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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
4章 絶望を蹴散らす者たち
120/140

シサク重戦闘母艦現る1

遅れましたが、新章開始します。

この章からアリゼ連邦の攻防戦に深く関わっていくことになります。

楽しんでいただけると幸いです。

 グレイトパール泊地より、3800光年彼方―――。


 空間震に続き巨大な重力震を撒き散らしながら通常空間に復帰した試作重戦闘母艦が、所属不明艦隊から先制攻撃を受けていた。

 これから決戦に赴く心構えが出来ておらず、もしチェリー艦隊長だけで行動していたならば、大きな損害を受けていたかもしれない。


 しかし、この艦を動かすのは理論より感性で動くプラム艦長である。

 彼女は瞬時の判断力と危険回避力において、グレイトパール泊地でもトップクラスの能力を誇っていた。


 出現直後に到達したレーザー照射こそ避け切れなかったものの、受けた損害はナノマテリアル装甲の消耗のみでピタリと抑え、続く実体弾を―――。


「艦隊防衛射撃っやらせないっ!」


 ―――40基160門の4連装レーザー高角砲が空間ごと薙ぎ払い、続く小型プラズマ砲弾が、生き残った大物を呑み込むように蹴散らしていく。


「プラム、超空間通信基がダウンしてる。再起動・・・失敗。宙域レーダーもおかしい。目標がいない。それに味方も・・・。」

「そんなの後々、撃たれた以上は撃ち返すっ。」


 チェリー艦隊長の狼狽を完全放置して、プラム艦長が獲物を見定める。


 宙域レーダーが示す敵艦隊群―――。

 正面1時方向、突撃軌道にある所属不明小型艦14隻―――。

 正面11時方向、同じく突撃軌道にある所属不明小型艦11隻―――。

 3時方向上方より、交差軌道にある所属不明中型艦8隻―――。

 正面12時方向より、所属不明大型艦3―――。


「チェリー、照合お願いっ!」


 仕事を果たすプラム艦長に触発されたのか、慌てていたチェリー艦隊長も落ち着きを取り戻し―――。


「データ照合、プラム、所属不明艦隊はすべてEvil艦、遠慮なくやっちゃって。」


―――宙域レーダーが表示するすべての所属不明艦が敵を示す赤マークに変わった。


 突撃軌道上の2群、Evil突撃艦級8隻、Evil駆逐艦級14隻、Evil軽巡級3隻―――。

 上方、交差軌道上の1群、Evil重巡級3隻、Evil巡航艦級5隻―――。

 そして、真正面から支援砲撃を開始しているEvil戦艦級3隻―――。


 そのすべてが敵だった。

 この戦闘宙域に味方はいない―――。


「歓迎、歓迎、大歓迎っと。」


 プラム艦長が押し寄せる敵群相手に不敵に笑う。

 Evil相手に手加減はいらない。

 全力全開でぶん回し、ことごとく宇宙の塵に変えるだけだ。


 彼女の戦意に応える様に、シサク重戦闘母艦の主、副、合わせて6基の動力炉が戦闘出力まで高まり、莫大な電力を供給し始める。


「妾たちの出番はあるのかえ?」

「ムツハ、頑張ります。」

「拙者もひと暴れ、所望いたす。」

「つーわけだ、出撃許可待ってるぜ。」


 艦に乗り合わせている4名の兵器コア達から出撃要請が出されるが―――。


「了解。えーと。プラム。」


―――チェリー艦隊長は返事を保留して、プラム艦長に振った。


「ちょっと荒っぽくいくけど、待っててねっ、最高の舞台に放り込んであげる!」


