表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

はいつ・ひえらるきあ

作者: 風立 音無

はいつ・ひえらるきあ    風立音無



ひえらるきあアルファ号室


ヒエラルキア。

 初めての恋。

 永遠の愛。

  男と女。


「…ねえ」

「…ん」

「そろそろ寝ない?」

「…嫌」

「じゃあ起きてるの」

「…いや…」

「それより今日の原稿済ませなきゃ。今日は徹夜だぞ」

「嫌」

「じゃあ明日原稿代もらえないぞ」

「いや…原稿代ぐらいはもらえるんじゃない?明日原稿代振り込まれると

あたしはおもうなあ」

「いや…世の中そんなに甘くない」

「じゃあ明日入金見に行く?」

「いや」

「じゃあ明日食べないのね」

「…いや…食べたい」

「あたしは否よあたしは胃や腸が痛いもん」

「痛いときには食べなくて十分だぞ。俺は…」

「いやなのね…いやといいなさい」

「…」

「厭でしょ」

「俺は…い…い…」

「いやなんでしょ」

「イ…イ」

「は…肺や心臓にもよくないからな…」

「いまいやって言った?」

「肺や心臓」

「うまく逃げたわね…でもあたしは認めないわよいやよ」

「いや、言ってると思うぞ」

「認めないわいやよ」

「あくまでも認めないんだなでもそれは俺だっていやだ」

「認めろよ」

「いや」

「じゃあ俺もいや」

「とにかく入金確認しないとご飯食べられないわよ」

「…」

「入金確認するのね」

「卑怯だぞ」

「否なのね」

「…否」

「明日もご飯あるもんねあたしは作るのイヤよ」

「お」

「あ」

「お。いや、やっぱり俺が作るよ」

「…」

「作って欲しいんだな」

「…いや」

「遠慮しなくても俺が作るぞ」

「……嫌。」

「作ってやるっつうに」

「いやよ…あたしはこの勝負に勝つんだから」

「そういういやもあるのかよ」

墓穴。

「いや…ない」

「ないんだな」

またもや墓穴

「いや!これもありよ」

「いやーそうとは思えんぞ」

動いたら負けだ

両者にらみ合いが続く

…ぐう

「はう!!」

「お、いまおなかが鳴ったのね」

「い、いや!」

「隠さなくていいわよ」

…ぐう

「おなかがすいたのね。何か作ってあげようか?」

「………イヤ」

攻勢

「天丼でも頼もうか?」

「…………イヤ」

「カツ丼にしようか」

「カツ丼…」

「カツ丼にするのね?頼むわよ」

電話を取る

「イヤ!!」

男が台所へと走る

持ってきたのは

チキンラーメン

「イヤ!これを夜食にする」

女の勇み足

「オマエは食べないんだよな…あ」

今度は男の勇み足

「イヤ♪」

女が台所へ行く

「いやーとんこつラーメンノコッテマシタヨ」

基本的に台所は女の板場である

ここは男の不利

男成り行きをうかがう

チョット探りを入れてみるか

「オマエ最近きれいだなあ」

「え」

「オマエ最近うつくしいなあ」

「…」

「オマエ最近欲しいもんあるっていってたっけ」

「…」

「…イヤ…」

「なんだイヤ?いるのか?」

「…厭。」

「いやいやいわなくていいぞ」

「イヤ…イヤよ。」

「遠慮しなくても買うぞ」

「………」

「買うぞ」

「………」

「お?」

「……………イヤ。」

男圧倒的に有利。

しかし

「…イヤよ。」

「ん?」

「だってあなたの負担になるじゃないそんなことあたしいやだわ」

「いや…気にしなくていいんだぞ」

「イヤなのよ」

「イヤなんだな」

「それもイヤ」

膠着

二人にらみ合う

ついに禁じ手

「オマエ俺のこと愛してんのかよ」

「え」

「愛してんのかって聞いてんだよ」

「そっつそれは卑怯なんじゃない?あたしはそれには答えるのヤダわ」

「愛してんのかよ」

