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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
災禍の討滅者編
110/140

復讐女王の罠4

気に入らなくて加筆修正していました。

遅くなってごめんなさい。

楽しんで頂けば幸いです。

 苛烈な砲撃を続けるヴィオラ提督が率いるヴィオラ無敵艦隊からのレーザー砲撃と立て続けに着弾するプラズマ弾の雨が、デカ海栗型大戦艦級に降り注ぎ、Evil特有の赤紫色の皮膚装甲を抉りとり、其処かしこで棘のような構造体が砕け散る。

 さらにルル大提督が操る臨時砲撃艦隊から、容赦なく放たれる第7波、第8波の跳躍型艦対艦ミサイルが次々と飛来して着弾する。

 吹き荒れる衝撃波と深淵宇宙に咲く業火の華。

 攻撃に晒され過ぎて、まともな迎撃行動が出来なくなってきているのだろう。海栗艦隊による艦対艦ミサイルの被撃墜率が急速に低下している。

 ミサイルが着弾するごとに大輪の華が咲き、吹き荒れる衝撃波と熱量が周辺の構造体を破壊して、さらに迎撃能力を喪失させていく。

 迎撃力の低下によって被害が拡大し、それがさらなる迎撃力の低下を生む悪循環。

 まさに末期であった。


 集中砲撃に晒されているデカ海栗を無視して、届け物を済ましたネージュ大提督が、戦闘宙域を大きく迂回するルートを通り女王艦隊α群に向かっている。

 その後をリーフ艦長が率いるリーフ艦隊がついていく。


『リーフはいかないのかい?』

『あっちの戦いはガチンコの砲撃戦ですから、突撃するファイネル級は向かっても邪魔にしかなりません。はっきり言って向こうにファイネル級の見せ場はないです。ならわたしはこっちに参加します。』


 リーフ艦長がネージュ大提督の問いに答える。


『冷静なのは良いことよ。なら、ついておいで、海賊の戦い方見せてあげる。』

『いいでしょう。ならこっちは、私のファイネル魂見せてあげますっ。』

『ファイネル魂か、イイね、昔を思い出すよ。なら、わたしがかける言葉はこうかな。』


 ネージュ大提督が、すう、と息を整えるように一呼吸分置いた。


『ファイネル騎兵、勇猛なる翼よ。勝利の為に魂を燃やせっ!』

『勝利の為にっ! 凄いです、この掛け合いを知ってる人に初めて会いました。』


 驚きつつも即座に合わせるリーフ艦長も大概マニアであるが、残念ながらネージュ大提督はマニアではない。

 彼女は―――。

『当然でしょ、わたしはその頃から戦ってた現役世代よ。現役だったファイネルライダーたちとも何度も共闘したし、燃え尽きる翼を何人も見送ってきた。』


 そう語り、ネージュ大提督が過去を懐かしむ。

 犠牲なくして勝利なし、それがまかり通る時代だった。

 そうするしかなかった時代だった。

 そんな時代を、ファイネルライダーたちと共に駆け抜けていった。

 だからこそ言える―――。


『リーフ、ファイネル魂は形じゃない。憧れではなく、覚悟をもって、その魂を継いで、その道を進むのならば、形ではなく、その在り方で示しなさい。それでこそファイネルライダーよ。』


