表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大提督は引き篭もる。  作者: ティム
4章 絶望を蹴散らす者たち
132/140

第4次グレイトパール泊地沖会戦 前哨戦4

お待たせしました。やっと完成したので更新です。

ブックマ等ありがとうございます。もうちょっとで1000人達成かな。

前哨戦4では次々と敵が現れるバトルロイヤルで話が進みます。

楽しんで頂けると幸いです。

 グレイトパール星系外 深淵領域監視ポイント―――。


 帝国第3艦隊所属のトルテア・ノア艦長の乗艦である雪風級特務偵察艦が、複数の護衛艦と共に深淵宇宙に浮かんでいる。

 この艦隊の帝国内における任務艦隊名は名称不明泊地監視艦隊。

 別口からの情報提供の結果、後にグレイトパール泊地監視艦隊と艦隊名が変更されるものの、その任務までは変わることなく、詳細不明泊地の戦力規模を含め、様々な情報を収集する特務監視艦隊だった。


 その艦隊付近に中規模転移出現兆候が表れるが、トルテア・ノア艦長は慌てない。

 なぜならば艦隊派遣に関する事前通達があったからだ。

 通達通りに転移完了してきたのは、スザク提督が率いる1200メートル金剛級高速戦艦15隻からなるスザク高速艦隊である。


「こちらグレイトパール泊地監視艦隊所属、トルテア・ノア艦長。そちらの所属艦隊を告げよ、どうぞ。」

『こちらスザク高速艦隊、艦隊長を務めるスザク提督だ。ノア艦長、任務ご苦労、状況の確認をしたい。』

「スザク提督、遠路はるばるご苦労様です。戦闘は見ての通り継続中、監視中の泊地艦隊が敵の橋頭堡に攻撃を仕掛けている所です。大艦並べて押し込んでますから、まもなく橋頭堡を食い破るでしょう。」


 のんびりとした口調で、トルテア・ノア艦長はスザク提督に送った最新の戦況図を説明する。


『全体的には優勢のようだな。』

「はい、率いている指揮官の指揮能力が高いのでしょう。艦隊連携にまるで遅滞が見られません。さらに前線を支える重戦艦級の攻撃力も高いです。

 主力として加わっている2隻の扶桑級重戦艦こそ、我らが翻る御旗泊地から供出した艦ですが、テンペスター級は殲滅機構群泊地、シャルラハロート級はロイヤルガーデン泊地から供出されたものでしょう。

 共通していえる事は、どの艦も無改造の輸出仕様のまま使われています。」

『概略は良い、結論から言え。』

「了解しましたスザク提督。グレイトパール泊地は少なくとも重戦艦の建造を行っておりません。ただし観測開始時点より出現した新型艦種は5種類、新型艦の建造能力は高いと思われます。」


