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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
大宇宙の囚われ人編
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閑話 観戦者たち1

閑話です。長くなったので3遍に分けて公開します。

「Evilとはなんですか?」


 現在進行形で続いている、端末に映し出された艦隊戦の映像を観戦しながら、マイア・ユースティティア調査士官が問いかけた。


「うちらの敵じゃん。」


 それが対面に座った鉄拳娘の答えだった。


「そうではなくてですね。」


「その正体が知りたいかじゃん、そんな事分かってるじゃん。ただマイヤんはそれを知って後悔しないかじゃん?」


「知らないよりはずっとましです。」


「きっと知らない方が人生気安く生きられるじゃん、それでも知りたいかじゃん?」


「はい、教えてください。」


「なら、絶望に囚われないように覚悟決めるじゃん、あれは・・・。」


 鉄拳娘がためらうように数舜口を閉ざし―――。


「生物学上の悪夢じゃん。」


―――そう端的に告げる。


「マイヤん、生物っておおむね環境に合わせて適応進化し、経験を積んで学習し、そして子孫を残して繁栄するじゃん。それをひとつの生体サイクルとして生と死を繰り返すものじゃん。でもEvilにはその制限がないのじゃん。」


 鉄拳娘が、マイヤ譲や他の観戦者たちが、その意味を呑み込むまで少しだけ待った。


「環境が合わなければ、環境に合わせて際限なく進化適合し、経験や技術はそれを持つ生物無機物を問わず、取り込んで獲得する。あげくに他者を取り込んでの有性生殖、魚類や鳥類等のような多卵生生殖、そして単細胞生物のような分裂による単体増殖も可能じゃん。さらにいえば、時間とエネルギーさえあれば、生き残った細胞片からでも復活できる生命力があるじゃん。」


「馬鹿げてる、そんな生物いるわけが・・・。」


「そういる訳がない。でもそれがEvilじゃん、やつらは何処でも生きていけるじゃん。灼熱の恒星だろうが、ブラックホール近郊の超重力環境だろうが、あるいは通常空間と超空間を隔てる事象界面だろうが関係ないのじゃん。マイヤん、この宇宙の何処にも、やつらがこない場所はないのじゃん。」


 Evilとの遭遇は、それが早いか遅いかの違いだけで、いずれ来る未来でしかない。


 それが鉄拳娘の答えだった。


「そんなの、そんなのどうやって倒せばいいんですかっ!」


「生体活動を停止させ、その細胞の一かけらも残さず、この宇宙から消滅させる。うちら泊地同盟軍は、マイヤんが生まれるずっとずっとずーと昔から、そうしてきたじゃん。」


 重苦しい雰囲気の中、気負いなく、淡々とそれを告げる鉄拳娘の口調が、この話が嘘ではないとそうマイヤ達に信じさせた。


「やっと理解出来たかじゃん。これがうち等の敵、うち等の戦い方、あんたらが狂戦士艦隊とか亡霊艦隊と呼ぶ泊地同盟軍の戦いじゃん。いまこのグレイトパール泊地にある艦はすべて無人艦。あんたら人類種族が乗れる余地は最初からないじゃん。」


 だから無駄なことは考えるなと言外に告げて、鉄拳娘がタッチパネルを操作して、先ほどまで対面に座るマイア・ユースティティア調査士官に見せていた戦闘映像をとめる。


 マイやんの周囲には生き残りの兵士達が何人かいるが、話を聞き観戦を終えた時からそれぞれの感想を言い合っている。


 人類種の船に比べて泊地同盟の艦が強いのは当然のことだ。


 そもそも人類と泊地同盟軍では航宙艦に求める性能が、その設計思想から違うのだから。


 泊地同盟軍の戦闘艦は戦う為にある。


 Evilという敵と戦い、これを打倒するために生み出されている。


 戦闘艦は物を運ばない。


 戦闘艦は物を作らない。


 戦闘艦は人を乗せない。


 ただ戦闘というひとつの局面のみに純粋特化された戦闘艦は、戦闘に不必要な機能を切り捨て、あるいは限りなく切り詰めて設計されている。


 なぜならば戦闘艦に不必要な機能はすべて、それ専用の船を造って個別に運用すればよく、あえて兼任させる意味がないと考えているからだ。


 ゆえに、泊地同盟軍が求めた戦闘艦は戦闘にしか使えないし、使わない。


 それが泊地同盟軍の常識であり、人類種族が彼らを狂戦士艦隊とか亡霊艦隊と呼ぶのも頷ける話だった。


Evilは成長チートと強奪チートをもった群です。

レーザーを含めてすべての武装は自分の細胞を進化したものですし、船型のEvilは自前でワープ機能までもっています。

ただし、Evil全般にいえる事ですが、強さによる上下関係はあっても、違う群同士の横の繋がりは薄いですね。協調性がないのではなく、もっと単純な理由で協調する意味がないからです。


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