ゴールデンハート
1.ドライブ
秋晴れの高速道は、空いていて気持ち良かった。
中島は、たまの休日で楽しみにしてたドライブに来ていた。
独り身の気楽さから、会社の煩い上司の顔を見る必要もなく、あちこちと休みには、愛車シビックを走らせる。
だから、水戸インターを下りた頃には、腹ペコで、いささか一般道の混雑にイライラしてしまった。
だから、市内方向から、大型ダンブが突進してくることも気づかず、激しくクラッシュして弾き飛ばされながら、シビックが大地と擦れる火花が、薄れ行く意識の遠くに消えていったことだった。
それは、夢だったかも知れない。
微かに身じろぎして、目覚めると白い壁の部屋にいるのが判った。
いつの間にか白いYシャツにカーキ色のパンツの自分を意識した。
あれだけの大事故をしたはずなのに、体のどこにも怪我はしていないらしい。
すると、彼の前に白髪の老人が、いきなり現れて、彼は思わずひっと声を上げた。
かなりの老人らしいが、にこやかな顔はツヤツヤしてる。
しばらく彼の顔を覗き込んでいたが、やおら、
「よう来たのう大作くん」と言った。
「えっ!おじいさん、なんで……」
「知っとるかって?」
そう言うと、いたずらっ子のように笑った。不思議な老人だった。だけど……。
「くわしくは言えんが、君は元の世界に戻らにゃいかん。いやいや、話したいが、時間がなくてな」
というと、彼のまえにネックレスのようなものを差し出した。
よく見ると、金色の玉が中央について輝いている。何だろうか?
「いいかね。これは、君を特別な人間にしてくれる。君が強く望めば、人を救うこともできる。また、どんな願いも叶えることができるのだ。」
「でもどうして?」
彼は混乱していた。あらゆる疑問が湧いてくる。
老人が、ネックレスをやさしく彼の首にかけてくれた。そして、言った。
「いいかね。君は、なんでもできる。出来ないことはないの……」
語尾が遠くにフェードアウトしていき……。
うわーーーっ!
斜面が彼の前に現れたかと思うと、激しく彼の身体は打ち付けられたのだ。そして、斜面を転がり落ち、彼は、アスファルトの上で、痛みに顔を顰め、唸っていた。
眼前には、跡形もなくグッシャリとひしゃげてしまった愛車のシビックが見えた。
つづく