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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
災禍の討滅者編
112/140

復讐女王の罠6

予定を超えてお待たせしました。

戦闘終盤を投稿します。

待っていてくれて、感謝です。

楽しんで頂ければ幸いです。

誤字修正とクエストの追加をしました。10/3

 重力破砕砲―――。

 それは高重力を発生させる球体を打ち出す重力投射砲と違い、禁止兵器とされている空間破砕砲と同じ、有効射程範囲内にある指定空間座標に直接超重力点を発生させ、作用範囲内に存在するありとあらゆる物体を中心座標点に引き寄せ、超重力をもって圧壊させる戦略兵器である。


 この攻撃からの防御は、ブラックホール近郊での活動を想定した優秀な対重力機構でも備えていないかぎり至難であるが、超重力点を発生可能な距離がせいぜい20万キロであり、発生させた超重力点を維持するために、常に莫大なエネルギーを投入し続ける必要があるなど使用上の制約も多い。


 なにより、ついうっかり使用した艦まで作用範囲内に踏み込み、敵艦諸共に圧壊するという事故も起こりやすく、その使用には細心の注意が必要な浪漫兵器でもあった。


 重力破砕砲によって、発生した超重力の檻に捕らわれた女王種はもう何処にも逃げられない。

 肉体の構造的にも宇宙に適応していた女王種は、高重力に耐えられない脆弱な部位が多く、高重力地帯での活動を想定していなかった。


 そう、彼女は重力兵器との相性が悪すぎたのだ。


 ブラックホールに吸い込まれるように、周辺のデブリと一緒に超重力中心点に引きずり込まれた女王種が、集められたデブリ諸共に押しつぶされて、小さな球体に纏められていく。


 女王種のあげた声なき悲鳴が―――。

 終わりを見届けられなかった悲嘆が―――。

 荒れ狂い誰も観測出来なくなった超空間に広がり、消えていく。


 その悲鳴が途切れた時―――。

 宙域に残されたものは、直径100メートルにも満たない球形のデブリだけだった。


 しかし、女王が倒れても女王艦隊は戦闘をやめなかった。

 デカ海栗大戦艦級に突撃する挺身攻撃を実行したEvil高速駆逐艦隊群は1隻の例外もなくその任務を果たして玉砕し、女王艦隊α群は全滅する。


 女王種とその護衛であった女王艦隊α群が全滅した以上、残されたデカ海栗大戦艦級と取り巻きの海栗型巡航艦級に、グレイトパール泊地残存艦隊の攻撃が集中することになり―――。


 逃走ルートを遮断された海栗艦隊β群が1隻また1隻と沈んでいく。

 互いのレーザー光が交差し、棘ミサイルが飛来し、プラズマ弾や対艦ミサイルが乱れ飛ぶ戦闘宙域で、超空間通信網を喪失して、艦隊連携が取れなくなったグレイトパール泊地残存艦隊と海栗艦隊β群との戦いは、終焉を迎えつつあった。


「シャルラハロート後退、超重粒子砲、砲撃準備。」

 この戦いに終止符をうつべく、ヴィオラ提督は切り札を切る覚悟を決めた。

 彼女が操る扶桑級重戦艦を筆頭に、残存する戦艦群がレーザー回線からの命令により、シャルラハロート級重戦艦を護るように艦隊陣形を変更する。


 そして命令によって艦隊後方に下がったシャルラハロート級重戦艦が、艦首をふたつに分割して二股に開き、隠されていた大型砲の砲身を露出させた。

 それはシャルラハロート級重戦艦という戦闘艦が誇る決戦兵器―――。


「バレル展開、砲撃誘導輪1番~4番形成。」


 定められた行程を消化する彼女の命令は続く。

 シャルラハロート級の艦首、二股に分かれた谷間に、露出した砲身が引き延ばされて挿入される。

 同時にふたつの艦首の谷間に4つの電磁誘導輪が形成される。


 周囲から飛来する棘と迎撃ミサイルがぶつかり合い、防衛戦を続けていたホワイトパール級戦艦がレーザーの直撃を受けて、右舷の構造物を纏めて抉られるが、その程度では戦艦は沈まない。

