第一次グレイトパール泊地沖会戦2
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世界を救えはしないけど、救いたいと願う誰かの一助にはなれる。
世界を救えはしないけど、護りたいと願う誰かの一助にはなれる。
世界を救えはしないけど、成し遂げたいと願う誰かの一助にはなれる。
貴方は骸。
私は想い。
満たせよ、満たせ、骸を満たせ、溢れて広がれ、この想い。
スキル発動―――。
「さぁ、始めよう。もう一度ここから、私と貴方で・・・・。」
アオイ艦隊長の何処にも伝わらないひとり言が、データの中にとけ消える。
レーダーに捉えた敵Evil駆逐艦は7隻であり、その先頭集団は既にレンジ5まで進入している。
しかし、アオイ艦隊長は慌てない。
敵レーザー砲が何度も命中しているが、装甲表面を覆う耐レーザーコーティングと活性化したナノマテリアル装甲が纏う電磁障壁に防がれて、まったくダメージにはならない。
これがアオイ艦隊長にとって初めての実戦だった。
レーザーが当たる。何度も何度も―――。
緊張はあるが恐怖はない、船体が伝える心強い脈動が彼女の怯えを打ち消していく。
この戦場の誰よりも強いという艦の持つ自負を彼女は纏っている。
機械仕掛けのドラゴン、その索敵装置と連動した無数の兵器群が彼女の言葉を待っている。
「開幕を告げる号砲を。」
アオイ艦隊長が告げる。
リントヴルム級重レーザー重巡航艦、その雄々しくも怪異なる機械仕掛けのドラゴンがその首を持ち上げ顎を開く。
竜の如くあれ、その代名詞とも言える一撃を―――。
「ドラゴンブレス。」
リントヴルム級の保有する総エネルギー量の実に半分を注ぎ込む、戦艦の主砲威力に匹敵する重レーザー内蔵砲の全力放射が、躱しようのない距離から敵艦隊をなぎ払った。
直撃した敵艦は対レーザー皮膚装甲ごと蒸発爆散し、直撃を免れた艦も紫色の皮膚装甲が焼失崩壊して沈黙する。
3隻撃沈、1隻大破、開幕を告げる一撃ではすべてを落とすには届かない。
しかし、解き放たれたリントヴルム級は止まらない。両肩の、両脇の、背中の、腕の、足の、体中にあるレーザー砲で残存する敵を消し飛ばす。
「こちらアオイ艦隊長、敵Evil駆逐艦7隻撃破。竜の如くあれ・・・か、まだちょっと馴れないかな。」
アオイ艦隊長を乗せたリントヴルム級重レーザー重巡航艦が次の敵を求めて身体をくねらせ回頭した。
『おーい大将、いまいいかじゃん?』
ん、鉄拳娘ではないか、何事か起こったであるか?
理解しているであろうが、現在、グレイトパール泊地はEvil艦隊と交戦状態にある。それに関係しない提案となれば、実現には時間が掛かると考えて貰いたい。
『もちろん理解してるじゃん、その上でちょっと難儀な情報じゃん。どうやらマイヤんの話だと救難信号を受信したアリゼ連邦の救援艦がこの宙域に向かっている可能性があるそうじゃん。到着予定時刻は不明じゃん。それと―――。』
それと、まだあるのであるか?
