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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
大宇宙の囚われ人編
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護りしもの

今日は二話投稿します。

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【泊地運営委員会】初めまして、おはようございます。【泊地運営委員会】からのモーニングコールをお届けします。


【名称未設定】泊地、泊地コア【名称未設定】の覚醒信号を確認しました。初回特典として【守護者招集権】2名分が解放されます。守護者2名を選出して下さい。


○【閃光剣士】

○【戦技将官】

○【自由海賊】

○【双銃剣士】

○【要塞令嬢】

○【鉄拳娘】

○【重砲甲兵】

○【天才ニート】

○【撃墜王】

○【深紅騎士】

○【従軍医師】

○【完璧侍女】

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 どうやら俺を此処に送り込んだ連中からの贈り物らしい。いろいろと試してはみたが、ユニット名らしき単語以外はどんな情報も表示されないようだ。


 しばし考え、俺は鉄拳娘と要塞令嬢を守護者に選んだ。


 理由はよく分からない、あえて言うならば呼ばれたであろうか?


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【泊地運営委員会】我々はEvil駆逐における貴官の奮戦を期待します。貴官がEvilと戦い続ける限り、我々は助力を惜しみません。


【同盟泊地軍勝利条件】全Evilを駆逐せよ。が発令されました。


【指令】初戦闘に勝利せよ。が発令されました。


【指令】初防衛戦に勝利せよ。が発令されました。 


【緊急】要救助者を救出せよ(5人以上で追加ボーナスあり)が発令されました。


【報告】守護者召喚座標を設定してください。

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 どうやら、召喚地点を選べるらしい。


 俺は戦況を伝えるモニター群を見定める。


 モニターに映る次々と活動を開始した戦闘用ワーカーズ群の雄姿。


 編隊飛行する機械仕掛けの鳥やエレベータシャフトを滑り下る小型球形戦車群。骨格標本のような外骨格に重火器を装備した自動歩兵が隊伍を組み現場に急行する姿が映るモニター群をすべて横に除けて、戦域地図と戦況報告を確認する。


 【報告】が続く。


 次々に敵と接触した戦闘部隊群が告げる接敵、交戦報告を流しながら、俺はEvilの情報を再確認する。


 Evil―――そう呼ばれる種の起源は不明。少なくとも泊地コアである俺の記憶領域には存在しない。


 俺の閲覧可能な記憶領域にある情報によれば、紫色の皮膚装甲を持つ事だけが共通する異形生物群の総称であり、その生命反応から成長種、寄生種、群生種、異常種に大別された後、さらに大きさや形状によって兵士級、戦騎級、艦艇級、要塞級など多数のカテゴリーに分類されている。


 そして、俺を此処に配置した連中にとって、やつらは殲滅すべき敵だという事実だけだ。


 では、俺にとってはどうだろうか?


 分からないが、しかし―――。


 思考がざわつく感覚、不快なラグ―――。


 どうやら、仲良くしたくないらしい。


 現在、交戦状態にあるEvil陸戦兵種は異常に首の長いトカゲのような姿をした爬虫類級Type067。


 データによれば6本の足を器用に動かし、3本の指の先に付いた吸盤で床、壁、天井に張り付き縦横無尽に移動する機動性と、遠距離攻撃手段こそ持たないが、常時体液を分泌する皮膚装甲はエネルギー兵器の威力を著しく低下させるとの情報がある。


