旦那様自慢に耽り―――。


「いや、そういう問題じゃないじゃん。」


―――あきれ顔で鉄拳娘が首を横に振る。


『そもそも輸送艦には窓はありませんからのう、近寄ってもみられませんぞ。モニター越しならば、近づく意味もないじゃろう。』


「まぁなんて浪漫がないのでしょう。そうだわ、そうしましょう。いっそのこと宇宙遊泳を楽しんでみませんか?マイアさんもそう思いますでしょう。」


「冗談でもやめろじゃん」


「ご免なさい、無理です。」


 鉄拳娘とマイヤ、2人から揃って拒絶された要塞令嬢が無意味にクルリと一回転する。


「あらあら、残念ですわねぇ。なら輸送艦に穴を開けましょう。その穴からみんなで覗きましょう。そうしましょう。」


 冗談のような軽い口調でそう宣う要塞令嬢だったが―――。


「本気でやめるじゃん。」


―――鉄拳娘に拒絶された。


 この同僚ならばやりかねない。


 そう鉄拳娘が感じるぐらいには、この同僚は浮かれているようだ。


「いま楽しいかじゃん?」


「ええ、とっても。」


「いま幸せかじゃん?」


「ええもちろん、旦那様に喜んで貰える、そう考えるだけでもう、わたくし溶けてしまいそうですわ。」


 本当に、本当に嬉しそうに浮かれている同僚の様子に鉄拳娘が戦慄している。


「これはヤバいじゃん。」


 良い気分を害されて怒るなんて、良くあることじゃん。


 それはやる気に満ちた幸せそうな要塞令嬢にとっても同じだろう。


 もし何らかの要因で、それが邪魔された場合、この同僚がどんな強引で軽率な行動にでるのか、彼女は分かりたくもなかった。


 鉄拳娘にとって、目前の同僚は最大限の警戒を要するいつ何時爆発するか分からない爆弾のようなものに変わっていた。それも彼女のスペックを考えると周りに無尽蔵な被害だけを撒き散らし、自分だけ無事なんていう1番たちの悪い類の奴だ。


「ふふふ、旦那様の為に、一緒に頑張りましょうね。」


「おう、一緒に頑張るじゃん。」


 要塞令嬢の話に適当に相づちを打ちつつも、これは貧乏くじを引いたかもしれないと考えてしまう鉄拳娘だった。


 大きく開かれたシャンス級中型輸送艦の後部ハッチ。


 人間の乗艦を前提にしていない艦に、エアロックなとどいう搭乗用の気密区画はないのだが、荷物の搬入と搬出を円滑に進める為に、内部は低重力ながら人工重力が発生している。


 身体が受ける重力の変化に、マイヤは軽く身体を振って重心を取り直した。それは同行した仲間達も同じらしい。まるで影響を受けていないように見えるのは鉄拳娘と要塞令嬢ぐらいだった。


 低重力が発生している艦内に、浮き桟橋を渡って大型貨物ハッチから中に入ると、既に固定されている大型作業腕を持つ工作戦騎【キャンサー】や複数の足を持つ不整地作業用工作戦騎【アラクネ】の姿があり、さらに貨物室の奥まった場所には見るからに急造と分かる空きコンテナを3つ、連結通路で繋げた物件が固定されていた。


『エアロック完備の休憩室件居住区画じゃよ。急造の一品じゃから、居住性は諦めてくだされ、とりあえずお湯とトイレと空気はありますのう。お風呂はないがシャワーは設置済みじゃ、重力については、ほれ、この船自体が発生させてくれておりますじゃろう、それで代用しとる。』


「なら医療品と食糧は?」


『運び込んでありますのう、とりあえず当面の分はあるはずじゃ。確認を忘れずにのう。』


「ありがとうございます。」


 マイヤとその仲間達が居住区画の中を見分している間に、一行を乗せたシャンス級中型輸送艦が浮き桟橋を切り離し、巨大デブリに向かってゆったりと出港した。



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