「あたしは厭よ!答えるのは!!」

「答えろよ!」

「嫌!嫌!」

「嫌を聞くのは嫌だ!!ちゃんと答えろ!」

「嫌よ!!やめて!!」

布団に押し倒す

「嫌…嫌よ。」

「嫌…やめて…」

「嫌なのかよ」

「それだけは…それだけは…」

とんとん

玄関をたたく音がする

「ちょおっとー」

とんとん

「入るわよー」

「あ、隣のおばさん…」

「ケンカ?」

「あ、いや、別に」

「どうやら仲のよろしいようね」

ちょうど女の股間に男の足が入り込んでる

「あんた達ほんとに夫婦?」

同時に言う


「ハイ」


ティータイム


「チョット水入りだったな」

「あなたが悪いわよ」

「うーんおばさんが一番の勝利者か」

「あれはどう考えたって禁じ手よ!」

「そうかなあ」

「だってあそこで「イヤ」って言ったら」

「言ったら?」

「別れるかもしれなかったジャン」

「そうか」

「どう考えたって遊びの範囲超えてるジャン」

「じゃあイヤイヤごっこは俺の反則負けだな」

「誤って頂戴」

「どうもスイマセン」

「じゃあこのキャッシュはあたしのもの」


机の上の100円が妖しく光る

「もうやらないで置こうな」

「イヤ。」

「やめようよー」


   ヒエラルキア。


   ひえらるきあパイ号室


   ヒエラルキア。

    元と終わり。

    静と止。

    親と子。


「全くあのバカップル…夜中にいちゃついて」

 がちゃ。

鍵の閉まる音がする

「いま、戻ったよ」

「ボロフィン」

「隣は例のバカップルだよ…夜中に夫婦喧嘩と思ったらいちゃついてたよ」

「ボロフィン」

「しかしまあなんだね」

「ボロフィン」

「こうやって親子で新年度を迎えるってのもいいか。そういえば旧正月に開いた鏡餅

もう食べたっけ」

「ボロフィン」

「まあいいか食べなかったら食べなかったでネズミのえさだし」

「ボロフィン」

「今年はネズミ年だもんね」

「ボロフィン」

「そういえばあんた年男だったっけ」

「ボロフィン」

「そういえばあんたのお父さんも年男だったっけ」

「ボロフィン」

「そういえばあたしも年女だったっけまあ親子では珍しいわね」

「ボロフィン」

「あたしたちみたいな親子ってほかにもいるかしら」

「ボロフィン」

「まああんたは今日行くんだからいいかでもねえ厄も落とさずに

いかないで欲しいンだけどな」

「ボロフィン」

「覚えてる?去年の年越し」

「ボロフィン」

「一緒に鐘つきにいったっけ」

「ボロフィン」

「あんな鐘楼を落とすような勢いで鐘突いちゃ駄目よ年越しのイメージが

いっぺんで吹っ飛んじゃったじゃない」

「ボロフィン」

「ああゆうことはもっと優雅にやるべきよ」

「ボロフィン」

「そういえばあんた鏡餅も包丁使おうとしたわねえ」

「ボロフィン」

「あんた季節感がまるでないんだから」

「ボロフィン」

「何が楽しくて35まで生きてきたのよ」

「ボロフィン」

「あなたの妻になる人は相当鈍感な人じゃないと駄目ね」

「ボロフィン」

「あなたの妻になる人を一目見たかったわ」

「ボロフィン」

「ねえあなたは私に母としての喜びを味わわせずに行ってしまうの」

「ボロフィン」

「まああなたは季節感もなければ思いやりもない人ね」

「ボロフィン」

「人間として失格だわ」

「ボロフィン」

「あなたは夫によく似てた」

「ボロフィン」

「あなたは夫の面影そのものよ」

「ボロフィン」

「生き写しよ」

「ボロフィン」

「いやらしいくらい親子ね」

「ボロフィン」

「あなたの生き様も似てるわあの人に」

「ボロフィン」

「あなたはいつもそうやって」

「ボロフィン」

「季節感も思いやりも情けもない」

「ボロフィン」

「そんな人間だった」

「ボロフィン」

