表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハカナイ夢  作者: さくら
3/6

02 恋文

 信彦がシキに恋文を託してから2日たった。信彦はずっとそればかりが気になっている。ちゃんと読んでくれたのだろうか、父親(五条の大夫)に見つかっていないか、姫君は気に入ってくれるのかと....。


 信彦はそんなことを想いながら、怪我人の治療にあたっていた。今、父親の善行は出ていていなかった。といっても簡単な処置だし、信彦も腕は悪くなかったので心配はない。

「これで大丈夫ですよ」

「先生、どうもありがとうございます」

と怪我した若い男。

「大犬さん、います?」

とそんなとき、若い女の声がしてきた。シキとはまるで別の声だ。


 信彦はちょうど治療が済んだところだったので、外に出てきた。女はどこか勝ち気そうな雰囲気で、背中に手を回して何か隠していた。

「初めまして。私はシキの遠縁の小春よ」

 確かに言われてみれば、似ている気がすると信彦は思った。

「どうも。初めまして」

「もちろん、あいさつのために来たわけじゃないの。これを預かってきたのよ」

 小春は背中から、フジバカマとそれに結んだ手紙を差し出した。

「返事が来たんだ!」

 信彦は急いで手紙を開いた。



  信彦から姫君へ

 ~~ほととぎす 鳴くや五月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな~~

 (意味 ほととぎすの鳴く五月に咲くあやめ草、その名のように、物事の「あやめ(=分別)」もわからないような恋をすることだ)

 引用 古今和歌集(よみ人知らず作)より


  姫君から信彦へ

 ~~玉の緒よ 絶えねば絶えぬ ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする~~

 (意味 私の命よ。絶えてしまうものなら、絶えてしまっておくれ。これ以上生き長らえたら、忍ぶ恋心を抑える気持ちが弱ってしまい、人目について困るから)

 引用 新古今和歌集(式子内親王作)より



 信彦は姫様からの手紙を見て、身震いがした。内心ではおそらく来ないだろうと、思っていたからだろう。そして、それほど自分を思っていると考えると涙が出てきそうだった。


「小春、ありがとう。シキにもよろしく伝えておくれ。また手紙を書くから、次は届けたほうがいいかな。今日の昼八つ(午後3時ころ)なんてどう?」

「そうね....お屋敷の東の門に届けてよ。私が受け取るわ」

「君がか?」

「えぇあの子、忙しいみたいなのよ」

「ふーん」

 信彦は少し残念だと思った。



 信彦はそれから小春を通じて、何回か手紙のやり取りをした。不思議とシキには会えなかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