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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
4章 絶望を蹴散らす者たち
139/140

ターニングポイント2

お待たせしました続きを投稿します。

いつもながら、ブックマ、評価等ありがとうございます。

楽しんで頂けたら、幸いです。

 状況は推移する―――。


 Evilの巣に向かっていたアインホルン級重巡航艦がその針路を大きく変える。

 しかし、後続のゾロア級駆逐艦3隻は針路を外れた重巡に同行せずに分隊してEvilの巣を攻撃するべく船の残骸漂う宙域に突入する。


 すべては作戦通りだった。

 アインホルン級重巡航艦の役割はEvilの巣に突入する駆逐艦隊の護衛であり、護衛終了後は、作戦に従い敵艦隊後方に位置する敵戦闘母艦級に向かったのだ。


 アインホルン級重巡航艦が迂回軌道を進みつつ、そのルート上から狙える船の残骸に張りつく巣に攻撃を加えていく。

 次々と焼失爆発を起こし、Evilの巣が爆散する。

 アインホルン級重巡航艦は目標を外さない。

 自立移動も出来ず、レーザー照射から護る障壁もなく、隠れる遮蔽物もない漂うだけの巣など無人戦闘艦にとって標的でしかなく、対レーザー対策などまるでない巣にとって、重巡級のレーザー主砲は致命的な攻撃だったからだ。

 ましてや生存者のいない残骸を巻き込んでも構わないとばかりに、アインホルン級重巡航艦は複数の連装レーザー主砲による相互射撃を繰り返す。


 突然、針路上前方より複数のレーザー照射が浴びせられる。

 それは接近する敵艦を発見した敵戦闘母艦級からの砲撃だった。

 回避に失敗したアインホルン級重巡航艦がナノマテリアル装甲を焼き散らし、前方に見えた敵艦を砲撃する。


 敵艦からの再斉射―――。


 同時に残骸群を遮蔽物にして近づいた戦騎群が襲いかかる。


 別方向よりレーザー照射―――。


 艦隊防衛射撃網を展開するアインホルン級重巡航艦に、包囲の輪から外れた2隻の巡航艦級が同行戦を挑む。


 迫る戦騎級―――。

 交差砲撃を受けるアインホルン級重巡航艦―――。


 その状況にあってもまだ、アインホルン級重巡航艦は作戦に従い敵戦闘母艦級に向かって加速する。


 状況は推移する―――。


 阻止に動く機動兵器群をその切っ先で貫き切り分けながら、ソード級巡航艦が切っ先を敵戦闘母艦級に向けて突撃する。

 刀身に似せた艦体が敵艦からのレーザー照射によって幾度も激しく傷つき、焼失するナノマテリアル装甲の煌めきを散らしながらも、遂にその切っ先が敵戦闘母艦級の障壁と接触し、その質量を武器にして押し込んでいく。


状況は推移する―――。


 戦闘開始直後から、ミスリル級戦艦と砲撃戦を継続していた戦艦級だったが、その中途半端な攻勢が仇となる展開となっていた。

 たしかに砲撃戦の結果は痛み分けといえる損害を与え合ったものの、継戦能力の維持を優先した為に、別働艦隊による巣の攻撃を許したからだ。

 その結果として包囲網に参加していた巡航艦級が勝手に離脱し、その穴を埋めようと突出した3隻が連続して被弾する。


 包囲網がさらに緩み瓦解していく。


 立て直すべく努める先から、ミスリル級戦艦に狙い撃たれる展開が続く。


 戦艦級とミスリル級戦艦が砲火を浴びせ合う。


 ソウジ提督が操るミスリル級戦艦はレーザー照射を回避し、戦艦級は避けれない、いや避けない。

その斜線上に傷ついた仲間がいたからだ。


 情け容赦ない砲撃が戦艦級を痛めつける。

 戦艦級も応戦するものの、いったん傾いた天秤は奇跡を起こさない。


 艦隊対戦艦―――。

 11対1―――。

 

