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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
4章 絶望を蹴散らす者たち
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第4次グレイトパール泊地沖会戦 艦隊決戦2

ふー大変遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

ようやく再開のめどがつきました。

少しずつ更新を進めていきますので、気長にお待ちください。

ブックマしたまま、待っていてくれた人たちに感謝です。


 グレイトパール星系―――。


 敵の第1次攻撃隊だった1000機以上の機動兵器群を呑み込む200個の爆炎が、空間を埋め尽くしている。

それはヴィオラ提督が、最後の広範囲殲滅攻撃を実行した瞬間だった。


 断続して感じる閃光と衝撃波―――。


 爆炎に呑まれ焼け落ちる重攻撃機級や重爆撃機級といったEvil機動兵器群が、抱えていた可燃物や爆発物を誘爆させる。

 連鎖する爆発が残骸という名の大量のデブリを撒き散らし、散弾の如く乱れ飛ぶデブリに射抜かれ、無事だったものもまた砕け散る。


 重戦艦や特型母艦級といった大型艦にとって、生じた爆炎の余波や衝撃波、乱れ飛ぶデブリなど大した問題にはならなかったが、10~20メートルほどの大きさしかない機動兵器群にとっては、自分と同質量の物体が飛び交う宙域など死地でしかない。


「敵機動兵器群1428機中残存216機、敵護衛戦騎群残存281騎。ヴィオラ提督より各艦隊へ、同戦騎群は熱核攻撃に対して耐性を獲得しているものと予測する。同タイプの出現に留意せよ。」


 ヴィオラ提督は攻撃結果から推測される敵性能を全員に報告する。


 残念な事に主目的であった敵の第1次攻撃隊である1500近い機動兵器群の撃滅には成功したものの、その効果範囲内にきっちり半数は巻き込んだはずの敵護衛戦騎群300騎がほぼ無傷で残存している。

 さらに3隻の特型母艦級から第2次攻撃隊の発艦も始まっており、残存する第1次攻撃隊216機も編隊を組みなおして再突撃を開始していた。


 戦意旺盛にして勇猛果敢―――。


 あの一瞬で多くの味方を失ったはずのEvil機動兵器群だったが、その闘志に衰えた様子はまるで見えない。


「艦隊前進、艦隊防衛射撃網形成。」


 しかし、それはヴィオラ提督とて同じ事だった。

 彼女は着々と削られていく艦隊の戦力に怯える事無く前にでる。


「目標、第1次攻撃隊、攻撃開始。」


 ヴィオラ艦隊の旗艦テンペスター級重戦艦を中心にして、3隻の重戦艦が楕円軌道を周回しながら、一斉に迎撃ミサイルと小型プラズマ弾を発射する。

 突撃してくる敵の第1次攻撃隊に向かい殺到する飛翔体を見送り、ヴィオラ艦隊は前進する。


「隊列変更、全艦、総力砲撃用意、目標、前方敵機動艦隊。」


 散開して迂回軌道や回避軌道に移る敵第1次攻撃隊を、放たれた飛翔体群が追いかける。


 宙域に散らばる散華の光―――。


 イルミネーションの様に煌めく光景の中、ヴィオラ艦隊は艦隊防衛陣形から横一列に並ぶ砲列陣形に変えて、一気に加速する。


 敵機動艦隊も軌道変更して後退を開始しているが、両艦隊の距離は相対距離20万キロから18万キロ縮まっている。


 しかしヴィオラ提督はまだ撃たない。


 必中ではなく、必殺と呼べる距離、相対距離にして15万キロを目指して加速する。


 接近するヴィオラ艦隊を前に、全力で後退する敵母艦艦隊から第2次攻撃隊の放出は続いている。

 敵機動艦隊にとって文字通りの総力出撃となる第2次攻撃隊だったが、開幕早々に撃滅した第1次攻撃隊が稼ぐはずだった出撃時間を稼ぎだす為に、敵艦隊護衛戦騎群300騎が母艦を離れ、3騎1編隊を保ったまま、別々の軌道をとりヴィオラ艦隊に向かう。


 明らかに時間稼ぎを目的としているのであろうが、敵戦騎群が突撃を開始する前衛群とそれを後方から支援する後衛群に奇麗に分かれて突撃軌道を描く。


 さらに60機余りまで撃滅された第1次攻撃隊残存機群に先発した第2次攻撃隊120機が合流して突撃する戦騎群に続く。


 しかし、すべては遅かった―――。


「砲撃開始。」

 