『現在の戦況図をこちらでも流していいかじゃん?』
うむ、意見具申、了解したのである。そちらの端末にも状況を転送するのである。
『ありがとじゃん、うちらの力が必要になったらいつでも声かけてじゃん。』
『影ながら旦那様のご武運をお祈りしておりますわ。』
うむ、要塞令嬢にも感謝である。
・・・・・聞いていたであろうルル大提督、厄介な事になりそうである。今後はワープアウト直後の先制攻撃は禁止とする。敵味方識別に留意し、もし該当艦であれば、戦闘宙域からの離脱を通達せよ。
「了解しましたわ。少なくとも今は、目前の敵を叩き潰しましょう。」
うむ、その通りであるな。
『司令官、見ててくれましたか、敵分遣隊β群殲滅完了しました。どうですファイネル級はまだまだやれますっ・・・・司令官?』
うむ、リーフ艦長ご苦労であった。
補給艦隊との合流ポイントを送るのである。補給後の再出撃はルル大提督の指示に従うように―――。
『司令官、ちゃんと最後まで見てましたよねっ?ファイネル級がラストを沈める瞬間をっ!』
うむ、当然であるな。
『嘘つきっ!見てなかったじゃないですかっ最後を沈めたのはケルベロス級でした、獲物もあの子がほとんど喰っちゃったんですっ、私の、私のファイネル級の見せ場がーっ!』
うむ、当然であるな。重巡クラス1隻の戦力値は駆逐艦27隻分相当である。
そして我々の艦とEvil艦の戦力比は1対1で圧倒、1対2で拮抗、1対3で劣勢であるのだから、たかだかEvil駆逐艦級8隻程度ではこの結果も当然である。
『司令官っ指令を忘れてますっ私が活躍するって条件ですっ!』
おかしな事を言うのであるな、活躍しているのである。リーフ艦長が率いるリーフ遊撃艦隊が敵Evil駆逐艦級8隻を初戦で撃破である、充分な戦果であろう。
なにより指令の何処にもファイネル級で撃破せよとは書いてないのである。
リーフ艦長も分かっていたからこそ、ケルベロス級高速重巡航艦を受領したのではないのであるか?
『雰囲気が・・・・あ、ちょっと格好いいかなって思った私の馬鹿ーっ!』
「貴方、あの娘、本気で泣いてますわよ、いくらなんでも少々意地悪ではなくて?」
何を言うかルル大提督、論理武装と言って欲しいのである。
勝てば官軍、負ければ賊軍、物量は正義、火力は神である。浪漫で戦争は出来ないのであるな。
正義は我にありである。
「貴方。」
ルル大提督は問題児に甘すぎるのである。浪漫で戦争し続ければ、いずれ破滅するだけである。それはリーフ艦長の為にならないのである。
「貴方は少々厳しすぎますわ。リーフ泣いてる暇はありませんわ。もうこちらも始まっています。補給を済まして、次に備えなさい。次の獲物は多いわ、好きなだけ狩りなさい。」
モニターに映る轟沈するEvil駆逐艦の姿。
『ほんどに・・・。』
「ええ、大型、小型よりどりみどりの選び放題。ね、素敵でしょう。」
素敵な笑みを浮かべてルル大提督が、リーフ艦長に手を差しのべる。
その背後のモニターではドラゴンブレスを放つリントヴルム級重レーザー重巡航艦が映っている。
『ルル大提督、司令官・・・今度こそ、今度こそちゃんと見てて下さい。ファイネル級の凄さ、今度こそ見せつけますっ!』
「ええ、頑張りなさい。わたしも譲るつもりはありませんわ、ね。」
『そうですね、獲物が残っているといいですね。』
モニター越しに手を振って、アオイ艦隊長がウィンクしている。
『獲物は譲らない、全部あたしが落としてあげる。』
モニターに、後方でじっと出番を待っているプラム艦長が映る。
『負けません、ええ負けませんよ。司令官また連絡しますっ!』
慌ててリーフ艦長がモニターを閉じた。
うむ、またである。
とはいえ、貴官ら3人ともリーフ艦長に優しすぎではないか?折角下げた戦意がまた上がってしまったのである。あれでは雰囲気に飲まれて、無茶をするのであるな。
「あら、わたしは本気ですわ。」
『ええ、同期のライバルですから、負けられません。』
『後輩ちゃんには負けないよ。』
であるか。
貴官らに狙われる大艦隊α群は哀れであるな。
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【報告】スズヤ ソウジ提督が入室許可を求めています。
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