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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
4章 絶望を蹴散らす者たち
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出撃準備中1

ちょっと遅れましたが、更新です。

帰ってきたら、修理・補給して再出撃の流れ、いよいよきな臭くなってきました。

楽しんで頂けると幸いです。

「アオイ家族艦隊ただいま帰還しました。」


 帰らぬ家族を思い意気消沈しているらしいアオイ艦隊長に―――。

 何を諦めておるかと俺は怒る。

 アオイ艦隊長6人がもう戻らないと誰が決めた、チェリー艦隊長やプラム艦長、そしてガーベラ隊長は貴官の家族なのであろう。なによりムツハ隊長は貴官の娘なのだろう。貴官が信じないで、いったい誰が信じるというのだ。


「いまだ、連絡ひとつないんです。もうダメじゃないかって・・・・・。」


 それでもである。

 俺は全艦のダメージリポートを確認したが、超空間通信器や探信器といった超空間に関わる装置に重大な負荷が掛かっていたのである。

 一部の艦に至っては物理的に損壊しているものもあった。

 ならば、完全に巻き込まれたシサク重戦闘母艦が通信器を破損した可能性は高いと、俺は判断しているのである。

 さらに、飛ばされた距離によっては出現までに掛かる時間も伸びるのである。

 故に悲観するのは早いのであるな。

 なにより、俺の作った船である、そう容易くは沈まないのであるな。


「ですね。改めてアオイ家族艦隊ただいま帰還しました。きっちり勝ってきたよ。」


 うむ、それでこそアオイ艦隊長である、休憩広場で少し休息するとよい。


「はい、そうします。」

「珍しくいいこというなぁ、ソウジ艦隊も帰還だ。ソード級、あんなの作ったの何処のバカだよ、宇宙戦艦使ってチャンバラしようって発想からおかしいって。」


 ソード級を振り回しご機嫌で帰還したソウジ提督が、感想を述べた。


 よく帰ったであるな。ソウジ提督もチャンバラとやらを楽しんでいたのではないのか?


「まーな、ああいうアクションものはゲームの定番だし、PVPは嵌りに嵌ったからな。ちょっと相談なんだが、ソード級みたいなやつで、もっとデカい剣はないのか?」

「あー確かにありますね。クレイモア級とかバルムンク級とか、似たようなシリーズ艦だったはずです。1000メートル越えのでっかい剣だったような気がします。」

「ん?艦オタのリーフちゃんにしては、珍しくノリが悪いな。いつもだったらもっと食いつくだろ?」

「分かってませんねー。あれは武器であって、船じゃありません。全然可愛くないですっ。」


 どうやら、ソード級のシリーズ艦は、リーフ艦長の趣味ではないらしい。

 私、興味ありませんとリーフ艦長が言い切った。

 なんとか会話を続けようとするソウジ提督がリーフ艦長と連れ立って休憩広場の方へ歩いていく。


「やぁ珠ちゃん、少し壊れてしまったけど修理お願いできるかな?」


 ネージュ大提督もご苦労であった。


「なに海賊の流儀を通しただけさ。」


 うむ、修理は任せておくとよいのであるな。

 それから、要求のあった駆逐艦級有人武装船の建造は終わっているのである。

 あれは人類勢力に引き渡してもよいのか?


「いや、こちらから渡しておくよ。」


 うむ、了解したのである。

 どうも、戦況がきな臭いのである。クロスボーン級の修理と補給が済み次第、有人船団はアリゼ王国に向けて出航せよ。


「分かったわ。出航時期を早める様に言っておく。」


 うむ、せっかく帰るために準備してきたのである。

 ならば、帰るべきであろう。


「そうだね、また来たくなったら、来てもいいかな?」


 うむ、その時は歓迎するのであるな。


 俺は追加した軽巡コイン4枚と3枚の指揮ワーカーコイン、大型工作艦コインをチャリリーンと投入する。

 残念ながら大ドック艦コインは特型ドック対応らしく、投入出来なかったのである。

 ついでに船艇ドックで掃海艇を20艇、大ドックで大型雑務艇輸送船を建造するのであるな。


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【報告】指揮ワーカーコイン3枚→ビルドワーカー3機を受領しました。

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 ビルドワーカー3機は建設隊として編成して、チャンプに渡すのである。

 少しでも早く特型ドックを作ってもらわねばなるまい。


「わーってるよ、棟梁はドシッと構えてまってなって、おいらがきっちり仕上げてやるからよ。」


 うむ、チャンプに任せるのであるな。


 さて、俺は俺の仕事をするのである。

 修理は駆逐艦と軽巡が先であるな。


 小破状態のハウンド級4隻とバルシェム級1隻、ついでにクロスボーン級海賊戦艦ブランシュ・ネージュ号も同時にやれるのである。

 解析結果によれば、どの艦もナノ・マテリアル装甲の充填と一部破損した部品の交換だけで、済みそうだからだ。

 さらに砲塔や推進器などを破壊されて中破判定を受けたミストラル級軽巡航艦も、修理可能である。

 7隻の修理を終えてから、残りの巡航艦2隻と重巡2隻の修理にかかるのであるな。


 ゆえにシルバー艦長、いくら主張しようとも決定は覆らないのである。


 パシオン、パシオン、パシオンと床に溶けて広がった銀色の液体が、象形文字ぽいものから、立体的なロゴに至るまで、いろいろな文字を作り上げては潰していく。

 その主張はただひとつ、パシオン直せであるか。

 しかし、その前に確認せねばなるまい。


 タマゴ、隼の生産状況はどうなっている?

