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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
災禍の討滅者編
114/140

グルグル案件ふたたび

ごめんなさい。また遅れました。

なかなか名前が決まらないのですよ。

稚拙な書き物を待っていて下さる読者に感謝を。


 提督コアの赤いクリスタルと施設コアの青いクリスタル、そして隊長コアふたり分の黄色いクリスタルがが俺の前に浮かんでいる。

 俺の前に4つのクリスタルが浮かんでいる。

 そう、4つのグルグル案件が浮かんでいるのである。

 グルグル案件である。

 これはグルグル案件であるぞ、即座に支援を要請せねばなるまい。


「貴方、早く契約を、お願いしますわ。」


 ルル大提督が空気も読まず、早くしましょうと催促するが、俺はなかなか決断できない。

 この契約は嫌な予感がするのである。

 いや嫌な予感しかしないのである。


「往生際が悪いですわよ。さっさと諦めて契約しなさい。」

「旦那様、ウェスタお嬢様が率いる救援艦隊は無事に出航なさいました。ご用命とあればこの完璧執事ウルがお手伝いいたします。」

「フェザーもいるよー、任せて、任せて~♪」

「棟梁、男だったらビシッと行けよ、ビシッと、ここは男気を魅せる時だぜぃっ。」

『大将、丁度暇してるじゃん。』

『旦那様、わたくしも此処におりますわ。』

「珠ちゃん、ガンバ。」


 おお、皆の声援に感謝であるな。いまならグルグル案件も怖くないのである。

 俺は皆に勇気づけられて、契約するという地獄の窯を開いてしまった。

 俺が手で触り、契約を終えた4つのクリスタルが、光を放ちつつ形を変えていく。

 赤い提督コアのクリスタルがトンボ羽の小妖精になり、その隣に浮かぶ青い施設コアのクリスタルが木槌を背負ったファンシーなウサギのぬいぐるみになり、床に向かって落下する。

 黄色い隊長コアのクリスタルのふたつは、それぞれ人馬騎士と悪魔っ娘になった。

 そして―――。


--------------------

【成功】艦隊コア搭載艦を10隻配備せよ。を達成しました。(165/200)

 報酬として、功績点50点、提督Sコインを受領しました。

【依頼】艦隊コア搭載艦を15隻配備せよ。が発令されました。(10/15)

--------------------


 ふ、増えたのである。

 グルグル案件が仲間を呼んだのである。


「あら、いいじゃないですか。この際ですから、纏めてやってしまいましょう。」


 ルル大提督が、無常にもさらにチャリンしろと要求してくる。

 俺は皆の支援に期待しつつ、提督Sコインを追加でチャリンした。

 そして、現れた赤いクリスタルとも契約する。

 赤い提督コアのクリスタルは黒服で固めた企業戦士になった。

 

 これで提督2名、施設コア1名、隊長2名の計5名である。


 ピンと伸びた4枚のトンボ翅を背中に生やした小妖精が落ち着きなく宙を舞い、黒服とサングラスで個人の特徴を消した企業戦士が気をつけの体勢で微動だにしない。

 その足元では、木槌を持ったファンシーなうさぎのぬいぐるみが、女の子座りで可愛さアピールを振りまいている。

 集団から少し離れて、西洋甲冑を纏った人馬騎士は我関せずで、値踏みするような視線を周りに送り、その視線に気づいた蝙蝠の羽と頭を飾る2本の捩じれた角が特徴の悪魔っ娘が、たわわな胸を持ち上げるようなセクシーボーズで騎士に流し目を送り、誘惑している。


