05 エピローグ
残酷な描写があります。ご注意ください。
信彦たちを案内している間、小春はぼそぼそと話し始めた。
「シキは昨日から元気がなかった。今日も気分が悪いって言って......」
信彦は無言で聞いていた。
小春が案内したのは五条の屋敷からほど近い長屋だった。
「ここよ、私とシキの―――」
言い終わらないうちに、信彦は思いっきり扉を開けた。中には包丁を刺して倒れている、シキがいた。
信彦はシキに大丈夫かと言いながら、ゆすった。しかし、彼女は力なく土間の方に倒れるだけだった。彼女の体は恐ろしいくらい冷たかった。
「冷たい......シキ?」
信彦は涙を流した。
「死んでる。助からなかったか」
と信彦の父の善行が近寄って、脈を取りながら言った。
小春は「うそっ!」と言いながら、泣きじゃくった。
「信彦、何があったんだ?」
と善行は聞いた。信彦はゆっくりといままでのことを話した。それに手紙を見せた。
善行はそうかと頷きながら、肩をポンポンとたたいた。
「私がシキにあんなこと勧めるからね。彼女、嫌がってた。あなたを騙したことをね」
と小春が語った。
「でも、彼女はあなたと恋文のやり取りをすることは楽しんでた。純粋に」
「そうか。俺もやり取りは楽しませてもらった。だけど、俺も馬鹿だったな。あの子が俺のこと好きだったなんて、気が付かなかった」
小春は押し黙った。
「あの子は熱心だった。字を書くことなんかを教わりたいって、私に言ってきてね。嬉しかったな」
と善行が言った。
信彦は少しうつむいて
「小春をこのまま置くのは......」
と言った。
そして、小春を川原に置いた。そのころの庶民は火葬や土葬などしない。こうして野ざらしにすることが多かった。信彦たち一行は彼女の好きだった花を置いて、去っていった。