「いま、203騎、納品、する?」

 まだいいのであるな。やはりシルバー艦長は暫く待機である。

 艦載機の用意が出来ねば、母艦級は無力である。


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【報告】軽巡コイン→コルベット級軽巡航艦2隻を受領しました。

         →コリアンダー級軽巡航艦を受領しました。

         →スピリット級要撃軽巡航艦を受領しました。

【報告】大型工作艦コイン→ブルーメ級大型工作艦を受領しました。

--------------------


 とりあえず軽巡は5隻揃ったのであるな。

 シエル提督とアイン提督、偵察艦隊を率いてどちらに行ってもらうべきか・・・。


「意見具申・・・いいですか?」


 囁くような声でトンボ羽の小妖精シエル提督が、天使フィギアフェザーに抱き着かれたまま寄ってくる。


 シエル提督、迷惑ならば迷惑だとはっきり告げてもいいのだぞ。


「ぶーご主人様ひどい~。」

「いえ・・・・慣れてます。」

 であるか。それで提案とは何か?

「ふたりで・・・行きます。」

 ふたりで、とは?

「説明は自分が引き継ぎましょう。」


 黒服に黒ネクタイ、サングラスで素性を隠した企業戦士アイン提督が、シエル提督の後を引き継ぎ説明する。


「自分たちで話し合った結果、自分が本隊である軽巡艦隊を率い、シエル提督がホッパー級軽巡航艦2隻の艦隊で偵察を行います。それぞれが別ルートを通ることで、より多角的な確度の高い情報収集が可能であると提言いたします。」

 ルル大提督、貴官はどう思う?

 アイン提督とシエル提督の意見具申は判断が難しいのである。

 ふたりの意見は偵察任務の目的からすれば効率がよく理に適っているが、この偵察任務に提督コア2名を派遣する価値があるであろうか?

 さらに言えば、イディナローク星系ならば通常艦で飛べるのであるな。

 あえて長距離跳躍が可能なホッパー級を投入する意味がないのである。


「派遣すればよろしいかと、折角のふたりからの意見具申です。ふたりが提督としてどれぐらいやれるのかを確認しておく意味でも、やらせた方が得策ですわ。」

 う~む、そういう意見もあるか?

 しかし、もう少し判断材料が欲しいところであるな。


--------------------

【報告】サスケ団長が入室の許可を求めています。

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 一瞬、俺は判断に迷ったが、モニターに映る猫耳メイドが指し示す情報あり〼のテロップを見て、彼の入室を許可する。


「ニン、ならば拙者の掴んだ情報を追加するのでござる、ニンニン。」


 派手な煙と紙吹雪を突き破り、似非忍者サスケ団長が表れる。

 かっこいい決めポーズをしてみせる彼の行動をスルーして、俺は話の続きを促した。


「うふふ、もし、つまらない情報でしたら、どうなるか分かっていますわね。」


 ルル大提督が獲物を見つけたとばかりに、ニッコリと笑った。


 いかん、ルル大提督はやる気である、サスケ団長逃げるのならば今のうちであるぞ。


「心配無用にござる。火中に飛び込む覚悟もない輩に、はるかなエンターテイメントの頂を目指す資格はないのでござる、ニンニン。」


 サスケ団長が腕を組み、仁王立ちで言い切った。


「で、早く掴んだ情報を言いなさい。」


 ルル大提督が続きを促す。

 俺は彼女の手がそっとコンソールに触れているのを知っている。


「まず、簡潔に申し上げるでござる。ネーエルン公国の主星イディナロークがあるイディナローク星系はまだ無事にござる。

 しかし、イディナローク星系から30光年以内にある5つの星系の内、2つが陥落、アリゼ連邦はこのふたつの星系奪回を諦め、最前線はイディナローク星系外縁部に到達したでござる。」


 人類側勢力からもたらされた星系図に、新たに陥落を示す☓マークがふたつつく。


 うーむ、かなり押されているようであるな。

 サスケ団長、グレイトパール星系はともかくとして、残るふたつの星系の状況は掴めているのであるか?


「拙者が掴んだ情報によれば、それぞれ有力な民間軍事会社の支援を受ける事で、防衛艦隊は持ち直したようでござる。」


 ならば、Evilの戦力についてはどうか?


