第四十四話 代替技術その2
「ボルトで着脱式の長い取っ手を付けよう。てこの原理でかなり力を軽減出来る筈だ。それと撃つ時は取っ手にロープを結んでそれを引っ張るように。弾が発射される時にロックを跳ね上げて砲身にぶつかるから、下手すると手が飛ぶぞ」
「へい、そのように」
「早速試し撃ちしてみようか。男衆を連れて運んでくれ」
「へい」
遮蔽物の無い所に着くと用意していた水を炉の八分目まで入れ火を点ける。
「どの位時間が掛かるものなんでしょうか?」
「一発目だからな。一時間やってみようか」
二十分用の砂時計をひっくり返す。待つ間ロモロと今後の話をする。
「もう一つの件は考えてくれたか」
「引き抜きの話ですか。他ならぬ領主様の頼みですし協力したいのは山々ですが、こちらも仕事が忙しくなって人手不足なんでさあ。技術指導くらいなら何とか……」
「そうか。いや、無理を言ってすまんな。それでお願いする」
「配管工場を作るんでしたっけ」
「ああ。水道関係をより良くする為に自分で工場を立ち上げようと思ってね」
セラムはこの世界に来て、蛇口を捻れば水が出てくるという事がどれ程凄い事なのか実感していた。実際に作ろうとすると常に水圧を掛けておかなければならないが、そのポンプも動力もない。
考えぬいて出たアイディアは手押しポンプだった。それでもこの世界には無い技術なので格段に便利になるだろうし、構造も知っている。原理的には十メートルの高さまでは水を汲み上げる事が出来る筈だから、二階までなら手軽に水を出す事が出来るだろう。
「皆の暮らしを便利にする為に努力するつもりだ。親方も協力してくれ」
「そういう事でしたら是非もありません。出来る限りの事はさせていただきやす」
やがて砂時計が二回返り、その砂が全て落ちきると男達の準備よしという声が聞こえた。
「扱いには気を付けろよ、手が潰れるぞ! ロックは一気に引け!」
ロモロのがなり声が響く。男達の声掛けで一斉にロープが引っ張られる。
ロックは外れると同時に勢いよく跳ね上がり、激しい金属音と爆発に似た蒸気の噴出音が野原に轟く。
「射出は成功したな。問題は飛距離だが……」
セラムも計測係と一緒に弾が飛んでいった方向へ向かう。
「最初にしては真っ直ぐ飛んだみたいだな。先ずはよし」
計測の結果が報告される。
「約百メートルです」
「やっぱりしょぼいな」
「えっ、そうなんですかい? あっしには正直何で飛ぶのか不思議なくらいなんですが」
何よりの問題点は発射までの時間と次発装填に時間が掛かる事だが、準備時間については少しマシになる当てがある。今回は実験なので薪を使っているが、この世界では既に一部で石炭が使われている事を確認済みだ。それを使えば出力は上がるだろう。
「よし、もう一度やるぞ。次は命中精度と破壊力を確認する。二十五メートル先の木を標的にするぞ」
待ち時間の間に改良点を書き込んでいく。
「親方、二機目を作ったらこいつは破壊するぞ」
「ええ!? 何でですか、勿体ねえ」
「言い方に語弊があったな。限界時間を知るためだ。こいつは熱すればその分威力が増すがやり過ぎれば暴発する。下手をすれば死人が出るんだ。だから一度暴発するまで火をくべる」
「なるほど。しかし勿体ねえ気もしますねえ」
ロモロは努力の結晶とも言うべき大砲を壊す事に抵抗はあるようだが、理由を聞いて納得したようだ。
「二発目、いきます!」
再び轟音。然してその結果はまずまず満足のいくものだった。
「見事標的に命中、一本目の木を圧し折り二本目の木に当たり止まる、と」
セラムの想定している状況では命中精度が大事なのだ。これならば使い物になる、かもしれない。問題はどれだけ予算を引っ張ってこれるかだが……。
「そこら辺は無駄を省く事で捻出するか」
お偉方を説得するには交渉材料がもう少し必要だ。




