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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
4章 絶望を蹴散らす者たち
136/140

第4次グレイトパール泊地沖会戦 艦隊決戦3

ふー、お待たせしました更新します。

初レビューありがとうございます。

他の作者さんが嬉しそうな理由がよく分かりましたよ。

ブックマ等ありがとうございます。

楽しんで頂ければ幸いです。


 3隻の扶桑級重戦艦から出撃した212騎の可変戦騎隼が、20騎で編隊を組み先行する余りの12騎が先導騎として、本隊である10編隊200機を誘導する。


 攻撃目標である敵重巡級は5隻―――。


 アオイ艦隊と交戦中のγ-43、44、46の3隻とリーフ艦隊と交戦中のγ-49、そして大破して艦隊から落伍していくγ-48である。


 ルル大提督が目標に選んだのはγ-48を除く交戦中の4隻だった。


 先導騎の誘導の下、隼隊が途中で3隊に分隊して突撃軌道に移る。


 アオイ艦隊と交戦中の3隻には60騎の第1分隊と80騎の第2分隊が向かい、リーフ艦隊と交戦中の1隻には60騎の第3分隊が攻撃を担当する。

 また2個艦隊10隻からなるハウンド級高速要撃駆逐艦を率いたスピリット級要撃軽巡航艦2隻も、それぞれ1個艦隊を率いて別ルートから突撃を開始していた。


『アオイ、リーフ待たせたわね。攻撃を開始するわ。合わせなさい。』

『待ってました。ルルさん、お願いしますっ!』

『了解です。ルルさん!』


 開かれたモニターに映るルル大提督が告げる待望の連絡に、即座に交戦中のふたりが答える。

 その答えを受けて『攻撃開始。』とルル大提督が始まりを告げた。


 別軌道を描く3群の隼攻撃隊から、最初に先導騎を務めていた隼12騎が複数のミサイルを放つ。

 それに続くように各分隊ともきっちり半数が懸架していた対艦ミサイルを発射、続けて残りの半数も発射する。


 100基づつ2回に分けて放たれた200基の対艦ミサイルを感知して、即座に艦隊防衛射撃を開始する敵重巡艦隊だったが、殺到する対艦ミサイルに対応する為、攻勢の鈍った敵艦隊に向けてアオイ艦隊とリーフ艦隊が同時に猛攻撃を開始する。


 殺到する対艦ミサイル群への対応と泊地艦隊への応戦。

 飛来するデブリの識別にも手を取られていた処に、さらに飽和攻撃への対処という仕事を押し付ける事で、精神的な余裕を奪い、場当たり的な対応を誘引する。


 すべては即時対応という失策を実行させる為に―――。


 そして―――。


 最初に飛来した先導騎から放たれたミサイルが展開された艦隊防衛射撃網に突入し、レーザー照射に絡めとられ、アンチレーザーチャフをまき散らして爆発する。


 レーザー光を乱反射してレーザー兵器による迎撃力を低下させるアンチレーザーチャフの効果も機動砲撃戦を展開中の両艦隊にとっては、コンマ何秒のことでしかない。


 しかしそのコンマ何秒が、ミサイルによる飽和攻撃の成功率を大きくあげる事になる。


 迎撃力の低下した艦隊防衛射撃網を次々と潜り抜け、艦対艦ミサイルが突入していく。


 レーザーチャフの効果範囲を抜け、コンマ何秒遅れて威力と精度を取り戻したレーザー照射により、瞬く間に数を減らしていくミサイル群だったが、同時に突入してくる隼隊の迎撃まで対応しきれない。


 さらに別方向から最大速度で突撃してくるハウンド級高速要撃駆逐艦10隻に向けて、重巡艦隊の主砲が指向されるが、迫りくる残存ミサイル群と隼隊、さらにアオイ艦隊とリーフ艦隊、そして支援砲撃を実行中のスピリット級要撃軽巡航艦の対応に押され、どうしても砲撃精度が甘くなる。