 相対距離15万キロ―――。


 必殺の距離、最適の攻撃位置につけたヴィオラ艦隊は、敵特型母艦級3隻に対して4隻の重戦艦が持てるすべての武装を解き放つ。


 必殺と呼べる距離から放たれた4隻合わせて188門のレーザー主砲の照射からは、何者も逃げられない。

 運悪くその射線上にいた敵機動兵器群が、通過するレーザー光に呑み込まれ一瞬で燃え尽きる。

 空間を漂うデブリもレーザー阻害物質も関係なく、貫き薙ぎ払う光の剣が一切合切容赦なく存在するものすべてを焼き溶かす。


 多発する焼失爆発―――。


 爆散する護衛機群の後方で2000メートル級の特型母艦級3隻が爆炎に包まれる。

 特に盾になるように突出した1隻にヴィオラ艦隊からのレーザー照射が集中し、溶け落ちる装甲外殻を連続する焼失爆発が吹き飛ばしていく。


 装甲外殻を貫通したレーザー光が艦内部を焼き溶かし、同時に発生した内部爆発が、レーザー光の貫通痕から吹き上がり船体を引き裂いていく。


 ひと際大きな爆発が発生する。

 格納区画を直撃したのだろう装甲外殻を大きく吹き飛ばし、飛び立つことなく破壊された機動兵器群がデブリとなって吹き飛んでいく。

 満身創痍、そう呼べるほどの損害を受けながらも盾となった一隻が、後退する艦隊から離脱して前進を開始する。


「逃がさない。対艦プラズマキャノン、並びに艦対艦ミサイル一斉射。」


 緊急排熱を開始した主砲群の代わりに、ヴィオラ提督は大型プラズマ弾と対艦ミサイルによる攻撃に切り替える。


 突撃する特型母艦―――。


 しかし、彼女が攻撃目標として設定したのは、艦隊の盾となって攻撃を受け止め満身創痍となっても突撃してくる大破艦ではなく、その後方にあって後退を続ける残り2隻の損傷艦だった。


 戦力を喪失した敵よりも戦闘可能な敵から叩く。


 冷静に計算した上で彼女が下した判断により、ミサイルとプラズマ弾の飽和攻撃が2隻の特型母艦級に向けられた。


 重戦艦4隻から放たれた、敵艦隊の逃げ道を封鎖するような軌道を描き迫る大型プラズマ弾や艦対艦ミサイルを阻止せんとして、残存する敵機動兵器群が迎撃戦を開始するが、突撃をやめて軌道を変えていく機動兵器など的でしかない。


 続けて副砲や高角砲といったレーザー兵器が撃ち漏らした第1次攻撃隊を掃滅し、接近する第2次攻撃隊と残存護衛戦騎群に対して、再度小型プラズマ弾と迎撃ミサイル群が放たれる。


『ルル大提督より各人へ、敵重戦艦級と交戦中。敵重戦艦級に熱エネルギー吸収個体を確認したわ。同系統の出現に留意なさい。』

「ルル大提督、支援します。」

『いいえ、まだ駄目よ、ヴィオラは目前の敵を片付けなさい。みんないいわね。今は状況に流されず、ひとつひとつ片付けなさい。残りはあと少し、このまま勝ち切って、彼に勝利を捧げましょう!』


 ルル大提督らしい物言いで全員を鼓舞して通信が終わる。


 戦況図上で、ヴィオラ提督から戦闘を引き継ぎ、残存していた大型母艦群を撃滅したルル大提督が、新たに表れた重戦艦級3隻と交戦を開始していた。


 しかし狂食アメーバと同じ熱エネルギー吸収能力を獲得しているらしきタコのような重戦艦級3隻と相対するには重戦艦隊でも火力不足らしい。

 全戦艦から続けられているレーザー砲の集中照射を、蛸型重戦艦級が全身で受け止め文字通り喰らい尽しながらも、果敢に蛸足を伸ばして捕食を試みている。


「ルル大提督は苦戦中、支援が必要。」


 すべての重戦艦による集中砲火ならば、あの厄介な重戦艦も撃破可能だと情報支援中の珠ちゃんが伝えてきている。


 彼はどうやら遠回しに援護に行けと言いたいのだろう。

 それでも命令として発令しないのは、流動的な戦況下で戦う艦隊に余計な拘束を掛けない為だろうか、命令として発令されてない以上無視しても構わない。


 しかし―――。


「戦力の集中運用は戦術の基本、手早く片付けよう。」


 ヴィオラ提督は決断する。


 ヴィオラ艦隊は主砲の強制排熱を中断してエネルギー再充填。

 艦隊一斉射をもって満身創痍でありながら迫りくる特型母艦級を撃破した。



 同時刻、突撃陣形を組んで第2分艦隊との交差軌道上を進軍中だった敵重巡艦隊の迎撃に当たったアオイ艦隊だったが、既に合流したリーフ艦隊と共に艦隊戦に突入していた。


 本来の予定ならば、進撃する敵重巡級6隻に対してアオイ艦隊は、敵艦隊に並んで撃ち合う同行戦を挑みつつ、敵の針路を妨害して進撃を遅れさせるはずだったのだが、アオイ艦隊が同行戦に移行した段階で敵重巡艦隊が進路を変更、アオイ艦隊に艦隊戦を挑むべく交差軌道に変針したのだ。