―――散っていた戦友たちに代わって、その在り方を伝えることが出来る。


『在り方で示す・・・・。』

『リーフ、お話はここまで、女王がなにか始める気よ、注意してっ!』

『はいっ!』


 奇妙な事に移動を続けていた女王艦隊α群が急速に速力を落としており、女王種の観測を続けていた珠ちゃんが警戒度を引き上げ、女王艦隊の動きの変化を全艦隊に警告する。


『やったか?』


 ひときわ大きな爆発に包まれるデカ海栗を見て、モニター越しにソウジ提督が呟く。


『まだよ、敵の生体エネルギーはまだ残っているわ。敵艦は健在。反撃に注意してっ。』


 アオイ艦隊長からの警告が飛ぶ。

 薙ぎ払いレーザーがヴィオラ無敵艦隊に向けられるが、彼女は回避より攻撃を優先。

 レーザー照射が薙ぎ払いレーザーの根元に向けられる。

 左翼に展開していたホワイトパール級戦艦が、前部2基の主砲や副砲などかなりの数を溶解、喪失したものの、代わりに薙ぎ払いレーザーが照射途中で沈黙した。


「ホワイトパール3、中破、火力半減、戦闘継続可能。敵レーザー照射器官沈黙。このまま畳み込みます。」


 ヴィオラ提督は冷静だった。

 相手の攻撃を誘引しておいて、攻撃を受け止め、敵がレーザー攻撃の為に開いた射線を利用して、全力の砲撃を叩き込んだのだ。


 彼女によって厄介な攻撃だった薙ぎ払いレーザーが潰され―――。


『デカ海栗に変化あり、見てっ。』


―――合体していた海栗もどきが次々と分離していく。


 警告を発したアオイ艦隊長が絶句している。


『野郎、取り巻き海栗を追加装甲代わりに纏ってやがったな。』

『馬鹿じゃないのっ。』

『問題ありません、攻撃続行。ここで潰します。』


 息を吹き返した海栗艦隊から次々と棘ミサイルが放たれる。

 海栗艦隊が、勝つために、生き残る為に、死力を尽くして反撃してくる。


 全力砲撃を艦隊防衛射撃に切り替え、ヴィオラ無敵艦隊が砲撃を継続する。

 破壊され、既に戦力を喪失した海栗型巡航艦級が、デブリとなって漂う戦闘宙域で、追加装甲代わりにしていた残存する海栗型巡航艦級14隻を展開したデカ海栗型大戦艦級との苛烈な砲撃戦が始まった。


 今まで追加装甲の影に隠れて使えなかった重レーザー発生器官を剥き出しにしたデカ海栗が、半包囲しつつあるグレイトパール泊地艦隊に対して、大戦艦級の砲撃力を見せつける。

 連続で飛来する棘ミサイル群。

 そして、乱舞の様に舞う薙ぎ払いレーザー。


「薙ぎ払いレーザー照射器官を8つ確認。さすがに大戦艦級にもなると、最後までやってくれるわね。」


 ヴィオラ無敵艦隊が艦隊防衛射撃を中断して、散開回避してから全艦隊3斉射。

散開した3隻のホワイトパール級戦艦が、互いの死角を補うように高角砲を旋回させ、無数の4連装レーザー高角砲を迫る棘ミサイルに向けて、掃射を開始する。

 相対距離も近く、充分な回避時間もなく―――。

 攻撃は苛烈で、ナノマテリアル装甲でもダメージ回復が追い付かない―――。


 薙ぎ払いレーザーによって砲塔が吹き飛び、ナノマテリアル装甲がごっそりと削られていく。


『ベローナ級戦艦、中破、主砲3基喪失、戦闘継続可能。』


 しかしそれは向こうも同じこと。

 レーザー照射によって蒸発爆砕する皮膚装甲。

 噴き出した体液を宇宙に散らし、弾け飛んだ棘が何処かへと飛んでいく。

 ヴィオラ提督は怯まない。

 各艦の副砲以下の砲はすべて棘ミサイルの処理に廻し、全艦隊のすべての主砲をデカ海栗に向け、砲撃と砲撃の狭間に狙いを定め、やっかいな薙ぎ払いレーザー照射器官を集中的に狙っていく。