「ねえ」

「ボロフィン」

「最近世の中すさんでるわねえ」

「ボロフィン」

「あなたのこれからの世界は拓けているかしら?」

「ボロフィン」

「あなたは季節感がないんだっけ」

「ボロフィン」

「季節がない世界が見えないお先真っ暗ってとこかしら」

「ボロフィン」

「あなたの生涯ってなんだったの」

「ボロフィン」

「あなたは幸せだった?」

「ボロフィ…」

「定刻ね。」

「ボロフィン。」

                     ヒエラルキア。


   ひえらるきあオメガ回牢(無限回廊)

     

     ヒエラルキア。

     住人と管理人。

      人と神。

      店土地。


「払ってよ」

「待ってくださいよ」

「もう明日期限なんだからね」

「こっちだって商売なんですから」

「いいじゃン店つぶしたって」

「なんてこと言うんですか」

「だって客入ったとこ見たことないもん」

「あんた厭な人だねえ」

「隣のおばさんの息子は明日いくんですよ」

「だからなんだって言うんですか」

「絶対息子さんは来店しますよ」

「こないよ」

「賭けますか」

「おもしれえじゃねえか」

「絶対うちには来ないですからね」

「絶対息子さんは来客する」

場短

「今晩はー」

「おーバカップル」

「なんか食わしてくれるー」

「すし屋に行ってコーヒー頼んでくるわ」

「すし屋にコーヒー?」

「まあいいじゃない」

「ねえお二人さん」

「あ 管理人さん」

「ねえ最近あれ、来てる?」

「あれって」

「だからあれ」

「ああ、そういや」

「イヤ、先月はあったような」

「ああ、そうですか」

「へえ、ありました」

「うんわかった二人ともお幸せに」

「ハイピザお待ち」

「どれどれ、もぐもぐ」

「うん、うまい」

「うん、いけるWW」

「コーヒーは?」

「すし屋だからないよ」

「そうですか」

「マスター、いくら?」

「3,900円だよ」

「払わないよ」

「はーい毎度」

「ねえ」

「あの夫婦でしょ」

「あのバカップル、絶対子供作るよねえ」

「作りますね」

「俺は来月だっておもうなあ」

「そうですかね」

「賭けようか」

「そうですね」

「じゃあ俺は生まれるほうに3900円」

「じゃあ私は子供作るほうにコーヒー」

「で、つけいつ払うの」

「あんたつくづく厭なひとだねえ」

「こっちだって商売なんだからさあ」

「いい加減払ってくださいよ」

「わかってるよ管理人にそんなこと言わなくても」

「全く…」

「毎度―豊中市です」

「お、もう正午か」

「広報一面…息子さん行く…か」

「あのー」

「バカップルどうしたの」

「実は、部屋でいま考えたんですけど」

「うん」

「実は養子を迎えようかと思いまして」

「アーそれめでたいねえ」

「いいことだと思うよ」

「あ…ドモ」

「何かご祝儀上げないとねえ」

「じゃあつけ払っときます」

「つけ払ってくれたよ」

「じゃあ管理人にもう催促するなよ」

「うん。で、さっきの賭け、どうなるの」

「子供が生まれなかった作ったでロハじゃない?」

「そうだね」

「痴話―」

「はーい」

「すし屋ですコーヒーお持ちしました」

「あ、ご苦労さん」

「じゃあこれ、バカップルのご祝儀ね」

「養子か…世の中そんな時代なんだなあ」

「息子さん来ましたねえ」

「じゃあ賭けはロハねえ」

「なんか丸く収まってるねえ」

「そりゃ今日はエイプリルフールだもん」

「4月1っ日か」

                  ヒエラルキア。

           はいつ・ひえらるきあ 終わり       



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