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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
廃墟の眠り姫編
46/140

ムツハ最強?

ブックマ400件達成しました。感謝感謝です。

楽しんでいただけると幸いです。

行間修正。


 ルル大提督、わざとであるか?


「うふふ、ご想像にお任せしますわ。」


「ダウト。」


 宙に浮かぶタマゴをガーベラが抱き寄せる。


「しー、そちは黙っておるじゃ、腹の中まで真っ黒なあの女は、自分の陰口は聞き逃さぬ地獄耳までもっておるのじゃぞ、あとあとまで祟られてしまうぞよ。」


「同意。」


「聞こえていますわ。」


「なんじゃ、聞いておったのか、盗み聞きとは行儀が悪いのう、焼き餅焼きがかわいいのは童女の頃だけじゃぞ。」


 ニマニマと意地悪く笑うガーベラ隊長の挑発を―――。


「ガーベラお姉ちゃん、ママが呼んでる、行こ。」


―――彼女の袖を引くムツハ隊長の手が終わらせた。


「むむむ、こりゃアオイ、幼子をダシに使うとは何事じゃ、それが母親のすることか。」


「ムツハ、最強?」


 手を引かれて離れていくガーベラに抱かれたまま、タマゴも拉致られて行く。


 うむ、仕事を進めるのであるな。


 予定通り、小ドックで偵察艦3隻を建造するのである。


 50メートル級の小さな艦体に数多くの観測機器を組み込むため、サイズの割にはコストの高い艦であるが、これを使い捨てにするのが現代戦である。


 とりあえず造船隊を3隊づつ当てておくのであるな。


 代わりに手の空いた修理隊はすべて中ドックに廻して、エクレール級高速巡航艦の修復を始めるのである。


「手早くお願いしますわね。」


 うむ、ルル大提督の期待は重いのであるが、ナノマテリアル装甲を充填するだけの簡易修理など誰がやろうが同じである。


「それでも待っている身としては、1分1秒が長く感じられるものですわ。」


 うむ、そういうものであるか。


 俺はルル大提督とのお喋りを楽しみつつ、この次に修復予定であるアインホルン級重巡航艦の修理プランを構築する。


 俺がこの艦を次に選んだ理由は、戦える艦と戦えない艦を比べて、戦えない艦を優先しただけである。

もしこの瞬間敵が攻めてきたとしても、戦える艦はそのまま投入すればよいからだ。


 元々のプラム艦長の乗艦であったこのアインホルン級重巡航艦は、艦体の三次装甲である重金属装甲こそ貫かれていないものの、126箇所で二次装甲のセラミックス耐熱装甲を破られ、艦体に取り付けられたすべての主砲、副砲、高角砲が破壊されている。


 それは推進器群も同じで、姿勢制御用のスラスタも残存数が少なかった。


 そして一次装甲であるナノマテリアル装甲に至っては、破損と修復を繰り返した結果、総量の半分ほどまで消耗しているのである。


 良くもまあ、壊すに壊したものであるが、主要装備は艦体に取り付けるものばかりで、基部さえ無事ならば交換は容易であるが、ここまで壊れていて致命傷がないのは、プラム艦長の腕よりも、とにかくアインホルン級重巡航艦が内蔵型装備を極限まで廃し、生存性を高めた艦体設計をしている事にあるだろう。


 この頑健な外殻構造体の内部に、さらに重要区画防御壁まで備えているのであるから、安全性に拘る設計者の病的なまでの仕事ぶりが、この艦から伝わってくるようであるな。


 うむ、実に良い艦である。


 そして、良い仕事ぶりである。


 ただとても残念な事に文句もある。


 外見に拘った装飾の多さは、もう少し何とかならなかったものであろうか。


 これを再現しようとすれば、とてもとても手間暇が掛かるのであるな。


 まぁ、良いのである。


 それは俺が苦労すればよいだけである。


 砲塔配置は換えず、8基ある主砲塔の4基を連装レーザー速射砲に換え、残り4基を低下する火力を補う為に3連装レーザー砲塔に換装。


 副砲はそのままレーザー高角砲と防衛レーザー機銃として据え置くのである。


 代わりに推進器の配置を弄って主推進器をひとつ増やしてみたのである。


 推進剤の消費量は増えたものの、機動性は向上したのであるな。


 さて、これで良かろう。


 以降はもう1隻と区別する意味で、艦体準拠に従い改をつけて、改アインホルン級重巡航艦とするのである。


 俺は改修プランの実行に際し、想定される資材消費量の計算結果にひとまず満足する。


 そして、もうひとつの検証実験を行うつもりだった。


 使い処の難しい修理短縮コインが修理経過をどれだけ短縮するのか?


 その修復精度はどれくらいであるか?


 修復に改修工程を加えた場合はどう反映されるのか?


 余裕のある今のうちに確認しておくべきであろう。


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【報告】エスプリ級小型母艦の修理が完了しました。(11/20)

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 丁度、エスプリ級小型母艦の修理も終わったのであるな。


 うむ、これは実験である。


 とても意義のある検証実験である。


 決して希少なコインが奏でる旋律を味わいたい訳ではないのである。


 初物コインを手にして、あの魅惑のスリットに―――。


「貴方。」


―――チャリン。


 手が、手が滑ったのである。


 なんというタイミングの悪さか、何のようであるか、ルル大提督。


 ルル大提督が無言でモニターのひとつを指さす。


 猫耳?


 ぴょこんと飛び出た猫耳だけがモニターに映っていた。



偵察艦はその役目上、敵地や未開領域に単艦で送り込まれますからちょくちょく帰ってきません。

少なくない確率で、出合い頭に何かのトラブルに巻き込まれるのは、この艦型の宿命です。

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