 モニターに映るもっとも密集したEvil蜥蜴群は、まるで押し寄せる紫の津浪だった。


 俺はそんな群れの進路上に召喚座標を設定した。



 それは唐突に始まった蹂躙劇。


 騒がしい声、踏み砕く足音、突きだした鉄拳。


 襲来する先頭集団を一撃で吹き飛ばし、跳躍してきた紫トカゲを―――。


「どっかーんっ。」


―――ワンパンチで壁のシミにかえた。


「あははははっいいねぇ、いいねぇ、テンションあがってきたじゃんっ最初からクライマックスいっちゃうじゃんっ!」


 踏み砕いた床を蹴り飛ばした鉄拳娘は、右肩まで覆う機械仕掛けの籠手をグルグル回しハイテンションで挑発を繰り返す。


「あり得ません。こんなのがわたしのデビュー戦だなんて、もう不幸過ぎます。」


 どかん、どっかーんと嬉々として、壁を斑に染める鉄拳娘の傍らで、宙に浮かぶ三角錐、菱形、球形の物体群を従者の如く侍らした要塞令嬢は、己の不幸を嘆くように、顔を隠してさめざめと泣く。


「ふふふ・・弱すぎです。雑魚すぎです。群れなす有象無象のゴミ掃除、こんなのがわたしのデビュー戦・・不幸すぎます。ああ、悲しみで胸が潰れてしまいそうです。」


 招集要請に応じて現れたのは、ハイテンションでケラケラ笑う鉄拳娘とさめざめと泣く要塞令嬢の2人組。


 2人の周囲には逃げ遅れた軽環境服姿のゲストがひとりと、壁のシミになった肉片、そして惨殺、圧殺、射殺された蜥蜴もどきだったものの肉塊が転がっている。


 要塞令嬢を取り巻く三角錐群が一斉に上方に向きを変え、その尖端から放たれたレーザー掃射が、天井ごと切り刻み張り付いた紫蜥蜴をバラバラに解体する。


 蜥蜴もどきの対レーザー防御機能を物ともしない高威力・高収束率のレーザー砲を装備した要塞令嬢にとって、奴らは動く標的でしかない。


「ふふふふふ、もう不幸すぎて、笑えます。」

「お、おう。」


 ふふふふと笑い、バラバラ屍体を増産する要塞令嬢の様子に鉄拳娘のテンションがガクッと下がる。はっきり言って引いている。鉄拳娘にとって、不気味に笑うこの同僚が敵より怖い。


 球形に追い立てられ、立方体に挟まれた蜥蜴もどきが指向性高重力場で纏めて圧殺される様子はグシャっという擬音が聞こえてきそうな有り様だった。


「あー吐くなじゃん。いま吐いたら自分の反吐で窒息するじゃん。」


 この不気味に笑う要塞令嬢主催の惨殺解体現場にいた簡易環境服のゲストが身体を震わせている様子に―――。


「大将ーっ! いっちゃん近い与圧ブロック何処じゃんっ。」


―――次々と灯る誘導灯の先導に従い、そのゲストを連れて走り出す。


「ふふふふふふ、取り残されるわたし・・・・やっぱり不幸です。」


 ゲストと一緒に同僚にまで逃げられて、要塞令嬢は撒き散らす鮮血と肉片がが彩る狂宴の舞台で、ただ己の不幸を嘆いていた。


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******大戦艦〔オフライン〕〔0番機密ドック格納中〕