 多方面飽和攻撃に晒された重巡艦隊に泊地艦隊からレーザー照射が集中する。


 殺到する対艦ミサイル―――。


 その後方から迫る隼隊―――。


 そして躊躇いなく衝突軌道を描くハウンド級高速要撃駆逐艦―――。


 なんとか回避を試みるものの、突入してくるのはとことんまで機動性を追求したハウンド級高速要撃駆逐艦である。

 そうそう回避出来るものでもなく、主砲による阻止砲撃も精彩を欠く。

 1隻、また1隻とレーザー照射に捉えられるが、大きくマテリアル装甲を削られ、主砲が破壊されたとしても、加速するハウンド級高速要撃駆逐艦は止まらない。


 そもそも高熱による破壊を目的にしたレーザー兵器には衝撃力がなく、目標が焼失爆発でも起こさない限り、軌道を変えることなど出来ないからだ。


 衝突に備え、敵の障壁を圧迫すべく残存する全ハウンド級高速要撃駆逐艦が全速を維持したまま総力砲撃に移行し―――。


『激突、今。』


―――殺到する対艦ミサイルと共に残存6隻の駆逐艦が激突した。


 作戦の都合により、今回は動力炉の臨界爆発を起こさせない為に、激突直前で動力炉の緊急停止を行ったものの、大型質量弾の役目を見事果たしたハウンド級高速要撃駆逐艦が、敵艦の障壁を突き破り敵重巡と激突、衝撃波を伴って装甲外殻を撃ち砕いた。


