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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
災禍の討滅者編
108/140

復讐女王の罠2

読んで頂き感謝、感謝です。

1話4000字程度がやっとですが、ボス戦2話目投稿です。


 ソウジ提督率いる増援艦隊は、迎撃ミサイルと棘ミサイルの誘導方式を探る為に、各種類の自走型デコイを正面から飛来する棘ミサイル群に向けて放つ。

 同時に気圧を利用して膨らむバルーン型のデコイをその場に残し、女王艦隊α群の迂回機動に合わせて、全艦隊が迂回機動に移った。


 艦首を飛来する棘ミサイル群に向けた2隻のミストラル級軽巡航艦と3隻のバルシェム級駆逐艦、そしてスフェール級高速巡航艦から次々に迎撃ミサイルと各種自走型デコイが放たれると、ソウジ提督の指示通り速度をあげたすべての艦からバルーン型デコイが放出される。


 放出された小さなカプセルが移動する艦隊の後方で急速に膨張、ほぼ放出した艦と同じ大きさの原寸大バルーン模型が次々と完成して宙域に残されていく。


 ソウジ提督が知りたいのは棘ミサイルの性能と挙動だった。

 誘導式ならばその誘導方式、近接信管の有無、出来れば破壊力も知りたいところだが、的になりそうな適当な物体がない。

 破壊力については、女王艦隊か運悪く味方が着弾した時にだけ、データ収集が可能だろう。


 ヴィオラ艦隊は、飛来する120基の棘ミサイル群に対して艦隊防衛射撃を開始している。

 どうやらヴィオラ提督は避けることよりも迎撃を優先したらしい。

 ソウジ提督が光学観測で捉えたヴィオラ艦隊の迎撃砲戦は苛烈だった。


 特に艦隊前方に突出した扶桑級重戦艦から放たれた、15メートル口径三連装主砲18基54門と同口径の連装レーザー速射砲8基16門による迎撃砲戦。

 本来質量のない光でしかないレーザー火器は高速で飛来する大型実体弾の撃墜には不向きだが、戦艦級の主砲の熱エネルギー量ならば、実体弾を完全に呑み込み融解させて物体ごと蒸発爆散させることが可能だった。


 次いで着弾する小型プラズマ弾40発と僚艦から放たれた迎撃ミサイルが次々に目標を捉え、それさえも越えてきた残存棘ミサイル群を30基のレーザー高角砲とレーザー、粒子ビーム、実体弾と各種取り揃えた防衛砲座による扶桑級による最終防衛射撃により、120基の棘ミサイルは跡かたなく消滅していた。


 そして飛来する棘ミサイルの処理を済ませたヴィオラ艦隊は、増援として送り込まれた海栗型戦艦級6隻が合流した前衛艦隊との砲戦に移行している。


 この迎撃戦はソウジ提督にとっては、あまり参考にはならなかったのだが、珠ちゃんが通達してきた迎撃戦の解析結果によると、棘ミサイルの対レーザー防御は低いか皆無らしく、高角レーザークラスの口径でも、時間はかかるが破壊は可能らしい。


 また、増援艦隊が放った迎撃ミサイルと各種デコイであるが、棘ミサイルの一部が迎撃ミサイルとすべてのデコイに反応したものの、軌道修正に成功したものはごく一部でしかなく、ほとんどの棘ミサイルは軌道修正に失敗して、そのまま目標との交差軌道に入れずに外れていった。


 恐らく速度に比して、誘導の働く感知圏が低いのだろう。

 あくまで最終誘導による命中補正が掛かる程度の誘導砲弾であり、遠距離における命中率はかなり悪いと思われる。

 大量にばら撒いて、まぐれ当たりを祈る兵器でしかないようだ。

 しかし、あくまでも30万キロという遠距離で放たれるからこそである。

 この兵器が真価を発揮するのは相対距離にして10万キロを切ったあたりからだろう。


 主砲や副砲に比べて出力の弱い高角砲で迎撃しきれなくなった時、この棘が直撃すればナノマテリアル装甲を貫通して、2次装甲、あるいは3次装甲まで貫通する恐れがある。

 どれだけの貫通力があるかは、実際に食らってみなければ分からないが、あえて検証してみたいものでもなかった。


 この解析結果にソウジ提督は安堵した。

 そのレベルで迎撃可能ならば、増援艦隊の迎撃力でも対処が可能だったからだ。


 そして、他人の心配をするのは終わり―――。


「全艦隊、陣形変更。艦隊防衛射撃、始めっ。」


 ―――ソウジ提督率いる増援艦隊にも棘ミサイル群が到達した。


 増援艦隊との交差軌道にあるのは、前方から飛来する棘ミサイル120基中43基と迂回ルート上に被さる2群240基中23基のみ、残りの棘ミサイル群は目標から大きく外れており、交差タイミング的に増援艦隊には到達しない。

 また命中コースを通る棘ミサイルにしても、その一部は女王艦隊α群との交差軌道にもかかっており、女王艦隊の対応次第で到達しない可能性もあるだろう。


「正面から来る一群は俺が対応する。アオイは移動ルート上のを叩いてくれっ。」


 ソウジ提督は定石通りの主砲による迎撃砲撃の後、スフェール級高速巡航艦から迎撃ミサイルと小型プラズマ弾を放つ。


『了解、遅れずについてきなさいっ。』


 決断早くアオイ艦隊長が、リントヴルム級重レーザー重巡航艦を先頭にして艦隊を加速させる。

 防御力はともかくとして、先頭を進む強力な多数のレーザー兵装をもつリントヴルム級と艦隊最後尾に位置して支援するケルベロス級によって、進路上を妨害する棘ミサイルが次々に破壊されていく。


