1,5 夏の日
2017.08
夏も本番、ミンミンうるさい朝。
夏休みの課題も終わって、あとはあなたに会いに行くだけ。
「もしもし、蓮?」
「準備できてるよ」
「ありがとう」
家の下まで迎えに来て。
なんていうわがままにも答えてくれる。
慧もそうだったけど、蓮もお兄ちゃん譲りだね。
お兄ちゃん弟って言っても双子だけど。
マンションから道路の方を見ると、すでに蓮の車が見えた。
当時はあの車に乗ることも出来なかったんだから
私も大分成長したよね。
こうやって世界は変わっていくんだろうな。
二年前は絶望しかなかったからなあ・・・。
「おはよう」
「おはよう」
車に乗ると、まだ慧が隣に居るみたいに感じる。
蓮と慧が似てるって言うのもあるけど。
この窓から見る景色も、この匂いも、あなたそのものだから。
私の世界の一部だったもので、あなたが居なくなるなんて考えていなかったのもあるけど、あなたが居なくても残るものがあって本当によかった。と思う。
二年も経ったのに、まだあなたを感じることが出来る。
私は今もあなたに幸せを貰ってる、すごいことだ。
「彼氏できた?」
「またその話題?」
蓮が毎回聞いてくるこの話題に笑ってしまう。
だって彼氏なんて要らないんだもん、まだ私の世界は美しいままだし。
「兄貴が心配するよ」
「やきもちやくの間違いだよ」
「やかないでしょ」
「言わないだけじゃない、何時もそうだったもん」
大丈夫、私はいつまでもあなたを愛し続ける自信しかないから。
「ついた」
「てんきゅー」
車のドアを開けてグーっと背伸びをする。
いい青空、嫌な暑さ。