 最初から数の優位を武器にして、損害を顧みず短期決戦を挑んでいれば結果は変わったかもしれない。

 しかし実戦にたらればなどなく、あるのは冷徹な結果だけ―――。


 勝利の女神が微笑むこともなく―――。


 悪魔のいたずらが起こることもなく―――。


 物事の当然の帰結として、先に撃沈したのはEvil戦艦級だった。


 戦艦級という支えを失った戦線が崩壊するのは早かった。

 戦艦級の指揮を引き継ぐものがいないのか既に沈んだのだろう、艦隊としての纏まりを欠いた敵巡航艦級がそれぞれの判断で行動する。


 我武者羅に突撃する艦―――。

 惰性のままに攻撃を続ける艦―――。

 仲間を見捨てて逃走する艦―――。

 そして、バラバラの艦隊を纏めようとする艦―――。


 ソウジ提督は攻撃してくる単艦を無視してでも、2隻でも固まって動こうとする敵集団に攻撃を集中させる。

 ソウジ提督も残存敵艦隊を一気呵成に叩き潰したい所であったが、この時点で敵戦艦級を葬ったミスリル級戦艦も深刻な損害を受けており、破壊された主砲や高角砲といった兵器群の喪失によって生じた死角を、敵艦に気づかせる訳にはいかなかったからだ。

 故に集団というより、集団を纏めようとするやつから潰しにかかる。


 ミスリル級戦艦のレーザー照射に焼かれて、艦隊を組んだ敵巡航艦級が次々と撃沈される。

 敵戦闘母艦級を葬ったアインホルン級重巡航艦やソード級巡航艦が、戦闘宙域に留まり単独で攻撃を続ける巡航艦級に襲いかり、スフェール級高速巡航艦が快速を生かして逃走する敵艦を執拗に追撃する。


 そして、状況は終了した―――。


「シエル、こいつで最後か?」

『うん・・調査中の全偵察艦・・・並びに本艦の索敵範囲内に・・・残敵なし・・。』


 ソウジ提督はモニターに映る羽妖精シエル提督に向かって―――。


「よし、最速タイムとはいかなかったが、ミッションコンプリートだなっ!おつかれ、シエルっ助かったぜっ!」


―――親指を立てて、イエーイと奮闘を称える。


『おつかれ・・・ソウジ』


 乗りがいいのか、それともつきあってくれたのか、シエル提督もちっちゃな拳を突き出し親指を立てている。


『途中・・日和った?』

「何のことかな?そんな事実は知らないぜ。」

『そう・・・』


 何がそうなのか、鋭すぎるシエル提督の突っ込みを受け流しつつ、ソウジ提督はなんとかテンションを保つ。


 そんなソウジ提督に―――。


『決戦・・・・良かったの?』


 ―――シエル提督がか細い声で、何故と問うた。


「シエルはわかってねぇな、いいか、俺もお前も決戦からハブられたんじゃねぇぞ。此処が興廃を決めるターニングポイントってやつだったから、俺たちが派遣されたんだ。」


 ソウジ提督は力強く言い切った。

 

 珠にべったりで引き篭もりのルルさんは出てこない。

 リーフの馬鹿は戦力不足、アオイちゃんはメンタル的にいまはダメ。

 この手の任務に強いチェリーとプラムはいまだ帰らず。

 戦艦趣味のヴィオラさんは主戦場からは外せない。

 アインに至っては、何処まで信用していいのかもわからない。


 立候補でも消去法でも俺たちしか残らないなら、此処に俺たちが来るのは必然だ。

 それがソウジ提督の偽らざる気持ちだった。


『転換点?』


 シエル提督の問いかけは続く。


「そうさ、誰よりも早く自由に動ける俺・・・・いや俺たちだから、此処が俺たちの戦場になった。最速で、最短で、このステージをクリアーする。それが俺たちのやるべき事だったのさ。シエル、戦詳報告をこっちに廻してくれ、珠に勝利報告を送るぞっ。」

『了解。』


 シエル提督に指示を出し、ソウジ提督も戦闘詳報の作成にかかる。


 俺は勝ったぜ。おまえも負けんじゃねえぞ、珠―――。

 

