第4次グレイトパール泊地沖会戦 前哨戦1
遅れてごめんなさい。
いろいろ書きなおしていたら、日付が変わってました。(笑)
とりあえず更新です。
誤字報告感謝です。読んで頂きありがとうございます。
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【報告】ミストラル級軽巡航艦の修理が完了しました。
【緊急】第4次グレイトパール泊地沖会戦に勝利せよ。が発令されました。
【緊急】Evil先遣艦隊α群を撃滅せよ。が発令されました。
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グレイトパール星系―――。
最初に出現したEvil小型艦級160隻からなる先遣艦隊α群は、32隻からなる先遣艦隊α1群、18隻からなる先遣艦隊α2群、21隻からなる先遣艦隊α3群と先遣艦隊本隊である巡航艦級を含む89隻からなる先遣艦隊α4群に分かれて、グレイトパール星系に侵攻を開始する。
また先遣艦隊α群の出現宙域では、多数の敵艦が一度に空間跳躍してきた事により、同時多発する空間震の影響で空間安定度が低下、本来同時に出現するはずだった残りの小型艦群の出現にも若干の遅れが生じており、それに続くはずだった中型艦級~超大型艦級の出現に至っては大幅な遅滞を生じさせていた。
先遣艦隊α群の侵攻開始から宇宙標準時間で2時間後、迎撃準備を整えたグレイトパール泊地艦隊が要撃戦を開始する。
本隊である先遣艦隊α4群に先行して進出する先遣艦隊α1群~α3群は、GP5近郊で3個哨戒艦隊との交戦に入り、遅れて出現した7個要撃艦隊の挟撃を受けて壊滅した。
この3群と交戦中だった哨戒艦隊と要撃艦隊は残敵掃討を開始していたが、先遣艦隊α4群は交戦を避けて進軍し、グレイトパール泊地沖に迫りつつあった。
また、偵察艦隊を率いるシエル提督とアイン提督、並びに討伐艦隊としてM73星系のEvilの巣駆除に向かったソウジ提督とグレイトパール星系を脱出して、アリゼ本国に帰還する有人船団は無事に跳躍を完了おり、随伴護衛艦隊から要撃艦隊を抽出されたものの、リーフ艦隊が護衛として随伴する水資源輸送船団も目的地であるGP6近郊に到着しつつあった。
その状況下において、主戦場となったグレイトパール泊地沖では、89隻からなる先遣艦隊α4群と重戦艦2隻の交戦が始まろうとしていた。
重戦艦2隻を指揮するのは、修理中の扶桑級重戦艦からテンペスター級重戦艦に移乗したヴィオラ提督だった。
各武装をバランスよく配備された扶桑級と違い、双胴型の艦形を採用したテンペスター級重戦艦はレーザー兵器よりも実体弾とプラズマ兵器を主軸とした武装構成となっており、レーザー兵器は艦体準拠を満たす為に主砲として搭載された14メートル口径連装レーザー主砲16基32門だけだった。
その代わりに、艦対艦大型ミサイルも使用可能な4基の大型電磁カタパルトと26基の両用ミサイル発射基、対艦プラズマキャノン12基、迎撃用小型プラズマ弾投射基388基を装備している。
扶桑級と違う横長のテンペスター級重戦艦を動かしながら、彼女は修理コインを使って修理を終わらせたシャルラハロート級重戦艦を伴って前線ラインを構築していく。
89隻からなる先遣艦隊α4群は突撃艦級が36隻、駆逐艦級28隻、軽巡級15隻、巡航艦級10隻で構成されており、戦力規模において重戦艦1隻分にも届かない。
その事実は当然Evil側も熟知しており、敵艦隊は単艦乃至2~3隻からなる多数の小集団に分隊して浸透突破を図ってきていた。
その行動から見ても、敵艦隊は後退するつもりはないらしい。
あくまで泊地を目指して進撃することで、2隻の重戦艦を拘束するつもりなのだろう。
敵艦隊の意図が分かっていても、ヴィオラ提督にはそれに付き合うという選択肢しかなかった。
「想定通りの動きです。面白味はありませんが堅実ですね。」
残念な事に重戦艦以外の艦は不足しており、少数の艦隊ではこの規模の敵艦隊を止められない。
既に最終防衛ライン上には死守命令を受けた秋月級3隻、ソーシェム級6隻からなる防衛駆逐艦隊が展開しており、グレイトパール泊地防衛戦騎団と防衛戦闘機団はいずれも対艦装備を搭載して戦騎団はアステロイドベルト上に布陣し、戦闘機団は出撃準備を終えていつでも出撃可能な状態で待機していた。
また泊地外縁部に再建したばかりの第1泊地防衛砲台群も備え付けの各砲塔を敵艦隊に向けている。
2隻の重戦艦から相対距離にして30万~32万キロを維持しつつ、10隻のEvil巡航艦級が2~3隻からなる4群を形成して砲撃戦を展開している。
巡航艦級は同種族なのだろう、ナマズに似た同じような船体をくねらせ、決して30万キロ圏内に入ろうとはしない。
10隻のEvil巡航艦級の放つレーザー照射の3倍近いレーザー照射をもって応戦するヴィオラ艦隊だったが、敵艦隊は対レーザー用の何らかの阻害物質を撒き散らしているらしく、巡航艦級付近でのレーザー照射の減衰率が想定より高い。
そして交戦中の10隻の巡航艦級は、あくまでも重戦艦2隻の牽制と拘束を目的としているらしく、その阻害物質の密度はかなり高くなっており、自らのレーザー照射さえ激減させている。
「砲撃は届いていますが、一撃必殺とまではいきませんか。」
ヴィオラ提督は情報解析の結果に思案する。
重戦艦のレーザー照射は当たってはいるが、一撃では致命傷とはならないらしい。
少なくとも敵艦の挙動に遅滞が生じるような、大きな損害を与えていないと判断出来る程度には敵艦の行動に変化がなかった。
「恐らく空間に拡散する阻害物質が、皮膚装甲上にも厚く張り付いているのでしょう。焼失による損耗は起こっているようですから、このまま攻撃を続ければ、いずれ限界はくるでしょうが・・・・。」
そこに至るまで何度の命中が必要になるのか?