「それについては、先日会談を行った人類勢力側からもたらされた情報以上のものは、確認できなかったでござる。」

「逆に言えば、彼らのもたらした情報の裏どりが出来たという事です。少なくとも情報の信頼性は高いと見るべきでしょう。」


 サスケ団長の言葉を引き継ぎ、企業戦士アイン提督が発言を締めくくる。


「貴方、偵察艦隊を派遣する前に、まず何を、何処まで調べさせるかを決めるべきではないかしら?」

 であるな。

 幸いにして、サスケ団長が事前情報を調べてくれたおかげで、大体の状況は掴めたのである。これより我がグレイパール泊地は、本格的軍事介入に向けて準備行動に入るものとする。

 調べるべき情報は、艦隊派遣に先駆けて、橋頭保を何処に構えるかである。

 主戦場に近すぎず、かつ遠すぎない場所がよい。

 またドック艦や補給艦、工場艦といった支援艦隊が展開する以上、防衛拠点の構築も必要となる。

 補給品の生産と輸送は問題なく行えるだろうが、安全な宙域を確保せねば、艦隊展開後の継戦維持に支障がでるであろう。

 その点を考慮して、偵察箇所を決めねばなるまい。


「その前に、どんだけの戦力を投入するつもりだ?それによっても話が変わってくるんじゃないのか?」


 休憩広場でイチゴのショートケーキをつついていたソウジ提督が、声を上げる。


 当然、主力艦隊の投入は必須であろう。

 先の戦闘で大きな損害を受けたとはいえ、戦艦群はまだ戦えるのであるな。

 ヴィオラ提督には頑張ってもらわねばなるまい。

 また、本格的参戦は主力艦隊の修理完了後となるであろう。


「なるほど、ならそれまでは小規模戦力による遊撃戦だな。腕が鳴るぜ。」


 もう自分が出る気でいるソウジ提督が笑って見せた。


「問題は主力艦として投入出来るのは、ミスリル級戦艦1隻と複数の重巡級くらいですわ。巡航艦以下の戦力もさほど余裕があるわけではありませんし・・・・。」


 日頃から哨戒艦隊のローテーションに苦慮するルル大提督が、泊地の抱える実情を語り―――。


「ご歓談中失礼します。旦那様並びに皆様、M73星系で現在偵察活動中のノービス級偵察艦をお忘れではありませんか?

 発見されたEvilの巣には、主だった障害も発見できていないようですから、今のうちに潰しておくべきではないですか?」

―――横から完璧執事ウルがそう指摘した。


 うむ、そちらもあったのであるな。

 ルル大提督。


「ええ、ミスリル級戦艦に2個艦隊をつけて潰しましょう。敵は潰せるときに潰すべきですわ。」


 うむ、シエル提督はホッパー級を率いて、そちらの偵察艦と合流せよ。


「わかり・・ました。」


 ソウジ提督はミスリル級戦艦を含む主力艦隊を率いて、Evilの巣を殲滅せよ。


「了解、戦艦使えるなら乗り換えるぜ、いいか?」


 了解である。両提督は準備完了しだい速やかに出撃せよ。

 また、アイン提督は軽巡5隻からなる偵察艦隊を率いて、イディナローク星系を偵察、橋頭保として使える候補地を探索せよ。


「任務、了解です。ではファイネルⅡ級高速軽巡航艦を使わせてもらいます。」


 うむ、貴官の働きに期待するのであるな。


「お任せください。」


--------------------

【指令】M73星系、Evilの巣を殲滅せよ。が発令されました。

【退出】シエル提督が退出しました。

【退出】ソウジ提督が退出しました。

【退出】アイン提督が退出しました。

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 アイン提督は旗艦をファイネルⅡ級高速軽巡航艦とし、随伴艦として軽巡4隻。。

 シエル提督はホッパー級軽巡航艦2隻。

 ソウジ提督はミスリル級戦艦を旗艦として、他の随伴艦をどうするかであるな。


 俺は戦力予備から戦闘艦を抽出して、出撃艦隊の編成にかかる。


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M73星系、Evilの巣駆除艦隊

先行偵察艦隊(シエル偵察艦隊)

ホッパー級軽巡航艦2隻

ノービス級偵察艦3隻(現地合流)


主力艦隊(ソウジ主力艦隊)

ミスリル級戦艦(旗艦)

スフェール級高速巡航艦

ソード級巡航艦

バルシェム級駆逐艦2隻


随伴艦隊(ソウジ指揮艦隊)

アインホルン級重巡航艦

ゾロア級駆逐艦3隻

コーラル級巡航母艦


主星イディナローク星系偵察艦隊(アイン偵察艦隊)

ファイネルⅡ級高速軽巡航艦(旗艦)

コリアンダー級軽巡航艦2隻

コルベット級軽巡航艦2隻

--------------------


 とりあえず、これでよかろう。

 ついでに第3次水資源輸送船団の編成も変更しておくのであるな。




もう一話、珠ちゃんの話が続いてから、人類サイドの話か、チェリー艦隊長の話になるかな。

予想より出撃計画が長引いています。



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