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少女と戦争  作者: 長月あきの
第二章 第一部
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第二十六話 城での執務3

「リカルド公爵、よろしいですか?」


 扉をノックして暫し待つ。「どうぞ」との返事を確認してから扉を開ける。


「待たせて済まなかったな。で、貴族軍について質問があるとのことだが」


 実は少し前に走ってきた時は今忙しいからと追い返されたのだ。もしかして既にノワール共和国へと出発しているかもしれないと思っていたのでセラムは安心し、リカルドの手が空いたら会ってもらえるようにと約束を取り付けた。その後ガイウスにも話を聞きたかったので空いている時間を聞きに行ったら「いつでもおいで。仕事中だとは思うけど」との返事だった。

 ここらへんの対応の違いは二人の性格の違いだろうか。何だか孫に甘いおじいちゃんと少し厳しいお父さんみたいだとセラムは思った。何にせよ了承は得たのでならば後でとその場を去ってリカルドを待ったのだ。


「そちらの報告書を見せてもらいました。色々と聞きたいのですが、まず……」


 セラムは報告書を取り出し指で指し示す。


『ガスパーレ伯爵 兵士三百名

 内訳

 バンキエーリ家 百八十名

 カニーニ家 六十三名

 コッス家 三十名

 エルカーン家 二十名

 ガバーニャ家 七名』


「編成表だな」


「何かひっじょーに少なくないですか?」


(七名って。七人の侍かよ、小隊も組めねえよ)


「普通の事だろ? それにちゃんと総勢三百と書いてある」


「ええっと、この何々家っていうのはその土地の名士のことですよね」


「そうだ」


「で、この場合の指揮系統はどうなっているんですか?」


「ガスパーレ伯爵の指揮の元それぞれの家の代表が動く形だな」


 やっぱり、とセラムは頭を抱える。

 セラムが指揮したような常備軍は職業軍人だ。上から順に命令が行き渡ってゆき、最小単位は十人で小隊を作る。また、基本は人員の移動はしないが損耗が出た場合などで他の小隊に組み込む事もある。勿論慣れた職場ではない為意思の疎通に多少障害があるだろうが混乱という程ではない。同じ課の違うチームに配属されるようなものだ。

 だが領民兵は違う。職業軍人程に訓練されていない上、名士毎に人員を集めてさあ戦争に行くぞと言われるわけである。恐らく命令の仕方もバラバラ、家毎に集めて命令しなければ統率出来ないだろう。いきなり別の支店に出向させても慣れるまでは何の役にも立たないのと同じだ。結果欠員が出ても補充も解散も出来ず場合によってはたった二名で小隊を組む事だってあるというわけだ。

 更に言えば指揮する人数がこうも違えば軍隊行動にも影響が出る。例えばあちらに百名向かわせろと命令した場合、その時の担当がこのガスパーレ伯爵だったとしたら百八十名向かわせるか六十三名向かわせるか、という二択になりかねない。

 最早誤差とかそういう問題ではない。


(そりゃあエルゲント将軍もグラーフ王国に勝てんわ!)


 セラムもそういったことがないようにと階級制度を一新したのだが、貴族達が統括する領民兵にはまだ浸透していないようだ。


エルゲント・ジオーネ : セラムの父親で故人。生前は政治面と人心掌握に長けた人物であったらしい。各方面で人望が厚い。

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