 その激突の衝撃を物語るように、艦首部分から艦中央にかけて大きく潰れたハウンド級の残骸がゆっくりと剥がれ落ちる。


 露呈した破砕部分から体液を噴き出すEvil重巡級。


 しかし、攻撃はまだ終わらない。


 ハウンド級高速要撃駆逐艦の突撃など、本番前の前座でしかなかった。


 至近距離にまで到達した対艦ミサイルを撃墜した時、遂に隼隊が肉薄に成功する。


 相対距離にして1万メートル圏内―――。


 戦闘機形態から人型形態へ、可変戦闘騎隼が次々と変形して、直接敵艦に乗り込むべく強行着陸を敢行する。


 それは艦船にとって致命的な攻撃。

 強行着陸した戦騎による近接攻撃が始まろうとしていた。


 目標にされた重巡級4隻が、持てるすべての武装を隼隊に向ける。


 主砲による砲撃が―――。


 高角砲から放たれる実体弾の雨が―――。


 獲物に襲い掛かる群なす羽虫の襲来が―――。


 敵艦の迎撃を受け、強行着陸に失敗した隼が次々と破壊されていく。


 変形途中で破壊され―――。


 主砲の乱射に巻き込まれ―――。


 至近距離から散弾でバラバラにされていく―――。


 それでも、最初の1騎が船体に足をつける。


 その1騎は破壊されるまで、両手搭載のレーザー砲で防衛銃座を撃ち抜き、高角砲を破壊していく。


 喪失していく迎撃兵器の数だけ死角が広がり、着陸に成功する隼の数も増えていく。


 破壊し、破壊される―――。


 壊し、壊される―――。


 防衛本能なのだろう、船体の外殻を覆う皮膚装甲の一部がひび割れ、滲み出した体液と細胞が新たな防衛銃座を形成する。

 しかし、その多くが形成途中に隼によって破壊され、戦闘隊列を組んだ隼隊がハウンド級高速要撃駆逐艦の衝突によって生じたクレーターに向かう。


 破孔にまで至ってはいないものの、隊伍を組んだ隼隊は大きく傷ついたそのクレーターに向かって全機のレーザー照射を集中し、両翼に残っていたミサイルを一斉に撃ち込んだ。


 衝撃波と共に飛び散る皮膚装甲が舞い散る体液と共に、船体後方に向かって飛び去っていく。

 動き続ける船から置き去りにされる粉塵の中に、アオイ艦隊やリーフ艦隊、砲撃支援中のスピリット級要撃軽巡航艦のレーザー主砲が照射され―――。


『全騎、突入なさい。』


―――ついに穿たれた破孔に隼隊が突入していく。


 歩兵を突入させて内側から要塞を破壊するように、戦騎をもって大型艦を内部から破壊する。

 それは艦隊戦において、まれに発生する現象だった。


 いかにEvilという存在が、出鱈目な特性を有していたとしても、その根底にあるのは生物としての模倣である。

 その特性は、取り込んだ技術や経験、能力や機構を再現する過程で生じる無駄まで模倣してしまうからだ。


 例えば、誰も通らない通路―――。


 誰も使わない部屋―――。


 艦橋という剥き出しの建造物―――。


 船員という人を乗せる有人航宙艦では、あって当たり前の施設や設備が、有人航宙艦を取り込んだEvil船舶型種には、使う予定のないままに無意味に残されてしまう。


 勿論、進化速度が早く適正進化を繰り返す過程Evilにとって、それら無駄な要素は自然と淘汰されていくのだが、生まれたばかりだったり、一世代あるいは二世代目の発生個体であれば、まだまだそんな無駄が残されている。


 しかしこうした要素は一概に無駄という訳ではなく、大型種の内部に住み着く共生体と呼べる小型Evilも存在しており、それらと共生している大型種は、共生体がより住みやすいように配慮して、それら無駄な空間を維持拡張する個体もいる。