 複数のモニターに表示された監視対象泊地で使用が確認された艦影から、トルテア・ノア艦長は艦種名簿にない5つの艦を抜き出して見せる。


『その情報は古い、試作艦だが重戦闘母艦級が確認された。』


 スザク提督の発言を受けて―――。


「艦型不明の大型艦がありましたが、これですか?」


―――トルテア・ノア艦長は確認された5つの艦影から、対象の1隻を拡大表示した。


『間違いない、こいつだ。報告に上がってきた艦形と完全に一致している。』

「性能はどうでしたか?」

『艦々酒場亭泊地が提供してきた戦闘データならあるぞ。見るか?』

「是非にっ!・・・・・あれ?艦々酒場亭泊地からですか?」


 少なくともこの星系を含む戦域では、艦々酒場亭泊地の進出は確認されていない。その事実を知る彼の声には疑問符が浮かんでいる。


『どうやら転移事故らしい。発見されたのは3000光年以上先だ。』

「あーなるほど、前回の戦闘で大規模超空間歪曲現象が確認されましたが、その時ですか・・転移事故とはまた、ついてない。」


 受領した戦闘データを別のモニターに表示しながら、トルテア・ノア艦長は都合のいいように編集されている映像を解析して、各種性能諸元を割り出していく。


「これ、性能的には重戦艦としても使えます。」

『重戦艦と重戦闘母艦、どちらの艦体準拠も満たしているが正解らしい。試作艦とは思えない完成度だったと情報部からは上がってきてたな。』

「それで、スザク提督が援軍に派遣されたと言う訳ですか?」

『まあ、そういう事だが、俺はまだ援軍に向かうとは決めていない。』

「いいんですかそれ、命令違反になりませんか?」

『その辺は大丈夫だろう。なにより向こうの戦況は優勢だ。作戦に組み込まれていない俺たちがこの時点で介入すれば、作戦自体を崩壊させる恐れがある。

 それに恩を売るならば、出来るだけ高く売るべきだろう。違うか?』

「確かに正当性は認めます。・・・・スザク提督、多数の転移反応を確認。作戦は次の段階に進んだようです。」

『了解した。このまま監視を継続してくれ。』

「了解しました。」


 スザク提督に促され、トルテア・ノア艦長は監視任務を続行した。



 重力震を伴い、複数の艦隊が編隊を組んだまま通常空間に出現する。

 その数26隻、暴れまわるリーフ艦隊とアオイ艦隊による充分な援護を受けた結果、敵橋頭堡付近に出現したにも関わらず、敵艦隊による出現直後の攻撃を受ける事もなく全艦無事に出現した。


『艦隊突撃、みんな援護はお願いね。』

『了解です。ルルさんっ。』

『任せて、きっちり送り届けるわ。』

「了解、艦隊分隊、これより前線ラインを押し上げる。第1分艦隊前進。」


 ルル大提督の言葉に各艦隊を率いる艦長達が応じ、ヴィオラ提督は作戦を次の段階に進める。


 敵橋頭堡防衛艦隊β群の残存艦隊の相手を、残存する3個哨戒艦隊と泊地から出撃して戦闘宙域に急行している重戦艦隊に任せて、ヴィオラ提督は艦隊をふたつに分けて進軍する。

 第2分艦隊である扶桑級重戦艦2隻を打通回廊の維持にあてて、テンペスター級重戦艦とシャルラハロート級重戦艦からなる第1分艦隊は打通回廊を突破して、敵主力艦隊出現位置に躍り出る。


「右舷主砲群、目標γ-5、γ-16。左舷主砲群、目標γ-17。シャルラハロートはγ-22。砲撃開始。」


 ヴィオラ提督がテンペスター級重戦艦の14メートル連装レーザー主砲16基32門を、片舷8基16門づつ運用し、出現中、あるいは出現したばかりのEvil重巡級や戦艦級に向かい砲撃戦を開始する。