その答えをヴィオラ提督は持ち合わせていない。データもなく敵艦の損耗具合を測れない以上、実際に1隻沈めてみないと分からないからだ。
「このまま攻撃を継続するか、思い切って切り替えるか・・・・。」
レーザー照射の直撃を受けたはずの敵艦が、平然と回避機動を続けている。
「この手の敵はレーザー兵器以外ならば容易く倒せるはず・・・。」
その敵に再度の命中を確認するが、浴びせられたレーザー光の中から平然と現れる。
仮定として宙域に拡散している阻害物質が、対レーザー用に特化しているのならば、実体弾による砲撃や粒子砲、プラズマ弾等によって容易に撃破できるのだが、問題は相対距離が遠すぎる事だった。
相対距離30万キロ以上となれば、レーザー照射でも着弾まで1秒かかる。それ以外の低速弾では命中を期待できない。
さらに言えば、此方から距離を詰めようとすれば、敵は脱兎のごとく全力で逃げる。
その行動には、まるでためらいがない―――。
「この距離から対艦ミサイルを放ったとして・・・・命中が期待できるかどうか・・いえ、この阻害物質の密度ならレーザーによる迎撃は困難なはず、試してみる価値はある。」
幸いにしてテンペスター級重戦艦はミサイル兵器も充実している。
10発程度の艦対艦ミサイルを捨て撃ちする程度ならば問題にならないだろう。
そう考えたヴィオラ提督は、テンペスター級重戦艦の主砲群を交戦中の巡航艦から外して、周辺に展開する小型艦群にむける。
それはシャルラハロート級重戦艦も同じだった。
シャルラハロート級重戦艦のレーザー照射が、攻撃範囲のギリギリ外を抜けようとしていた複数の突撃艦級や駆逐艦級に向けられ、慌てて逃走した駆逐艦級1隻を残して消し飛ばす。
同時期にテンペスター級重戦艦に狙われた小型艦級も回避しきれず、レーザー照射を浴びて消し炭と化していた。
この結果から考えると、他の小型艦級は巡航艦級がもつほどの対レーザー防御は備えていないようだ。
なにより、宙域に拡散する対レーザー阻害物質の密度が薄い。
「やはり、あの10隻が特別なのでしょう。対レーザー防御に特化して進化してきた種という処ですか。」
残念な事にデータ照合はしたものの、このEvilについてはいくつかの近似種が確認できても該当種は見つからなかった。
恐らくこの戦域特有の固有種か、あるいは進化した結果として該当しなくなったのだろう。
巡航艦級でありながら重戦艦級のレーザー照射を受けて沈まない処か、まだまだ戦えるというだけで充分脅威である。
「大型電磁カタパルト1番~4番展開、艦対艦ミサイル1番~4番、装填。目標レンジ5に展開中のα4-22~25までの4隻―――。」
双胴型のテンペスター級重戦艦が、内側にある並列2基づつ並んだ大型電磁カタパルトを展開し、そのレール上に50メートルの大型艦対艦ミサイルが4発装填される。
「発射。続いて再装填、艦対艦ミサイル1番~4番、目標レンジ5、α4-26~29までの4隻、発射。」
再装填、再発射、先行する4発の大型ミサイルを追って、後発の4発が突き進む。
更に―――。
「再装填、ホウセンカ1番~4番、散布範囲設定・・・完了。」
―――大型ミサイルと変わらない大きさの五角柱型の筒が装填される。
「発射。」
ヴィオラ提督がためらいなく撃つ。
そして、災厄は解き放たれた―――。
8発のミサイルを追う形で射出された4基のホウセンカが、指定範囲に到達寸前に一斉に安全カバーを開き、内部に格納された1基当たり50基の直径5メートルにもなる熱核爆弾を放出する。
4基合わせて200基の熱核爆弾は拡散を続け、すべての爆弾が指定範囲に入った直後、一斉に起爆。
艦対艦ミサイルの迎撃に成功した船も失敗した船も関係なく、200個もの球形上の爆炎と衝撃波の波が、指定範囲を遥かに超えて薙ぎ払った。