 プラム艦長がためらうことなく進撃を開始する。

 暖機運転は終わったとばかりに、6基のプラズマ推進器を出力を叩き上げ、正面から迫る小型艦2群の間を目指して突き進む。


「艦首集中障壁展開準備。」


 シュミレータを使った疑似演習で、もう何度となく突撃戦術に付きあってきたチェリー艦隊長が、何も言わずに準備する。


 集中障壁とは、有人船が広く使用している防御装置である。

 展開中は此方からもレーザー等の攻撃を阻害してしまうのだが、オン・オフをタイミングよく切り替えることで、この欠点を抑えつけて人類側は防御兵器として用いていた。

 そして、泊地同盟はナノマテリアル装甲と電磁障壁という防御機構を持つため、一般的には装備しないのであるが、珠ちゃんはあえて装備することで防御力を底上げしていた。

 すべては、母艦という脆弱な艦種を傍若無人な突撃娘から守るためである。

 しかし上がった防御力と引き換えに、消費電力量も跳ね上がっており、マテリアル装甲と電磁障壁、さらにレーザー兵器群に用いる電力量の総量は同クラスの重戦艦を軽く超えていた。

 つまり、重戦闘母艦の保有エネルギー量がガスガス減っていくという弱点を抱えていた。


「チェリー、隼対艦装備で出せる?」

「20騎いける?タイミングは?」

「正面2群を抜けたら、15秒直進する出せるだけだしてっ。」


 プラム艦長が短くタイミングを伝える。

 チェリー艦隊長ならそれで合わせてくれるという信頼があるからだ。


「まかせて、うまくやる。」


 その言葉だけでプラム艦長には充分だった。


 連装レーザー速射砲4基8門と4連装レーザー高角砲40基160門のみで、プラム艦長が迫る小型艦の群れに対応する。


 25隻対1隻―――。


 超空間通信器並びに超空間探信器が機能不全に陥っており、珠ちゃんの情報支援も期待できない。

 しかし、プラム艦長の最も得意とする単艦突撃戦術において、情報支援はあまり必要ではなく、特に彼女の場合は自艦の捉えた情報を重視していた。

 自艦の観測機器を通じて、彼女は宇宙を感じているからだ。


 撃って、撃って、撃って、撃つ。

 4基の連装レーザー速射砲が連続でレーザー照射を敢行する。

 迫りくる敵艦隊を薙ぎ払うように撃ちまくった。


 威力を抑え再発射までの時間を短縮した速射砲は、同クラス相手には火力不足となるものの、格下相手には脅威となる。

 射撃間隔が短い分数多く撃てる為、弱いもの苛めには最適な装備であり、威力が弱体化すると言っても、元々は重戦艦の主砲口径と同サイズのレーザー砲である。

 弱体化しても、その威力は戦艦の主砲と変わらなかった。

 景気よくばら撒かれる戦艦の主砲が、駆逐艦にあたったらどうなるかは、語るまでもないだろう。


 そして、交戦中の味方の下へ向かっていたEvil艦隊にとって、想定外の接敵となったこの戦いこそ悪夢である。

 ばら撒かれるレーザー光をかわし切れず、レーザー照射の直撃か至近距離を掠めたのだろう、膨大な熱量に晒されて障壁が砕け散り、一瞬で沸騰した皮膚装甲が爆発を起こし、突撃軌道を逸れていく。

 支援砲撃に後押しされたEvil小型艦群が、距離を詰めるにしたがって両者の命中率は跳ね上がり、一方的に破壊されるEvil小型艦の数が増えていく。


 それでも両者は譲らない。

 最後まで味方の支援砲撃を信じてEvil小型艦2群が正面から突撃した結果、両者が交差した時には25隻からなるEvil小型艦群は撃沈・撃破合わせて16隻が落伍していた。