 目標とした3隻の重巡級と戦うテンペスター級と出現したばかりの海栗型戦艦級を相手どるシャルラハロート級重戦艦。


 敵を誘引する目的で前線を押し上げる第1分艦隊と次々に襲来する敵艦群。

 交戦宙域にレーザー照射が広がり、実体弾と小型プラズマ弾がぶつかりあい消えていく。


 レーザー照射で動きの鈍ったγ-16と仮称された重巡級に4発の大型プラズマ弾を直撃させ―――。


「目標γ-8に変更。主砲一斉射。」


―――下方から急接近してきた岩塊のようなEvil戦艦級に向かって、ヴィオラ提督は艦体を傾かせ無理やり片舷主砲8基の仰角を合わせて一斉に照射する。

 コンマ何秒で相対距離が詰められ岩塊が迫る。

 肉薄攻撃を狙う敵戦艦も無傷では済まない。放たれる複数のレーザー照射を浴び続け、表面の岩塊が溶け散り皮膚装甲を焼いていく。

 幾度も続く焼失爆発、しかしその程度では止まらない。


「プラズマ弾全力投射。チャージ完了。敵艦を指向。」


 迫る岩塊―――。


 テンペスター級重戦艦が無数の小型プラズマ弾を投射する。

 一発一発の威力は低くとも、数の暴力は馬鹿にできない。

 着弾の雨による衝撃が、戦艦級という巨大質量の突進をわずかに留め、生成完了したばかりの大型プラズマ弾が間に合った。


 レーザー照射と違い、着弾の衝撃を伴う大型プラズマ弾の直撃は、肉薄攻撃を仕掛けた岩塊型戦艦級の突入確度を大きくずらし、艦体下面すれすれを通過する敵戦艦級に次々と小型プラズマ弾の雨を降らし、離れていくその背中に片舷斉射を浴びせかけた。


 テンペスター級重戦艦のレーザー照射が、離れていく戦艦級の背後を捉え、表面に張り付く岩塊を焼き溶かす。

 後方を攻撃され続ける事を嫌ったのか、振り返った戦艦級のボロボロになった正面部位に、次々と大型プラズマ弾が突き刺さり―――。


「こちらヴィオラ提督です。γ-8撃破。」


―――海栗型戦艦級を片付けたシャルラハロート級重戦艦の主砲一斉射が命中した。


 巨大な焼失爆発により質量の大部分を失った岩塊型戦艦級の残骸を放置して、テンペスター級重戦艦が次の標的に主砲を向ける。


「プラズマ誘導子機放出開始。」


 ヴィオラ提督が、テンペスター級重戦艦の本当の切り札を使うための事前準備に入る。

 レーザー照射が交差し、大型プラズマ弾と棘型飛翔物体が飛び交う交戦宙域で、テンペスター級が26基の両用ミサイル発射基を開口して無数の球体を放出しはじめた。


 テンペスター級重戦艦に搭載された殲滅機構テンペスタの発動には、誘導子機である球体の宙域散布率が重要になる。


「γ-31撃沈。」


 2隻の重戦艦による十字砲火を受けた戦艦級が爆沈する。


 放出が続く子機―――。


 時間経過とともに広がる散布界―――。


 此処から先は時間との戦いだった―――。



 打通回廊を維持して敵残存防衛艦隊β群と戦う扶桑級重戦艦2隻を抜き去り、護衛任務に就いていたリーフ艦隊を置き去りにして、6個艦隊からなる攻撃艦隊が次々と打通回廊を突破していく。


 攻撃艦隊の狙いは、観測されたふたつの大戦艦級と思われる巨大出現兆候―――。


 その出現予測座標は敵中ど真ん中―――。


 出現していた重巡級が既に味方艦隊と交戦を開始しており、ちらほらと戦艦級の出現も始まっている。

 敵中深くまで進撃した囮役の2隻の重戦艦に、四方八方から襲い掛かる主力艦隊γ群は、接近する攻撃艦隊に気づいていないようだ。


 彼らからすれば出現直後から攻撃に晒され、戦闘に引きずり込まれた状況であり、事前情報の収集さえままならず、みずからの生存を賭けて目前の敵を排除しようと襲い掛かっているだけにすぎなかった。

 これではろくに連携も取れない。

 ましてや、この状況を維持する為にヴィオラ提督は、リーダーとなりそうな行動をする敵艦を選別して、優先的に撃破していた。


「こちらヴィオラ提督です。敵艦隊を誘引中、ルル大提督うまく避けてください。」

『了解、うまくやるわ。』


 ルル大提督が指揮する攻撃艦隊が3隊に分離、ハウンド級高速要撃駆逐艦10隻からなる第1、第2攻撃分艦隊がそれぞれ別ルートで目標に向かう。

 そして、第3攻撃分艦隊として分隊したスピリット級要撃軽巡航艦2隻と護衛のリーシェム級要撃駆逐艦4隻は、攻撃目標ふたつを同時に狙える座標に向かい、万が一にも仕損じた場合に投入する戦力予備として温存する。