哀れな犠牲者を衝撃波の波が包み込み、灼熱の業火が焼き溶かす。
不運に居合わせた小型艦級が衝撃波に流され、それを実行したテンペスター級重戦艦をも揺さぶった。
「実験結果はミサイル8発中3発命中、迎撃2発、回避3発ですか、やはりレーザーによる迎撃は困難なようです。」
実験結果は上々と後でレポートとして挙げる事に決めたヴィオラ提督は、ホウセンカによって巻き起こされた惨状を確認する。
運良く巡航艦級10隻の内6隻を撃沈破、2隻を大破に追いやったようだ。
「やはり、レーザー兵器以外には脆弱だったようです。さて残り2隻となれば―――。」
ヴィオラ提督は巡航艦級1隻に対して重戦艦1隻分の火力を割り振ることに決めた。
まずは厄介者から始末する―――。
文字通りの飽和攻撃によって残存していた2隻の巡航艦級を片づけると、2隻の重戦艦はお互いの間隔を広げて敵艦隊を挟み込みにかかるが、重戦艦2隻の攻撃範囲に迂闊に捕まる馬鹿はいない。
重戦艦の挙動に合わせて、敵艦隊は細かく進路を変える事でなんとか攻撃を回避しようとするが、泊地に接近しようとする以上、いずれかの段階で重戦艦の攻撃範囲内を犯すことになる。
しかし、敵艦隊が前進し続ける事で2隻の重戦艦を拘束し、星系外縁部で出現中の中~超大型艦の転移直後の攻撃に向かわせないようにする為には、たとえ時間稼ぎの捨て駒でも前進をやめる事は出来ない。
それが分かっているからこそ、グレイトパール泊地艦隊は先遣艦隊α群の撃滅を優先する。
それは敵戦力の各個撃破という側面と、主力艦の修理と補給完了を待つ泊地艦隊もまた時間を稼ぐ必要があったからだ。
先遣艦隊α4群の攻勢は鈍化しつつあった。
重戦艦の攻撃を引き付ける攻撃誘因役の10隻の巡航艦級を失った敵艦隊は、おそらく最後の攻撃に踏み切るつもりなのだろう、今までのように此方の隙を伺うような、細かい挙動が無くなった。
敵の覚悟を感じ取り、ヴィオラ提督は相手の挙動に注視する。
彼女はうまく隠してはいるが、出現したばかりのテンペスター級重戦艦は燃料・弾薬共に満載していたが、初期動作確認作業の真っ最中であり、修理を終えたばかりのシャルラハロート級重戦艦は決戦兵器である超重粒子砲用の専用弾倉、熱核融合炉封入筒の製造が間に合わず、使用不能だった。
「修理中の扶桑級重戦艦それに重戦艦コインが3枚、それに重巡2隻と間に合うならば戦艦4隻の修理、後は特型艦用ドック建築後の大戦艦コインが2枚です。戦力としては充分なはずです。」
いつ始まってもおかしくない最後の交戦に備えつつも、次の一戦を戦うための燃料と弾薬は残さねばならない。
なぜならすべての補給艦はGP6に出向中であり、5つある大ドックは2隻の重戦艦の出撃後、さらに2隻の重戦艦コインを解凍しつつあるが、修理コインを投入した扶桑級重戦艦の修理完了と建造コインを投入した大型雑務艇輸送船の建造完了にはまだまだ時間がかかり、入渠中のミスリル級戦艦の修理は始まってもいない。
そんな状況では補給の為に入渠する事が出来ないからだ。
『こちら水資源輸送船団護衛中のリーフ艦長です。GP6に無事到着、ウェスタ艦隊長に艦隊を引き継ぎました。ルルさん休暇は返上します、命令を下さいっ。』
『こちらルル大提督、リーフは哨戒艦隊と要撃艦隊と共にα4群の包囲網に参加なさい。跳躍タイミングは合わせなさい、一気に絞り潰すわよ。』
『了解ですっ、ルル大提督!。』
リーフ艦長が勇ましく気炎を吐いて敬礼をした。
すべてはなかなか沈んでくれない巡航艦級が悪いのですよ。
おかげで、三回しか使えない切り札を早々に使う羽目になった。
まだ前哨戦なのに・・・・。
次回はこの続き、前哨戦の後半となります。
それではまた―――。




