表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女と戦争  作者: 長月あきの
第二章 第一部
89/292

第十一話 ヴィレム1

 その男は三日後にやって来た。線が細く、柔和な笑みを浮かべるその姿は一般的なゼイウン男児のイメージとはかけ離れている。


はじめまして(・・・・・・)セラム嬢。僕はマトゥシュカ家、リーンハルト銀翼公が第三子、ヴィレム・マトゥシュカです」


 セラムには見覚えがあった。確か一度ジオーネ領であった事がある。その時はとぼけた異国の青年だと思っていたのだが。

 この男ははじめましてと言った。向こうとてセラムの事を気付いていない訳はない。つまり以前の事を忘れて改めて政略結婚の関係を確認しようというのだろう。

 ふざけやがって、とセラムは思う。だが向こうがその気ならそれでもいい。何せこの婚約には乗り気ではないのだ。


「はじめましてヴィレム公子。随分早いお着きですね」


「貴女を早く見たいが為に待ちきれずに来てしまいました」


 何を白々しく。こちらが断れない事を分かっていて国境で待っていたんだろ、という棘は内心で留めておく。だがその行動の速さにこそ焦りが見える。戦況は芳しくないのだろう。


「こちらへどうぞ。我が屋敷をご案内しましょう。マトゥシュカ家に比べれば犬小屋みたいなものでしょうけど」


「何をおっしゃいますやら。これ程瀟洒な庭は見たことがありません。特に水路が綺麗だ。優雅な曲線を描き庭を跨ぐ水の流れを眺めながら煉瓦道を歩くと中央に見える噴水、しかも水がとても清らかで虹が掛かっている。とても上品な感性をしていらっしゃる」


 言葉に込めた嫌味をヴィレムは事も無げに受け流す。しかし表情からその言葉は本心からのものだと分かる。政治的な縁談だと警戒していたが、案外そんな裏表のなさを買われてこの役に任じられたのかもしれない。


「そうですね。水は我が領地の自慢です。それに亡き父上の審美眼は確かだったようです」


 それは家具や調度品にも表れていた。統一感のあるそれらは決して高価な物ばかりではない。実用性を重視しつつ邪魔にならない程度に美的感覚を主張するその数々の品は殆どがエルゲントが集めた物だった。

彼は無骨な武人ではなく、多才で政治が分かり、国王を始め主要な人物と早くに友好な関係を結ぶ如才のなさを持つ文武両道の人だった。調べれば調べるほど彼の人間としての凄み、国にとってどれだけ重要人物だったかが思い知らされる。そしてその娘として自分がどれだけを期待されていたか、若年ながら将軍に推された意味を知るのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