 どちらが正しいという訳でなく、生物種としての多様性がそこにはあった。


 そして、隼戦騎隊に突入されたEvil重巡級がどちらだったかは分からない。


 皮膚装甲に護られた船体外殻を破壊して突入した隼隊は、柔らかい有機細胞や金属構造体をレーザー兵器で切り裂き、中へ中へと浸透する。


 ついに天井を突き破り、Evilの体液や肉片を纏った隼が次々と開けた空間に突入する。


 そこは内臓器官なのか、使われていない貨物室のような格納スペースだったのかはわからないが、ただ隼隊に指示を下すルル大提督にとって都合がよかった。


 ルル大提督は躊躇なく命令を下す。


 突入に成功したすべての戦騎隼が、彼女の指令に従い胸部に内蔵された常温核融合炉を臨界爆発させる準備に移行する。


 それは挺身攻撃、あるいは自爆戦術とも呼べる戦術だった。


 隼隊に狙われた4隻の重巡級が次々と爆発する。

 隼隊の自爆攻撃により発生した内部爆発が、重巡級の船体外殻を大きく吹き飛ばし、噴き出す体液が流れ去る。


「薙ぎ払え、ドラゴンブレスっ!」


 満身創痍となった重巡艦隊。


 この瞬間を待っていたアオイ艦隊長が、交戦中だった敵艦3隻を纏めてドラゴンブレスで薙ぎ払う。


 戦闘力を喪失した重巡級に、これを避ける術も耐えきる防御力も残されてはいなかった。突き刺さる熱線が、紙同然にまで衰えた障壁ごと切り裂き、焼き溶かして破壊していく。


「こちらアオイ、γ-43、44、46撃破、続けてγ-49をやるわ。リーフ交差砲撃で行こう、タイミングは合わせるから、やっちゃいなさいっ。」


 3隻まとめて撃破したリントヴルム級重レーザー重巡航艦が、リーフ艦隊と交戦中だったγ-49に狙いを変えた。


『了解ですアオイさん、此処ですっファイネル・フルバーストっ!』


 リーフ艦長が吠える。

 此処が好機とばかりに接近した2隻のファイネル級が、残された弾薬を撃ち尽くす勢いで攻め立て―――。


「全主砲、γ-49を指向。一斉射っ!」


―――ドラゴンブレスを撃ち終えたリントヴルム級重レーザー重巡航艦から、主砲一斉射が放たれる。


 なすすべなく、リーフ艦隊とアオイ艦隊の交差砲撃に捉えられた重巡級もまた沈む。

 この1隻も時間さえかければリーフ艦隊だけでも撃破出来たであろうが、いまは時間こそ敵である。


 しかしドラゴンブレスからの主砲斉射は、片翼となり熱処理量で弱体化していたリントヴルム級重レーザー重巡航艦には厳しすぎた。

 強制排熱が始まり、艦の性能が大きく制限される中、それでも戦いは終わらない。


 いや、終われない―――。


 経験を積んだ生き残った1隻が、いずれ傷を癒し、数を増やし、より手強くなって帰ってくるからだ。


 此処で仕留めると残存艦隊による掃滅戦が始まる。


 その攻撃は、容赦なく大破して落伍していったγ-48にも向けられた。


 優勢であったはずの重巡艦隊があっけなく壊滅する。


 この会戦の激しさを語る一幕だった。



 敵重巡艦隊の壊滅に成功―――。


 その結果にルル大提督はひとつ頷き、隼隊の指揮に割り振っていた演算領域を再度交戦中の重戦艦隊に分配する。


 たしかに接近する敵重巡艦隊に対して、重戦艦1隻を迎撃に廻すという選択肢もあったが、ルル大提督はそれを嫌った。


 グレイトパール泊地に配備された6隻しかない重戦艦は、交戦中の重戦艦級3隻とこれから出現する重戦艦級か超大型母艦級の反応3隻分、そして大戦艦級と思われるγ-61に対応せねばならず、敵重巡級6隻に廻す余地はないと判断したからだ。


 また泊地で修理中のホワイトパール級戦艦3隻とミスリル級戦艦はいまだ修理中、重巡や巡航艦もすべて出撃しており、軽巡や駆逐艦では火力不足。


 故にルル大提督は決断し、多くの犠牲の上に成り立った勝利にひとり満足する。


 戦いは続く―――。


 ようやく最後の特型母艦級を仕留めたヴィオラ提督が艦隊を転進させているが、僚艦3隻の支援を受けた扶桑級重戦艦2隻と蛸型重戦艦級3隻の戦闘は、蛸型のもつエネルギー吸収能力により、拮抗どころか苦戦を余儀なくされていた。


 しかし、勝利はゆるがない。


 なぜならこのまま戦い続ければ、いずれ狂喰アメーバと同じく蛸型重戦艦級も吸収限界に到達するからであり、それが分かっている以上、彼女が負ける事はないからだ。


 だが、このまま戦い続けると、まもなく出現する大型艦3隻の対応が間に合わなくなる。


 俺が演算結果で示した予想に、ルル大提督も同意する。


 そして、ルル大提督が俺に提案し、俺はそれに同意した。


 またひとつ、大きな決断を下さねばならない時が近づいていた―――。




 なんとか週末に間に合ったので、週末は予定通り映画を見に行こうかと計画しています。ハイスクール・フリートです。アニメは楽しめたので劇場版も期待しているのですよ。


艦隊決戦も佳境ですが、伏線のギミック発動が先か、ボスを先にするかで迷ってます。

この辺のタイミングは同じくらいなので・・・・。

ただチェリー達の到着は最後です。

展開しだいでは間に合わないかも(笑)

それではまた。


追記 質問の答えですが、ソウルコアは夢を見ます。しかしフェイクコアは夢を見ません。

あくまで私見ですが、夢を見るのも未来に夢や希望、そして願望を抱くのも生きているものだけです。

機械は夢を見ません。

過去も現在も未来も等しく、記録、観測、推測された数値の結果でしかないからです。

其処に何も託さないから、夢を見ません。

こんな感じとなりますが、質問の答えとさせてください。

この問題は回答のない水掛け論にしかなりませんからね。



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