 対して、シサク重戦闘母艦の損害は皆無である。

 両者の力量云々よりも純粋に、隔絶した性能差がもたらした結果であった。


「チェリーっ!」

「電磁カタパルト展開、隼隊連続出撃っ。」


 プラム艦長の合図を待っていたチェリー艦隊長が、上部大型電磁カタパルト2基を展開する。

 そして、チェリー艦隊長の指揮のもと安全距離を無視した連続発艦は先発組が次々と緊急回避行動をとることで、後続との接触事故をさけて同時に隊列を整えていく。

 片舷辺り2秒につき1騎、15秒で7騎づつを発艦させ、合計14騎が母艦を離れて上昇していった。


「チェリー、後続の足止めヨロシクっ!」

「プラムもがんばっ!」


 プラム艦長が後方を無視して、前方に居座る戦艦群に向かっていく。


「隼隊、全騎攻撃開始。」


 その後方、慌てて追撃に掛かる敵残存艦隊に、上昇から反転降下を開始した隼隊14騎が襲い掛かった。

 ためらいなくすべての隼が、戦闘機形態で抱えていた対艦ミサイル各2基、合計28基を撃ち放つ。

 ほぼ直上から降り注ぐ対艦ミサイルの槍に対して、残存する9隻のEvil駆逐艦級が、回避行動と防衛射撃を開始する一方で、役目を終えた隼隊は早々に反転して母艦との合流地点に向かって翼を翻した。


 隼隊の攪乱攻撃により、その対応に秒単位の貴重な時間を消費させられたEvil残存艦隊は追撃を諦め、後方から接近する重巡艦隊との合流を図る。

 その一方、距離を引き離すのに成功したシサク重戦闘母艦はEvil戦艦級3隻との交戦距離に突入していく。

 支援攻撃に徹していた時とは違い、射線を遮る味方のいない状況ならば、戦艦はその攻撃力を最大限に発揮できる。

 それはEvil戦艦級も変わらない。

 そして、プラム艦長も戦術を変えない。


「プラム、砲撃パターンBで、」

「了解、全単装レーザー砲、安全装置解除、射撃位置へ。」


 チェリー艦隊長の指示を受けて、プラム艦長が武装設定を変更する。

 主力として使っていた4基8門の連装レーザー速射砲に廻す電力を大胆にカットして、8枚の花びら型スカート部分の保護カバーを開き、8基の単装レーザー砲を起動する。

 砲撃パターンB―――。

 それはチェリーとプラムが幾多の疑似演習と通して培った、同級或いは主力艦級相手の砲撃戦を前提に置いた戦術である。


 此処に3隻の戦艦対シサク重戦闘母艦による熾烈な砲撃戦が始まろうとしていた。




本編でも何度も仕様変更された重戦闘母艦ですが、こんな感じの性能となっております。


シサク1500メートル重戦闘母艦―――。

全体の艦型は切り花のようなイメージの重戦闘母艦である。

主砲 

16メートル口径連装レーザー速射砲 4基8門(上部1~2、下部4~5番砲塔)

24メートル口径3連装重レーザー砲 2基6門(上部3、下部6番砲塔)

16メートル口径単装レーザー砲内蔵型 8基(各1基づつ花びら型装甲スカート配置)

副砲

4連装レーザー高角砲40基160門 (各20基づつ艦両側面に配備)

対艦プラズマキャノン発射基8基(各4基づつ艦両側面に配置)

8メートル口径単装レーザー速射砲6基(後部砲台)

防衛砲座

防衛レーザー砲台60基(艦首全周・三連円環配置)

小型プラズマ弾発射基20基(艦中央上下に各10基づつ配置)

防衛レーザー砲台16基(各2基づつ花びら型装甲スカート配置)

艦載機60機(1~2番、艦後方上部格納庫に各30機)

可変戦騎【隼】60騎

重戦騎70騎(3~4番、艦後方下部格納庫に各15機、後方大型格納庫に40騎)

第1マルス重戦騎中隊(マルス指揮部隊)

            紋章重戦騎【暁】マルス専用騎 

            紋章重戦騎【暁】決戦仕様4騎 

            紋章重戦騎【雷】砲撃戦仕様9騎 

            紋章重戦騎【雷】アポロ専用騎

第5ガーベラ重戦騎隊  重戦騎【シルバーソード】ガーベラ専用騎

            重戦騎【シルバーソード】4騎 

第6ムツハ重機動戦騎隊 重機動戦騎【クリムゾン・タージェ】ムツハ専用機

            重機動戦騎【クリムゾン・タージェ】4騎

45騎未配備―――。


大型電磁カタパルト4基(斜面4面配置)

主プラズマ推進器6基(各1基づつ後部花びら型装甲スカートに配備)

主動力炉3基、副動力炉3基配置

局所集中防御障壁発生器7基(各1基づづ艦首と後部花びら型装甲スカートに配備)

全周防御障壁発生器2基


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