ノルデン級戦艦〔轟沈〕

アインホルン級重巡航艦〔交戦中〕〔大破・航行不能〕

リュミエール級巡航母艦〔交戦中〕〔大破・航行不能〕〔発着艦不能〕

シャンス級中型輸送艦〔所在不明〕〔航行不能〕

ホエール級大型補給艦〔大ドック内待機中〕〔出撃不能〕

ブルーメ級大型工作艦〔大ドック内待機中〕〔出撃不能〕

エクレール級高速巡航艦〔交戦中〕〔中破〕

ゾロア級駆逐艦〔小ドック内待機中〕

バルシェム級駆逐艦1〔轟沈〕

バルシェム級駆逐艦2〔交戦中〕〔小破〕

3号支援砲艦1〔移動中〕

3号支援砲艦2〔移動中〕

3号支援砲艦3〔轟沈〕

2号機雷敷設艦1〔退避中〕

2号機雷敷設艦2〔退避中〕

工作艇1〔退避中〕

工作艇2〔退避中〕

輸送艇1〔轟沈〕

輸送艇2〔退避中〕

輸送艇3〔轟沈〕

掃海艇1〔大破〕

掃海艇2〔退避中〕

哨戒艇1〔退避中〕

哨戒艇2〔轟沈〕

哨戒艇3〔轟沈〕

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 俺はモニターに表示された被害報告にため息をつく。


 主力級戦艦と巡航母艦の喪失が痛い、まだ艦載機の反応はあるが、大破した母艦は発艦不能と表示されている。


 片手間に済ませた残存艦艇のステータス確認を終了し、残存艦隊の戦闘指揮を継続しつつ並列作業で施設内戦闘の経過観察と今後の再建方針、現状の確認作業を進める。


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【報告】*****級大戦艦が起動しました。接続許可を求めています。

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 戦況は自軍優位に進んでいる。


 各戦闘ワーカーズ群の戦闘報告を総括すれば、施設内は掃討戦に移行している。


 残念ながら命令に従い、救援の任を受けた一部の戦闘ワーカーズ群が、混乱したゲストに攻撃されて損壊するといった被害も報告されたが、この損害が戦況に影響する可能性はないだろう。


 そんな戦況で届いた接続拒否中の大戦艦からの接続許可申請である。


 俺は申請に添付してあったカタログデータと提案書を開く。


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*****級大戦艦

全長3000メートル

全高2000メートル

全幅1850メートル

対要塞***砲 1基 1門

3連装重レーザー砲 18基 54門

連装レーザー砲 26基 52門

連装電磁速射砲 10基 20門

大型多目的ミサイル発射基 24基

小型プラズマキャノン発射基 100基

近接レーザー砲 500基

近接防衛砲台 300基

その他秘匿装備多数(詳細非公開)

艦載騎 12M級紋章重戦騎【雷】砲撃戦仕様10騎(詳細非公開) 

15M級紋章重戦騎【暁】決戦仕様  5騎(詳細非公開)

    8M級可変型電子作戦騎【響】 20機(詳細非公開)

防御力場 次元傾斜シールド 他(詳細非公開)

レーダー 非公開


Evil殲滅の為に設計された大戦艦。

複数の武装により、あらゆる戦局で運用可能な柔軟性と確認されたEvil要塞級の全力砲撃に耐える防御力を前提に設計されている。紋章艦として建造されており、その性能は完全非公開である。

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 それは艦型不明の大戦艦、添付されたカタログデータはほぼ非公開という代物だったが、その詳細不明艦から提示された議題は重要案件であった。


 そこには周辺の宙域地図と接近中のEvil艦隊の予想戦力と想定進路が赤ラインで表示されており、詳細不明艦は戦騎隊による迎撃戦を提案していた。


 この情報が事実かどうか、俺には判断出来ない。何故ならば現在レーダーシステム他ほとんどの探査施設が軒並み稼働していないからだ。


 だが、宙域図に記載された敵Evil艦隊の侵攻ルートは退避中に轟沈した2艇の哨戒艇の消失座標と一致していた。


 俺は接続を許可する。


 モニターに映る女性の顔、聞きとり易い柔らかい声。


『よかったわ、やっと目が覚めたの? 気分はどう?』


 金色の瞳が印象的な、それが彼女?大戦艦?いや彼女との出逢いだった。


『ねぇ、ちゃんと私の事、憶えてる?』


 どうやら俺は思考停止していたらしい。


『そう、やっぱりダメだったのね』


 俺には彼女の質問の意図が分からない。


『では改めて、大提督ルル・ビアンカ・セラム。現時刻をもって着任しました。今度は、いいえ、今度こそ、ずっと一緒にいるわ。』


 俺はルル・ビアンカ・セラム大提督『ルルで良いわ』ルル大提督『ルル』の提案議題を了承した。


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【指令】Evil艦隊を撃滅せよ。が発令されました。

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初戦は次回で決着です。

行間明け修正。

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