 攻撃艦隊が速度を上げる―――。


 ようやく艦隊接近に気づいたEvil重巡級が攻撃艦隊を指向、砲撃戦を開始するが、その直後に攻撃艦隊の後方から放たれた数倍のレーザー照射を受けて爆沈する。


 扶桑級重戦艦2隻が進撃する―――。


 攻撃艦隊が打通回廊を潜り抜けた段階で、回廊の維持を放棄した2隻の扶桑級重戦艦が機動砲撃戦を開始、前方を行く攻撃艦隊を援護して前進する。

 また、ファイネル級旧型軽巡航艦の速力不足により置いてかれたリーフ艦隊も攻撃艦隊に向かおうとする敵艦に積極的に攻撃を仕掛け、囮の役目を務めていた。


 前方で交戦を続ける攻撃誘因役を務める重戦艦2隻からも支援砲撃が行われ、多くの仲間に護られて攻撃艦隊が進む。


『第1攻撃分艦隊、目標γ-60。攻撃開始。』


 ルル大提督の号令一下、第1攻撃分艦隊に所属する第1艦隊が最大速度まで加速して、艦体下部に懸架してきた艦対艦移相魚雷を投射する。

 続いて第2艦隊が艦対艦移相魚雷の投射に成功、先行する魚雷5基に追従するように5基が続く。


『第2攻撃分艦隊、目標γ-61。攻撃開始。』


 第2攻撃分艦隊に所属する第3、第4攻撃艦隊も艦対艦移相魚雷の投射に成功。

 各艦各1基、ハウンド級から放たれた20本の魚雷が、転移兆候を示す空間震を放ちつつ空間に沈み込む様に消失する。


 もちろん消失した訳ではない。

 艦対艦移相魚雷は通常空間から事象界面に潜り込んだだけであり、通常空間から消失した様に見えても各艦搭載の超空間探信基はその兆候を捉えている。

 空間と超空間を隔てる事象界面上を空間震を撒き散らしつつ進むその様子は、海面を泡立たせ航跡を引きつつ進む魚雷によく似ていた。


 攻撃目標であるγ-60、γ-61を示す巨大転移反応に向かう20本の航跡―――。


 出現の兆候を示す空間震を撒き散らすふたつの巨大反応に、20個の移動する空間震が接近する。


『攻撃成功、やったかしら?』


 ルル大提督が立てなくてもいいフラグを立てる。

 超空間探信基が命中を示す短くも強烈な空間震を20個連続で観測し、攻撃の余波により空間安定度が急速に悪化していく。

 この現象は事象界面上の敵を攻撃した結果として発生する弊害であったが、今回に限って言えば敵の出現を阻害する効果を期待できた。

 とくにいまだ出現していない重戦艦級の出現が遅れれば、それだけ戦艦級以下の撃滅に時間を使える事になり、ヴィオラ提督の負担軽減にもなるはずだった。


 しかし―――。


『・・・・第2次攻撃、目標γ-61。やりなさいっ。』


―――ルル大提督がγ-61に対して第3攻撃分艦隊を投入する。


 これがフラグの効果だったのか、経過を観察していた彼女が仕留め切れていないと判断を下したγ-61に向かって攻撃軌道に変移したスピリット級要撃軽巡航艦2隻が、4基の艦対艦移相魚雷を投射し―――。


『迎撃されたっ!』


―――空間を貫き唐突に出現した数十基の飛翔体が、事象界面突入直前の艦対艦移相魚雷4基を迎撃する。


 その様子に、突入に成功した2基も迎撃されると予測したルル大提督だったが、予想に反して2基は巨大出現反応と接触した。




次はボスキャラ登場回かな。

取り巻きは重戦艦級のレイド戦♪

生物学上の悪夢を見せつけられるといいな(笑)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