 この段階である意味、敵艦隊の進撃阻止には成功したともいえるのだが、うかつにも敵の術中に嵌り、アオイ艦隊とリーフ艦隊が誘引させられたとも言える状況だった。


 右舷にドラゴンブレスの直撃を受けたEvil重巡級が、急速に速度を落とし艦隊から落伍していく。

 大きく抉り取られた右舷の損傷度合いからして撃破出来たらしい。


 ドラゴンブレスの放出を止めたリントヴルム級重レーザー重巡航艦が、片翼が失われた翼を動かしデブリの海をかき乱す。


「ようやく2隻、リーフも頑張ってっ!」

『まかせてください! 1隻ぐらい沈めて見せますっ!』


 敵重巡級1隻を引きつけ交戦中のリーフ艦長が熱く言い切った。


「よし、そっちは任せた、やっちゃいなさいっ!」

『はいっぶっ潰しますっ!』


 残り3隻を相手取るアオイ艦隊に、リーフ艦隊を援護する余裕はない。

それが分かっている両名は互いの勇戦を誓い合う。


 しかし戦況は厳しい―――。


 アオイ艦隊は僚艦であるミストラル級軽巡航艦2隻と引き換えにする形で1隻を沈め、旗艦であるリントヴルム級重レーザー重巡航艦も片翼を喪失する被害を受けたものの、もう1隻の撃破にも成功していた。


 しかしリントヴルム級重レーザー重巡航艦にとって、巨大な両翼部分は機動戦闘を支えるカウンターウェイトであり、同時に巨大な排熱機構を取り込んだ熱エネルギー変換器でもある。

 片翼と言えどもそれが失われた以上は、機動力が10%さらに秒間排熱処理量が40%低下する為、全力発揮にかなりの制限を受けることになる。


 だからといってアオイ艦隊長は撤退しない。

 アオイ艦隊対重巡艦隊、戦力比にして1対6から始まった戦闘は、リーフ艦隊の参戦により1対5となり、1対4、ようやく1対3まで持ってきたからだ。


 戦闘は続く。


 デブリだらけの戦闘宙域では、両艦隊が向け合うレーザー照射に加えて、戦闘宙域を飛び交う実体弾やデブリっぽいなにかの飛翔物体が絶え間なく飛んでくる。


 その多くはデブリと化した残骸や目標を外した実体弾なのだが、まれに起爆状態の対艦爆弾があったりするので、無視するのは危険であり、ここまで戦争が激化した状況では、実体弾とデブリの見分けも付きにくく、両艦隊ともその対応に苦慮していた。


 現に取るに足らないと判断された小さなデブリの大爆発がなければ、先ほど撃破した敵重巡級がドラゴンブレスの直撃を受ける事はなかっただろう。


 片翼をもがれたリントヴルム級重レーザー重巡航艦から放たれた、防衛レーザー群の濃密なレーザー照射を受けて、敵重巡を取り巻く羽虫型の小型飛翔体群が消し炭になって爆ぜる。

 この羽虫の群れも以外と厄介であり、1匹1匹は微弱な効果しかないレーザー光に干渉して拡散する能力も100匹単位で群れ集えば侮れない影響を与えるらしい。


 ただし亜光速度一歩手前で撃ち合う両艦隊の艦隊行動に、追従できるほどの機動性はないらしく、1秒たらずで宙域に拡散していくが、アオイ艦隊長がわざわざ攻撃してまで削り取るのは、そいつらは拡散しただけで消滅した訳ではなく、アンチレーザー生命体というべきれっきとしたEvilだったからである。


『みんないいわね。今は状況に流されず、ひとつひとつ片付けなさい。残りはあと少し、このまま勝ち切って、彼に勝利を捧げましょう!』


『聞きましたか、アオイさんファイトですっファイネル魂を見せつけましょうっ!』

「ええ、勝って見せるわっ。」


 アオイ艦隊と同じくらい厳しい状況にありながらも、リーフ艦長の戦意は衰えない。


 支援に当たるリーフ艦隊も度重なる戦闘による消耗が祟り、旗艦であるファイネル級旧型軽巡航艦はすべての追加コンテナ兵装を消耗、さらに推進器ひとつと右舷のレーザー連装速射砲を破壊されていた。


 僚艦であるファイネルⅡ級強襲軽巡航艦はいまだ健在だったが、追加兵装である艦対艦ミサイルを撃ち尽くしている。

 しかし、強襲型専用の脱着式重金属装甲外殻は残っており、その下で流動するナノマテリアル装甲と合算した防御力を武器にして、艦隊の前方にて敵重巡の攻撃を誘引する囮役を務めていた。


『ブースターのひとつやふたつくれてやるわ、食らいなさいっ!』


 リーフ艦長がレーザー照射の直撃を受けた推進器を切り捨てる。


 艦隊後方で爆発する推進器を背景に、ファイネル級旧型軽巡航艦が僚艦と共に艦隊斉射を続けている。


 レーザー兵器による一点集中照射―――。


 残念な事に主だった対艦装備である艦対艦ミサイルや誘導爆弾も、先んじて行われたナマズもどき狩りで使い切っており、これ以外に軽巡級の火力で重巡級の防御力を、正攻法で抜く手段が残されていないからだ。


 こうしてリーフ艦隊が重巡級1隻を引き付けてくれていたからこそ、戦況が拮抗している状況だった。


 その均衡を打ち破るべく、ようやく増援が到着した。




戦闘の規模が大きいのか、なかなかボスまでたどり着かない。

次は決戦3になるはずです。

今週末までには、なんとかだしたいかな。



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