 ソウジ艦隊も負けてはいない。

 運よく、あるいは運悪くEvil高速駆逐艦級を貫通した1基を含め、すべての棘ミサイルの迎撃に成功―――。


『緊急回避っ来るわよっ!』


―――何がとは聞かない。

 そんな暇はない。ソウジ提督は密集陣形をとっていた艦隊を即座に散開させて、薙ぎ払われたレーザー光線を避けた。

 そのレーザー光は、彼方に浮かぶ棘ミサイルの洗礼から残存していたバルーン型デコイもついでに一掃していった。


「なるほど、このコンボは最悪だな。」


 棘ミサイル迎撃の為に集まった艦隊を高出力レーザーで薙ぎ払う。

 単純にして強力なコンボ攻撃。

 レーザーを避けるために散開したままだと棘ミサイル群の迎撃に失敗する可能性もあり、まさに最悪の組み合わせだった。


『このあとどうする?』


 棘ミサイルの洗礼を潜り抜けたアオイ艦隊長が、女王艦隊を追ってこのまま前進するかどうか聞いてくるが・・・・。


「いや、このまま距離を保って砲撃戦だ。増援がくるまで、このまま時間を稼ぎつつ、取り巻きを削っていくぞ。」

『いいわ、本命待ちね。』


 ソウジ提督は持久戦を決断する。

 このまま女王艦隊を追ってやみくもに進撃しても、でか海栗の取り巻きである海栗型巡航艦級に抑え込まれ、レーザーで薙ぎ払われるのが落ちだろう。

 なにより増援艦隊がヴィオラ艦隊の射線に侵入して、誤射を避ける為にヴィオラ艦隊が手控えれば、敵を利するだけだ。

 二手に分かれて侵攻している以上、片方だけが突出するのは避けなければならない。


 戦闘は続く。


『レーザー来るわっ』

「全力回避っ遅れるな!」


 増援艦隊に向けられた薙ぎ払いレーザーはこれで8度目、ソウジ艦隊の被害は5回目の薙ぎ払いで、かわし損ねたバルシェム級駆逐艦が轟沈、光に呑み込まれ抵抗虚しく蒸発爆散した1隻のみであり、アオイ艦隊の被害はミストラル級軽巡航艦1隻がレーザーに焼かれて、艦隊から落伍した為、アオイ艦隊長はそのまま戦闘宙域から離脱させていた。


『回避成功、反撃っ!』

「全艦隊3斉射、撃てっ!」 


 増援艦隊は棘ミサイルの猛威を捌きながら、海栗艦隊から相対距離にして28万キロ~32万キロを維持して、砲撃戦を継続中。


 この距離ならば光の速度で迫るレーザーもその到達までは1秒掛かり、まだ回避が可能だからだ。

 事実として増援艦隊は14回に渡る棘ミサイル群の洗礼を潜り抜け、8射に渡る薙ぎ払いレーザーに狙われたものの、撃沈1離脱1で損害を留めていた。


 また、この間の砲撃により、少なくとも取り巻きの海栗型巡航艦級2隻を撃沈、3~5隻を撃破したはずであり、主敵ともいえるデカ海栗大戦艦級にもレーザー主砲は命中しているが、保有エネルギーの多い大戦艦級の防御力は高く、あまり有効打にはなっていないようだ。


 対してヴィオラ艦隊の方は、敵前衛艦隊と交戦しつつ、海栗艦隊β群から相対距離26万キロまで接近していた。

この間、巡航艦級6隻、戦艦級2隻を撃沈、同3隻に損傷を負わせており、受けた損害はラーシェム級駆逐艦1隻を喪失、ミスリル級戦艦が主砲2基を失う中破に留めている。


『ふたりとも気づいてる?あの海栗艦隊β群は女王艦隊α群には躊躇しないのに、同族の前衛艦隊には躊躇ってる。こっちに薙ぎ払いレーザーを向ける時には、必ず攻撃前に艦隊を散開させるわ。』

「やはりそうか、俺らより距離が近いのに、被害が少ないのはそういう理由かよ。」

『女王艦隊は海栗艦隊にとって味方じゃないのかも。』

『だとしても、このまま砲撃戦は継続、そろそろルルさんが始めるわ。』


 ヴィオラ提督に指摘されて、ソウジ提督は戦域図を確認する。

 移動完了した増援艦隊が指定座標に集まり、突入のタイミングを計っていた。


『女王艦隊は後退をやめてない。何か狙ってるわね。』

『だろうな、警戒はするべきだろう。』


 話題に上った女王艦隊α群だが、増援艦隊が追撃を中断した後も、いまだ戦闘宙域に留まり、海栗艦隊β群との距離を詰めつつある。

 不審な行動を続ける女王艦隊。

 泊地近郊宙域から離脱したはずの高速駆逐艦群も戻ってきておらず、再度の発見の報告もあがっていない。

 不気味な沈黙を保ったまま戦闘が続き―――。


『レーザー来るわっ。』

「迎撃中止、散開っ!」


 体感的にもう何度めかも分からない薙ぎ払いレーザー照射の兆候。

 艦隊防衛射撃を中断して両艦隊が散開し、逃げ遅れたバルシェム級駆逐艦が艦尾をごっそりと失い、連続する爆発を伴う回転運動を続けながら艦隊から落伍していく。


「バルシェム2大破、航行不能だ。」

『待たせたわね。これより、支援砲撃を開始するわ。全員反撃に備えなさい。』


 ソウジ提督の報告に被せる様に、ルル大提督が力強く反撃開始を宣言する。




いよいよ、反撃開始の準備が整いましたが、この時点ではまだチェリーとプラムは出撃準備中です。

間に合うかどうかは、この先の展開しだいです。(笑)

ゲスト参戦も考えていましたが、いらないよね・・・・。

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