第二十話 談話3
「僕は戦いますよ。幸か不幸か大勢を率いて戦える立場と、強い人を従えるぐらいの力はある。これは僕の意思だ。ヴィレムさんは戦わなくてもいい。それ以外で戦争を終わらせるために働くことだって出来る。けれど幸か不幸かヴィレムさんも影響力の強い立場の人間です。できれば僕に力を貸して欲しい。この戦争を終わらせるために」
強い口調だった。巻き込まれたセラムの、生き残るための戦争は終り、大事なものを守るための戦争を始めたのだ。
迷いなく。
惑いなく。
「……参ったな。これは断れないや」
ヴィレムは大きく息を吐いた。
ヴィレムはただ望んで結婚しに来たわけではない。ゼイウン公国が優位に立つために恐らく何か密命を受けているだろう。これも外交という名の戦い。その為にセラムを利用するつもりだったに違いない。
だがこれでセラムが一歩リード。少なくとも今は手を取り合い協力する事に同意させたのだ。
「一つ教えてください。セラムさんは何故そう強くいられるのですか? 貴女が戦いに身を投じる理由は何ですか?」
「好ましいと思える人が沢山できました。その人達を守りたいと思いました。それに……」
セラムは遠くを見た。どこまでもどこまでも遠く、世界の果ての更に向こう。
どんなに離れても見守ってくれているように感じて。
「大事な人との約束を思い出したんです。絶対守る、僕はもう二度と約束を破ったりしない」