 ましてや、防御力を重視して艦隊設計をされているホワイトパール級戦艦が、この程度で沈むはずがない。

 戦艦という巨大な遮蔽物に護られたシャルラハロート級が形成した、2重円構造を持つ4つの電磁誘導輪、そのもっとも砲身に近い輪と砲身の先端が接続する。


「バレル形成完了。熱核融合炉封入筒、装填、臨界点突破まで10カウント。」

 熱核融合炉を包む円筒内で、制御棒を抜かれた熱核融合炉が臨界点に向って、出力を増大させていく。


 ヴィオラ無敵艦隊が進む。

 ホワイトパール級戦艦が薙ぎ払いレーザーの通過によって焼失したアンチレーザーミストを再展開する。

 レーザーの直撃を受け艦を包むほどの焼失爆発によって、壊されて散っていくナノマテリアル装甲と破壊されて強制廃棄された構造体が剥がれ落ちていく。

 爆発もデブリも後方に置き去りにしてヴィオラ無敵艦隊が進む。


「砲撃位置、よし、効果範囲設定、よし、射角よし、照準よし、最終照準補正よし、効果範囲内の味方艦離脱完了。砲撃準備よし。」

 

 いくつもの行程を経て起動するシャルラハロート級重戦艦の戦略兵器。

 その最終行程が終了し―――。


「融合炉臨界突破を確認。閉鎖弁解放、起爆。」


 ついに薬室に装填した円筒内で熱核融合炉が臨界暴走を始める。

 融合炉内部で発生、増殖する重粒子を融合炉外殻を爆破して、一気に爆発させる。

 その爆発のエネルギーと一緒に、円筒の閉鎖弁を開いて一定方向に解放、展開した砲身に沿って破壊の奔流は進み―――。


「焼き尽くせ、フランメっ!」


―――4つの電磁誘導輪を破壊の奔流が通過する。

 二重円の輪によって、無秩序のエネルギーが絞られ集束し、指定された効果範囲を焼き尽くす青白い灼熱の奔流となって海栗大戦艦を呑み込んだ。



--------------------

【成功】水資源を補充せよ。が発令されました。(163/200)

報酬として、功績点50点、小型輸送船コインを受領しました。


【成功】2隻以上の戦艦を含む5隻からなる打撃艦隊を編成せよ。を達成しました。(164/200)

報酬として、功績点50点、戦艦コインを受領しました。


【依頼】艦隊コア搭載戦艦を旗艦とした2隻以上の戦艦を含む独立打撃艦隊を編成せよ。が発令されました。


【依頼】6隻以上の戦艦を含む15隻からなる大打撃艦隊を編成せよ。が発令されました。


【依頼】5隻の戦艦からなる戦列艦隊を編成せよ。が発令されました。

--------------------


「貴方、女王種討伐艦隊との超空間接続、いまだ回復しませんわ。断絶状態では臨時砲撃艦隊による支援砲撃も行えません。」


 ルル大提督が、断絶状態を示す[NO SIGNAL]が表示されたモニター群やノイズで乱れたり、映像そのものが壊れている無数のモニター群を睨みつける。

 その表情はいつになく厳しく、苛立っている。

 モニターの不調で分かるその範囲は、星系外縁部から戦闘宙域となっている星系外宙域に渡る広い宙域で、超空間通信網に接続断絶か重度の接続障害が発生していた。

 俺も復旧に努めているのだが、成果は芳しくないのであるな。

 これは機器の故障ではないのである。


 ルル大提督、貴官は少し落ち着くべきである。

 現状、超空間通信網に重度の障害が発生しているのである。

 原因は間違いなく女王種の変貌であろうが、いまはやれることをやるべきである。


 俺はリーフ艦長から送られてきていた映像データを呼び出す。

 俺が行った情報分析の結果、超空間通信網に極度の障害を発生させたのは間違いなくこの個体である。

 超空間通信網にここまで深刻な障害を発生させるとは、Evilの進化は時に想定をこえるのであるな。


「貴方は落ち着きすぎですわ。心配ではありませんの?」


 ルル大提督、俺は泊地の主として、皆を信じて待つのみである。

 その上で、いまやれることをやるのであるな。

 貴官はどうする?


