新たなる仲間達2
じわじわとブックマークが増えていく。
読んで、楽しんでいただければ幸いです。
行間修正。
「司令官、艦長のリーフです。ただ今着任しました。今後ともよろしくお願いします。」
リーフ艦長のお堅い着任の挨拶を聞き流し、俺はさっそく乗艦させる予定のリントヴルム級重レーザー重巡航艦を紹介するが―――。
「司令官、乗艦を拒否します。」
また断られたのであるな。まさかの乗艦拒否3人目、ドラゴン型は不遇すぎるのである。
「いえ、状況は理解しています。リントヴルム級重レーザー重巡航艦の性能の高さもわかっています。ですが私には乗りたい艦があります。あの艦に私は乗りたいのです。」
リーフ艦長が希望する艦はファイネル級旧型軽巡航艦だった。
俺ははっきりとその希望を拒絶する。
当然の事であるが、なぜに時代遅れの旧式艦に貴重な艦長コアを乗せなければならないのか、艦がないのならばまだしも、より性能の高い艦があるというのに理解不能である、貴官は再検討せよ。
「何を言うのですかっファイネル級は唯の旧式艦ではありません。あの艦は栄光のファイネル級強襲突撃艦、それも傑作と呼ばれた最終艦型ファイネル5型ですよ。あれほど原形を留めた艦がこうして残っていて、それに私が乗艦出来るなんて、もうっ感激ですっ!」
栄光?旧型なのに?強襲突撃艦?混乱する俺にリーフ艦長は答える。
「はい、ファイネル級は300年前までは強襲突撃艦という艦種でした。今の強襲型という前身を作ったとも言われているほど活躍した艦でしたが、時代の流れから軽巡航艦枠に格落ちになり、それも最新刷新された艦艇準拠によって、ついには廃艦処分や旧型落ちとなり消えていきました。ですがっ司令官、多くの戦役で活躍したその事実は消えませんっ。そんなファイネル級にこうして出逢えるなんて、もうっ夢のようですっ!」
うむ、リーフ艦長の説明は長いのであるが、要約するとファイネル級とはとっくに廃艦になっているはずの艦型であるという事らしい。
これはダメであるな。
ダメダメであるな。
廃艦決定である。
俺は感激して喋るリーフ艦長に、いずれ最新鋭の艦艇を準備するからそれまで待っていて欲しい、と改めて拒絶の意志を伝える。
「いえ、必要ありません。」
リーフ艦長の返事は冷たかった。
いや、そういう訳にはいかないのである。
俺は再度提案する。艦性能は命に関わる問題であり、より良い高性能艦を用意するのは、泊地コアたる俺の仕事である。
「必要ありません。」
リーフ艦長が頑なに拒否する。
理解不能な言動を続ける彼女を知るために、俺はもう一度リーフ艦長の履歴書を見る。
そこには―――。
「私は栄光のファイネル級で戦い抜いてみせますっ!」
―――艦船マニアとあった。
空恐ろしいほどの熱に浮かされたその瞳は本気だった。あまりの現実に俺は沈黙する。
「さすが貴方ね、変わった娘に縁があること。」
笑ってないで、ルル大提督も説得に協力してほしいのである。
「これも個性よ、あきらめなさい。いずれ時間が解決するわ。」
性能の悪い艦で戦う。その困難さを知っているルル大提督にとって、新人のフォローはしても説得する気などさらさらなかった。
リーフ艦長の説得は失敗した、いや俺が諦めた。
せめて改装させて欲しいという提案まで却下されては、俺に出来る事はなにもない。
彼女は嬉々として、ファイネル級旧型軽巡航艦の各種ステータスチェックと戦力化を進めている。ときおり漏れ聞こえてくる不穏な呟きを俺は完全シャットアウトした。
「では貴方、お代わりといきましょう。」
そっと労るように優しく触れてきたルル大提督が絶望の言葉を紡ぐ。
いやいやいや待つのである。
いまようやくひとりが終わった処である。
ルル大提督、再考を、再考を要請するのである。せめて休憩を―――。
「ダメです。」
―――無情な一言で、ルル大提督が切り捨てた。
「待たせたわね、あなたはアポロ、これからはそう名乗りなさい。」
そして、待っていた筋骨隆々の青鬼に名前をつけてしまう。
「アポロか、悪くはねえな。まぁ見ての通りの流しの傭兵って奴だ、堅苦しい挨拶は抜きによろしく頼むぜ。」
額を飾る短い2本角、青い肌、ムキムキの筋肉、金棒代わりにガトリングガンを肩に担いだ青鬼が、ルル大提督にごつい手で握手を求めている。
「その実力、期待してもいいかしら?」
「損はさせねぇよ、で、俺らの雇い主はあんたでいいのか?」
「いいえ、貴方、ご挨拶をお願いしますわ。」
よろしく頼むと挨拶をし、俺は渋々と残った青いコアクリスタルに触れる。
【艦隊長Sコア2と契約しますか?】
俺は同意する。
青いクリスタルが溶け、そこに女性が現れる。
美人でもなくさりとて不細工でもない、あえて言えば普通の容姿。
青みがかった漆黒の髪を後ろでリボンで纏め、ニットの青色カーディガンとそれに併せた青系のスカートといったカジュアルなコーデネイトで纏めている。
そんな彼女がツカツカと歩いてきて―――。
「おそい。」
―――俺に手を触れてそういった。
「最初から居たのに。」
・・・であるな。
「呼んでくれるの、ずっと待ってた。」
・・・・返す言葉もないのである。
「名前をよんで、貴方のつけた名前で、私を呼んで。」
このグルグル案件からは逃げられないようである。
髪の色は黒ならばクロと「貴方。」ダメらしい。
ならばブラック「貴方。」これもダメらしい。
ノーブルブラックでは・・・・ルル大提督、至近距離からのジト目はやめるのであるな。
ぐぬぬ、色から離れるべきか、いやしかし―――。
「回転が、足りない。」
「グールグールって、遅いよ、もっとギュルンギュルンって廻らないとっ。」
「おーい、頭領、チャッチャと決めちまえよっ!」
周囲からの無責任な野次馬達の声など俺には聞こえない。
グルグルグルグル―――。
なにかないか、なにか―――。
クログロ「却下。」ブラックガール「嫌」ふたりがかりは「「なに?」」
グルグルグルグルグル―――。
ぬ・・・・いまなにか見えた・・・・。
グルグルグルグルグルグル――――――。
「おおー頭領がマジだぜ!」
「ん、珠ちゃん、ガンバ。」
「ギュルギュルギュルギユールギュル♪」
謎の呪文にしか聞こえないフェザーの声援に意味があったのか、俺は―――。
クロガネ、そんな単語を入力していた。
「男っぽい名前でも、それでいい。」
おお、グルグル案件がおわったのである。
「出来ればアオイって呼んでほしかったな・・・・。」
ぬ、ならばクロガネアオイと―――。
--------------------
【失敗】名前の変更は出来ません。
--------------------
―――であるか。
「アオイって呼んでくれるだけでいいから。」
了解である。ならばアオイ艦隊長よろしく頼むのである。
「了解しました。では改めて、クロガネアオイ艦隊長です。現時刻をもってグレイトパール泊地に着任しました。今後ともよろしくお願いします。」
スッとした滑らかな動きで彼女は踵を揃えると、脇を締めて指先まで真っ直ぐに腕を伸ばす敬礼をもって着任の挨拶を締めくくった。