「そうそう相打ち狙いは出来ないから、確実に潰させてもらうわ。」


 3つの照射器官を同時に潰し、ホワイトパール級戦艦1隻が小破、反撃のレーザー照射を受けて扶桑級重戦艦の主砲ひとつと副砲ひとつが破壊される。


『扶桑級重戦艦、小破、主砲1基喪失。戦闘継続。』


 互いの艦隊の間をレーザー光が交差し、プラズマ弾頭と迎撃ミサイルが棘ミサイルと食らい合う。

 距離を詰めた大型艦同士の激突。

 それでも砲撃戦で後れを取ることは出来ない。

 ヴィオラ提督を信じて、グレイトパール泊地にあるほぼすべての戦艦を預けてくれたのだから―――。



『取り巻き海栗は全部こっちかよ、なめやがってっ。』

『いいじゃない、14隻なら仲良く半分こ。やれるわよね?』


 挑発するようにアオイ艦隊長が、リントヴルム級重レーザー重巡航艦の多数のレーザー照射で動きの鈍った取り巻き海栗の1隻をドラゴンブレスで爆砕する。


『β3-5撃沈。あと6隻。』

『7隻ねぇ・・・。』


 あからさまなアオイ艦隊長の挑発を受けて、ソウジ提督が不敵に微笑んだ。

 彼の操るスフェール級高速巡航艦が速度をあげ、先頭を進む取り巻き海栗の1隻に砲火を集中し、止めとばかりにプラズマ弾を叩きこむ。

 そして、突出したスフェール級を狙って展開した海栗型巡航艦級の1隻に、切っ先を向けて加速したソード級巡航艦が突き刺さり、刀身に隠された内蔵型レーザーと内蔵型プラズマ弾を連続発射する。

 敵艦内部で破壊の嵐が巻き起こり、内部爆発で膨れ上がり爆発四散した。


『β3-7、及びβ3-9撃沈、ぜんぶ俺が片づけても構わないよな。』


 決まった。

 ソウジ提督が、キメ顔アピールでかっこよさを演出するが―――。


『じゃあ、此処は任せた。私は先行するわ。頑張ってね、ハーレム男♪』


 ―――アオイ艦隊長は華麗にスルーして全部押し付けた。


『くそ手ごわいな、なんてスルー力だ。あの女絶対落としてやる。』

『きゃー恐い。通報しないと。』

『どこにだよっ。』

『どこにだろ? とにかくこっちは任せたからね。』

『おう、行ってこい。ま、任された以上はきっちり片づけないとな。さあ、死にたい奴からかかってこいっ!』


 ソウジ提督が吠え、さらに艦隊を加速させる。

 スフェール級が敵陣に切り込み、ソード級が文字通り切り捨てる。


『やっぱ、こう使うのが正解かよ。こいつはいかれてやがる。』


 ソウジ提督がもう笑うしかないと獰猛な笑みを浮かべる。

 ようやくソード級の正しい使い方を理解した。

 そうじゃないかと思ってはいたが、本当にそう使うとは思わなかった。

 SFの宇宙戦争で、戦闘艦で斬り合いやろうとか、考えたやつは絶対おかしい。


 ソード級巡航艦―――。

 それは近接戦闘が得意なソウルコアが集う騎士連合泊地が発祥の武器型戦闘艦。

 ソード級巡航艦もその泊地で生まれたひとつだった。

 巨大な敵を倒すのには巨大な武器を、戦闘艦に武器を持たせるのではなく、戦闘艦そのものを武器とする設計思想。

 異端の建造理論が生んだ刃渡り480メートルの長剣がソード級巡航艦だった。



 戦闘は終盤に差し掛かろうとしていた。

 追い詰められていた海栗艦隊β群だったが、その周囲に大型艦級を含む多数の空間震を検知する。

 それは、グレイトパール泊地艦隊にとって味方ではありえない。

 最後の増援は、激戦が続く海栗艦隊から相対距離にして40万キロ離れた宙域座標に大型艦反応を示す空間震として現れているからだ。


 ルル大提督がためらいなく先制攻撃を実行し、未知の大型艦群の出現座標に向けて放たれた、第9波の艦対艦ミサイル群出現の兆候が、空間震として現れた時―――。

 ついに沈黙を保っていた女王種が動いた。




次回、女王の罠が発動します。

とばっちりで巻き込まれるチェリー&プラムの運命はいかにw


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