「分かりました。貴方の言葉に従いますわ。ウル、コーヒーをひとつお願いしますわ。」

「はい、奥様、ただいまお持ちいたします。」


 完璧執事ウルが、ルル大提督のオーダーに素早く対応する。


「メロンソーダフロートもよろしく~♪」

「はい、フェザーお嬢様。アイス特盛でご用意します。」

「お願いしまーす♪」


 やっと機嫌を直した天使フィギアフェザーが、滞っていた仕事を回し始め、彼女の為に設けられたテーブルの下では、黙々と喋る工具箱チャンプが中断していた特型ドックの建造を再開した。

 施設コアの4人も仲間を心配しているが、それぞれが、それぞれのやるべき役目をはたそうとしている。


 それは俺とて同じである。

 ルル大提督、救援艦隊を派遣するべきであろうか?

 ハウンド級高速要撃駆逐艦10隻が間もなく完成予定である。

 これを使っての救出作戦は可能であろうか?


「難しいですわね。現在あの戦闘宙域では、極度の通信障害が発生していますわ。船はともかく艦隊コアがいなければ、まともな艦隊連携など不可能ですし、空間安定度の極端に低下した空間に船を送り込むのは、自滅させるだけです。」


 俺の提案を、ルル大提督が無理だと首を横に振って否定した。


 であるか、ならばドック艦を含む曳航艦隊の準備をしておくのである。

 戦闘の結果、多くの船が傷つき、轟沈しているのである。

 すべて回収せねばなるまい。


「それも必要でしょうが、艦隊指揮をとれる艦隊コアが必要ですわ。」


 ルル大提督が不穏な言葉を口にする。


 ルル大提督、いまだ戦闘継続中であるな。

 グルグル案件は戦闘後の約束である、約束違反である。

 話が違うのであるな。


「貴方、戦況は生き物です、そうそう予定通りには進みませんわ。」


 いやいやいやいや、待つのである。

 待つのであるぞ、ルル大提督。


「大丈夫です。貴方ならば出来ます。ひとりやふたりと契約するだけですわ。私も手伝いますし、簡単でしょう。」


 しかしであるな・・・・。


「貴方、仲間が貴方の救いの手を待っていますわよ。仲間を見捨てるのですか?」


 俺は、所持していた艦長コインと艦隊長コインをチャリンする。

 そして、ふわりと浮かぶ2つの赤いクリスタルに触れて契約を交わした。


 俺は・・・仲間を見捨てないのである。


--------------------

【成功】Evil高速駆逐艦群αを撃滅せよ。を達成しました。(9/10)

報酬として、功績点100点、駆逐艦コイン3枚を受領しました。


【成功】敵α群女王種を討伐せよ。を達成しました。(12/20)

報酬として功績点200点、提督コインを受領しました。


【成功】敵β群大戦艦級を撃破せよ。を達成しました。(13/20)

報酬として、功績点200点、大戦艦コインを受領しました。


【成功】リーフ艦長奮起せよ。を達成しました。(14/20)

報酬として、功績点200点、紋章艦用部品20コインを受領しました。

 女王種の共同撃破により、追加報酬が発生しました。

 追加報酬として、功績点50点を受領しました。

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『こちら、ヴィオラ提督です。女王種並びに大戦艦級の撃滅に成功しました。こちらの被害は甚大、至急救援艦隊の派遣を要請します。』


 その通信は荒れ狂っている超空間通信網を通すためなのだろう、出来る限り強度を高める為に、送る内容を声と短文のみに絞った短いものだった。


「どうやら、終わったみたいですわね。貴方、救援艦隊を求めていますわ。」


 ルル大提督がニッコリと微笑んだ。


 やはり俺はグルグル案件からは逃げられないらしい。




次回は、いよいよグルグル案件、10/3日に投稿予定です。

出来るだけ早くあげますね。

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