君がくれた宝物
14歳 中学3年です。
始めて書いたものです。
どうか読んでいただけたら嬉しいです。
目が合ったとたんに
分かった
それは形容しがたく、氷みたいで、熱い視線で溶けてしまいそうだった。
だからそれを急いで 必死に 手繰り寄せた。 それを…運命の赤い糸と言うのだろうと
私はその時信じて疑わなかった。
子供のころから夢見た事が
現実で
たった今具現化されたんだ。そう思った。目が合うたびに何かがおかしい。
わたしは狂ってる。
そんな気もした。
君の手の温かさが直に伝わってきてドキドキした。
鼓動が君にも伝わって、二人だけの秘め事みたいで。ただただ嬉しくて。
周りが暗い事に二人して安心して、誰もいない事にも安心して。
でも、何処かの誰かに自慢して見せたくて。
照れ隠しなのか君が
ぎゅっと手に力を込めた。 握り返す。
そしてふと気付く。君のほうが手がおっきくて力が強い事に。
嫌でも意識させられた。
私とは違う…男の子なんだって。
初めては、
まるで小鳥がついばむ様で。 どちらも、戸惑って、ぎこちなくて。
それでいて幸せで胸がいっぱいで。
息を止めた。
心臓が大きく跳ねた。
君の心臓の音だってちゃんと聞こえて、 生きてるんだな って実感した。
直ぐに離れたけど。君のぬくもり?と言うか存在?と言うのか
ちょんっと触れた唇がが熱く上気していた。
そして君は
私からしてくれるのを待っていた。 恥ずかしくて自分からなんて遠慮したかった。
ためしに
君の袖口をくいっと引っ張ってみた。小さな抵抗の心算だった。でも、
こちらを向いた君の目なんて見たら、逆らえないに決まってる。
互いに慣れ…過ぎてしまったのか、知りすぎてしまったのか。本から運命なんて嘘っぱちだったのか。
小さかったはずのひびは大きく、大きくなってしまっていた。
初めは
まだ補ったり、取り繕ったりできていた。
でも長い時間を君と過ごし過ぎて、
取り繕っても、取り繕っても。誤魔化しても、誤魔化しても。
お互いに鼻に付くばかりで、
友達になろう。
と言ったのはどちらだったか。
やってしまえば簡単で、今まで何を一生懸命繋ぎ止めようとしていたのかすら曖昧で
分かんなくなってしまって。
でもやっぱり君が好きなんだと再認識している自分がいる
気がした。
だからなのか、何処か寂しかったし、悲しかったし。
少しスースーとした胸をギュっと手で掴んでみた。
君のいなくなった空っぽの心ん中を 何かで埋めたかった。
君と見上げていた筈の空を仰ぎ見た。
君と誓い合った筈の事をいくつもいくつも口にした。
もうやり直すなんて不可能と知りながらも君を目で追っている自分に驚いた。
君が私じゃない他の誰かと歩いたり、話しているのを見て
涙が なんて言い表すのにも値しないどす黒い感情を含んだ液体が
後から後から
流れた。
君はもういないんだなぁなんて悟った。
比喩的でもなく心理的でもない、物理的に。
私がいるこの世界から、この世から、消えた。
一つの肉の塊なんか残して。
自殺だった らしい。 何故かなんて知らない。 知りたくもない。
でもやっぱり知りたい。 死んだ場所ぐらい。
調べた。
君と私の共通の友達が教えてくれた。
そして知った。
海に飛び込んだんだ。
私の住んでいる家から車を使えばそう遠くない海。
後もう一つ、知った。
まだ君の左手が見つかってないって。 魚に食べられたか。 はたまた何処かに引っかかっているのか。
探しに行った。 死体探し。 なんて聞こえは良くないけど。
私だったら見つけられる、そんな気がして。
夜
決行した。 危ないとは思ったけど、死んでも良いなって。
で、
あった。
君が飛び降りたであろう所から、意を決して水中に飛び込んでみた。
冷たかったけど死にはしなかった。
岩に引っかかっていた。
嬉しかった。 純粋に。
あの日手をつないだ事を無性に思い出した。
君が私に遺してくれた宝物。
左手。 手首から先が綺麗に切れていて、腐っても君の手。 なんて。
綺麗に保存した。
その日から 私は夜になると少しだけ、ほんの少しだけ、泣く。
君を思い出して 泣く。