「・・・・貴方、とても個性的なメンバーですわね。」


 うむ、ルル大提督、言いたいことはわかるが、今は全力で支援を要請するのであるな。

 これは俺の想定を遥かに上回っているのである。


「理解してますわ、本当に奇縁ばかり呼び込みますわね。さて、」


 ルル大提督が、一番手は誰が行くと周りを見渡す。


「はいはーい、任せて任せて~♪」


 立候補したのはフェザーだった。

 ぶよぶよと蠢く銀色の液体シルバー艦長を、クッション代わりにしてご機嫌な様子で寝そべっていた天使フィギアのフェザーが飛び上がり―――。


「タッチ、アンド、フレンド~♪」


―――好奇心の赴くまま、ふわふわ無防備に飛んでいた小妖精に抱き着いた。


「えへへ、フェザーだよ~♪君の名は~?」

「シエル・・。」

「シエルちゃんだ~、今日からお友達になろ~♪」


 フェザーがシエルと名乗った小妖精を連れて、明後日の方向に飛んで行き―――。


「あ、」


―――ゴンッと見えない壁に衝突して落ちた。


 フェザー、宇宙は無限に見えても、此処は有限であるな。

 スピードには注意である。


 俺は、ふたりの介護をウルに命じた。


「お嬢様方のお世話ならば、この完璧執事たるウルにお任せください。」


 うむ、委細任せるのであるな。


「コードネームはアインです。アインとお呼びください。」


 そう語ったのは黒服の企業戦士だった。

 彼は気をつけの体勢から肩幅に足を広げる休めの体勢になり、こちらの返答を待っている。

 俺は了承の代わりに彼の名前をアインと定めた。


「OK、ボス。これからよろしくお願いします。」


 うむ、しばし待機し、現状の把握に努めよ。


「OK、ボス。」


 どうやら、了解という意味で使っているようであるな。

 これから宜しく頼むのである。


 次は誰にするべきか、そう考えていた俺が行動を起こす前に―――。


『ビッチにしましょう。』


―――モニターに映る要塞令嬢が、悪魔っ娘を指さして命名した。


「ちょっと、ちょっとーこ~んなセクシーお姉さんに向かってビッチはないんじゃない、ビッチは!」

『ならサキュバスでどうじゃん。』

「それ、種族名でしょっ、個人につける名前じゃないし!」

「淫乱。」


 ぼそりと、雰囲気を読んだ暴君タマゴが告げる。


「お断りっ!」


 タマゴをビシっと指さして悪魔っ娘が抗議するが、タマゴがフイっと軽く無視して周回軌道に戻る。


「あ、こら、待ちなさいよ。喧嘩なら買うわよっ!」

「ふ」

「た、卵に見下された・・・。」


 暴君タマゴに相手にされなかった悪魔っ娘が、膝から崩れ落ちる。


「あなたたち、気持ちはわかりますが、きちんと考えなさい。」

「そうよそうよ、さすがは大提督、年長者・・・は分かってるー♪」

「・・・・貴方、尻軽女でお願いしますわ。」


 ニコリと笑ってルル大提督が名前を決める。


「ちょっ、ちょっと待ちさないよー!いくらなんでも横暴すぎでしょーっ!」

「お黙りなさい!」

「ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ―――っ!」


 ルル大提督。俺もさすがに再検討を要請するのであるな。


「あ、な、た。」


 何と言われても却下である。名前を決める以上はもっと責任をもって決めてもらいたい。

 む・・・パピオンであるか?


「パピオン?」


 誰の意見なのか分からなかったらしいルル大提督が下を見下ろし―――。


[パピオン(⋈◍>◡<◍)。✧♡]


―――床に広がり、顔文字まで使って主張している液体生命体がいた。


「それだー、それでお願いします。パピオン、パピオンがいいです。パピオンでお願いしますっ!」


 必死であるな。

 発言権の強い女性陣を敵に回している状況では理解できる行動であるな。

 俺は悪魔っ娘の名前をパピオンで決定した。


「パピオンでーす、ビッチでもサキュバスでも淫乱でも尻軽女でもないパピオンでーす。みんなヨ・ロ・シ・クっ。」


 わざとか無自覚なのかは分からないが、パピオン隊長が投げキッスとウインクひとつで挑発している。


 さて、俺は人馬騎士とウサギのぬいぐるみ、どちらを担当するべきか―――。

 おれが決められない内に事態は進行する。


「人馬の騎士さん、名乗れる名前はあるかしら、それとも名づけを求めるのかしら?」


 ルル大提督、卑怯であるっ、それはフライリングであるぞっ!


「あらあら考えすぎる貴方の負けですわ。残ったウサギの名前を考えてくださいませ。」


 ルル大提督が機嫌良さげに笑っている。


「そうですね、使えるべき方が変わる以上は、新たなる名を頂きたい。」


 人馬騎士が、男性とは思えない高い声でルル大提督の質問に答えた。


「そう、ならばディアナと名乗りなさい。ようこそ草原に生き、風と共に駆ける誇り高き疾風の騎士ディアナ、歓迎しますわ。」


 ルル大提督が差し出した手を―――。


「こちらこそ、宇宙に駆けるべき草原はなくとも、星と恒星の光の下を、あらたなる同胞達と共に駆け抜けましょう。」


―――ディアナ隊長が握りしめた。


 うむ、此処までで終われば感動的な場面ではあるが、うさぎのぬいぐるみが残っているのであるな。

 しかもこのぬいぐるみ、自分の番だと分かったらしく、わざわざ立ち上がってウォーミングアップとばかりに木槌で素振りを始めているのである。

 これはあれであるな、察しの悪い俺でも分かる―――。

 気に入らなければ、ぶっ飛ばすという意思表明であろう。

 うむ、理解したのである。

 とてもよく理解できたのである。

 皆の者、過去最悪レベルのグルグル案件である。

 支援を、支援を要請するのであるぞっ!


「頑張って、貴方、貴方ならばきっと出来るはずですわ。」


 ルル大提督、よく見るのである、奴はやる気であるぞ。

 失敗すれば襲い掛かってくるつもりである。


「大丈夫ですわ。貴方こそよく見てください。あんなファンシー風のぬいぐるみが振るう木槌が痛いわけないでしょう。せいぜいはったりにしか使えませんわ。」


 先入観は捨てるべきである。

 常に最悪に備えて準備は整えるべきである。


「なら、こう考えましょう。一発勝負ですわ。一撃で終わらせればいいのです。」


 なんとか逃れようとする俺を、ルル大提督が優しく諭す。

 言われてみれば、確かにそうである。

 これをグルグル案件と思わずに、思考を巡らしふさわしき名前を与えるのである。


 かわいいうさぎ―――。


 そう打ち込んだ途端、木槌を振りかぶった兎が飛び上がった。

 

 なぜであるかっ!




さて問題です。

ファンシー風の木槌を持った可愛らしいうさぎのぬいぐるみに名前を付けてください。

ただし、気に入らないと木槌でぶん殴られます。

ちなみにノーヒント&正解は相手が気に入るかどうかであり、拒否権はありません。

これが今回のグルグル案件です。

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