03 再会
信彦と姫君が手紙を交わすようになって、二ヶ月ほどたった。
信彦はそれまで手紙のやり取りだけで満足していた。身分ある人と恋文を交わしているだけで、興奮したものだ。
それが最近になってはちっとも満足できなくなっていた。彼はそれ以上のことを求めていたからだ。彼女に一度でいいから、会ってみたいと思った。
いつも仲介を勤めてくれる、小春に何度か頼んだが、断られてしまった。
「忙しい」や「これだけで精一杯」、「こうしてやっているだけでも感謝してほしい」などと言われて、最後の方はなぜかキレられてしまった。
しかし、信彦はシキに頼めば、姫君と会えるかもしれないと考えていた。シキは姫君と文を交わせるように融通してくれたし。それに幼なじみである。ただ、ここしばらく会っていない。
信彦は東市に行ってみることにした。あそこは店も多く、人の往来も激しい。それにシキに再会したのはそこだった。会えるかもしれないと思っていた。
信彦は店を眺めるふりをしながら、シキを探していた。頑張って探したが、彼女は見つからない。半刻ほど(一時間)たち、もう帰ろうと思っていた。そのとき、ちょうど筆を買い終わったシキを見つけた。
「シキ!久しぶりだな」
シキはかなり驚いた様子だった。
「二ヶ月姿が見なかったから、心配したよ」
「そう。。忙しくてね」
「それより、シキって字を書けるのか?」
「私だって書けるわよ。字ぐらい。話はそれくらい?」
シキはあまり目を合わせようとしない。ずっと伏し目がちだった。
「シキ、どうしたんだよ。さっきから目を会わせないだなんて」
「ごめんなさい。帰らなくちゃいけないの。さようなら」
シキは慌てて駆けていく。信彦は慌てて追おうとするが、人混みに紛れてわからなくなった。
信彦はどうして彼女はあんな態度をとったのだろうと考えていた。しかし、考えれば考えるほど分からない。彼女は後ろめたいことなどないはずだ。なのに何故?
翌日の夕方。信彦は家で父の診療を手伝っていた。そのときに少年が外から呼び掛けた。
「お若い先生!手紙だよ。シキって人から」
「ありがとう」
信彦は出てきて、手紙を受け取った。その手紙は彼にとって、非常に驚愕的な内容だった。




