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少女と戦争  作者: 長月あきの
第三章
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「恐らく千年前の遺物、神凪の手記と思われる」より抜粋

 私は聞いたのだ。あの声を聞いたのだ。

 あの日いつもの様に日々のお役目を果たし神の声を聞くべく祭壇で祈りを捧げていた。いつもの様に神の声が届く範囲へと意識を今いる世界からずらす様に集中し、私の無意識が神の声を拾うのを待ったのだ。

 私はあの声を聞いた。あれはユーセティア神ではなかった。まるで子供の様な老人の様な、女性の様な男性の様な、聞くだけで意識が混濁して倒れてしまいそうになる声だった。


 キャキャキャ、アア面白イ。久シブリダア。ヤッパリ地球ニ干渉シタノハ正解ダッタナア。意思ガ及バナイ存在トイウノハ実ニ良イ。次ガ決マッテシマワナイトイウノハ実ニ新鮮ダ。特ニまくすうぇる、ほうせん・くだん、ソレニせらむ・じおーねハ当タリダナア。次ハドウ転ガルンダロウ。


 実に無邪気に、残酷に。思慮深く、遊興的に。何とも荘厳に俗物的な事を宣り給うたのだ。

 私は恐ろしくなって教皇様に相談した。教皇様の顔はみるみる青くなり、暫く私にお役目を休むよう言いつけたのだ。

 それからの教皇様は何やら慌ただしく指示を飛ばしていた。普段の鷹揚な態度もどこへやら、それはまるで世界が終わるかの瀬戸際のように慌ただしく動いていた。あの教皇様をそこまでに焦らせるような事を私は言ってしまったのだろうか。果たしてあの声の主は、とつい考えてしまった。

 でも考えるべきではなかった。気付くべきではなかった。全ては想像に過ぎない。けれど、もしその想像通りだとしたら。私は恐ろしくなって毛布に包まった。

 だってもし本当にあの声が創造神グリムワールなのだとしたら。もし本当にこの世界を創ったという神の存在があったのだとしたら。その神があのような事を言うのだとしたら。人知を超えた存在が遊興で世界を創り変えるような存在なのだとしたら。

 その気分次第で明日にも世界が滅んでいるかもしれない。いや既に世界は滅んでいて、再構築された世界を私達は生きているのかもしれない。私自身既に創り変えられていてそれに気付けないだけなのかもしれない。もし五分前に世界が創られていたのだとして、私達に偽物の記憶が植え付けられているといった妄想を誰が論破出来るだろう。

 アアだめだ、これ以上は頭がおかしくなりそうだ。もう寝てしまおう。起きたらこの記憶も全て消えてしまっていればいいのに。


   「恐らく千年前の遺物、神凪の手記と思われる」より抜粋


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