 そして、ふたりの勝利宣言がグレイトパール泊地に向けて送信された。



--------------------

【報告】作業艇20艇の建造が完了しました。


【成功】GP6周辺宙域観測所を建設せよ。を達成しました。(185/200)

報酬として、功績点50点、工作艦コインを受領しました。


【成功】GP6採掘基地を建設せよ。を達成しました。(186/200)

報酬として。功績点50点、採掘艦コインを受領しました。


【成功】Evil橋頭堡防衛艦隊β群を撃滅せよ。を達成しました。(17/20)

報酬として、功績点200点、戦艦コインを受領しました。


【報告】ホワイトパール級戦艦3隻の修理が完了しました。


【報告】ミスリル級戦艦の修理が完了しました。


【報告】輸送艇20隻の建造が完了しました。


【成功】作業隊3隊編成せよ。が発令されました。(187/200)

報酬として、功績点50点、指揮ワーカーコインを受領しました。


【成功】作業隊5隊編成せよ。が発令されました。(188/200)

報酬として、功績点50点、指揮ワーカーコインを受領しました。


【依頼】作業隊10隊編成せよ。が発令されました。

--------------------


 俺は作業艇20艇に続き、完成したばかりの輸送艇20艇を輸送隊4隊にして、完璧執事ウルに渡す。


 これで貴官が必要だと判断した数は準備できたのであるな。ウル、他に必要なものはあるか?

「お心づかい有難うございます。旦那様、引き続き雑務艇の建造を行いますか?」


 ウルの確認に否と返して、俺は必要数を確保した雑艇艇の建造を中断して、再び建造スケジュールの再検討を行う。


 特に消耗の激しい駆逐艦の補充が必要であろう。

 ルル大提督はもう少し、駆逐艦を労わってほしいものであるな。

 俺も思わず愚痴りたくなるほどに、駆逐艦、特にハウンド級高速要撃駆逐艦の損害が酷い。

既に参加艦数の半数は沈み、残存艦も次々に中大破に追い込まれて撃沈したか、あるいは戦闘宙域から離脱していく。


「あら、戦闘艦とは沈むもの、そこに戦艦も駆逐艦もないと言ったのは貴方でしょう。うふふふ、け・ん・ぞ・う、お願いしますわ。」


 激しい戦闘は未だ継続中だったが、ルル大提督にはまだ軽口に付き合う余裕があった。


 うむ、ルル大提督の働きに期待するのである。

「もちろん、後悔なんかさせないわ。わたしは貴方だけの大提督で、書記官よ。」

 戦闘を映すモニターが、敵艦に主砲一斉射をたたき込む扶桑級重戦艦の勇姿を映していた。


「ヘビーワーカー、40機、納品、だよ。珠ちゃん、ガンバ。」


 タマゴのやさしさが身に染みるのであるな、これで建造速度を倍増出来るのである。

 まずはハウンド級高速要撃駆逐艦15隻を建造である、とりあえず代艦分を含めて60隻は作りたいものであるが―――。


「まかせて、準備、する。」

 うむ、任せたのである。

 それとタマゴ、貴官に任せている新型騎開発状況はどうなっている?

「最終調整、中?」


 くるりとタマゴが向きを変え、休憩所の方を向く。


「いや~ん、視線が痛~い♪ もしかして、わ・た・し、期待されてる~♪や~ん、こまっちゃう♪」


 悪魔っ子パピオン隊長があざとく胸を寄せ、扇情的に身体をくねらせる。


「下らんことやってないで、貴公も手を動かせっ!出撃も出来ずに初陣が終わるではないかっ!それでいいのかっ!」


 ふざけた態度のパピオン隊長に、人馬騎士ディアナ隊長が怒声を浴びせ―――。


「あら、あらあらあら、ディアナちゃ~ん♪ お顔が真っ赤~や~ん、もしかして照れてる~♪」


―――パピオン隊長がつんつんと彼女の頬をつつき、それさえネタにして弄り倒す。


「怒ってるだけだー!」


 再び怒鳴りつける声が響いた。


 無言のまま、タマゴが俺に振り返り―――。


「珠ちゃん、しんどい、めんどい、パス。」


 ―――手に負えないと仕事を投げる。


 これは貴官の役目であるな。


 俺はパスされた仕事を再度タマゴに投げ返し、厄介事を押しつけた。


「珠ちゃん××」


 もう少しだけ、がんばるのであるな。


 ガンガンとぶつかってくるタマゴを宥めつつ、戦況図を確認する。

 アオイ艦隊とリーフ艦隊は撤退命令を受けて戦闘宙域から離脱、グレイトパール泊地への帰還航路を進んでいる。


 リーフ艦長がモニターを開き―――。


『リーフ艦長より司令官へ、司令官に意見具申があります!ファイネル6型の使用許可をくださいっ!』


 ―――まだやれますと意気軒昂に宣言した。


 リーフ艦長、その案件はルル大提督に一任しているのである。俺からではなく、ルル大提督から許可をとるのであるな。


 そう伝えて、俺はあっさりルル大提督に丸投げしたが―――。


「許可します。」

 なんと?

「貴方、許可します。といったのですわ。」

 まさかの、ルル大提督の裏切りである。

「あら、この案件はわたしに一任されたはず、まさかお忘れになりましたの?」


 ルル大提督の言葉に俺は沈黙をもって同意する。


『さすがルルさんですっ。司令官、6型を決戦仕様で出撃準備願います。セッティングはこの5型と同じでお願いしますっ!』


 やる気満々なリーフ艦長の様子に俺は説得を諦める。


 もうリーフ艦長は手遅れである。

 彼女を蝕むロマンという悪癖が、発動しているのであるな。


『聞こえてますよ、いいですか司令官、浪漫は浪漫ですっ悪癖じゃありませんっ!』


 リーフ艦長の反論に―――。


 リーフ艦長、問題児はみんなそういうのであるな。


―――俺はそう答えた。


 とはいえ判断を一任したルル大提督が許可をだした以上、俺に拒否する権限はないのである。


 しかし問題がある以上、俺はリーフ艦長に再検討を要請する。


 リーフ艦長、貴官の要請は了承した。しかしファイネル6型と5型では無視できない性能差分があり、その運用にかなりの相違がある。同一のセッティングでは、無視できない不都合を発生する、この条件について再検討が必要である。

『構いませんっ細かい調整は飛びながらやりますっ!』

 了解である。準備だけは進めておくのである。


 やはり、この程度の障害では、問題児を止められないようであるな。

 さすが問題児である。


『こちらアオイです。乗艦変更を希望します。』


 次はアオイ艦隊長であるか。

 確かに自立航行が可能とはいえ、片手片翼を失い大破に近い中破判定を受けているリントヴルム級重レーザー重巡航艦では再出撃は難しい。

 アオイ艦隊長の判断には俺も同意するが、すぐに使える艦となるとミスリル級かホワイトパール級の戦艦ぐらいであるな。貴官もそれでよいか?

『大戦艦をお願いします。』


 何か確信があるのか、アオイ艦隊長がそう言い切った。


 俺はしばし熟考する。 


 アオイ艦隊長、その提案は保留である。

 現状いまだ特型ドックを稼働出来ていないのである。特型ドック専従隊を編成出来ない限り、大戦艦コインは投入出来ないのであるな。

 貴官は中ドックではなく指定された大ドックに入渠して、乗艦変更作業を開始せよ。


『了解しました。絶対大戦艦にしてくださいっお願いします。』


 アオイ艦隊長の嘆願に俺も了承の意を告げる。


 その為の保険は掛けてある―――。

 掛けてあるが―――。


 俺はいまだ届かぬ、ソウジ提督からの報告を待っていた。



そろそろ伏線の回収を進めたいところなんだけど、ボスが深くもぐって出てきません。

また、近いうちに更新できるように、がんばりますね。

それではまた。


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